第三話 コマンドプロンプト
「では、コンパイルする前に――まずはコマンド入力からするわよ」
先輩はそう言うと、マウスで左下の「スタート」>「すべてのプログラム」>「アクセサリ」>「コマンドプロンプト」とクリックしていった。
すると画面に黒いウィンドウが表示される。
「なにしてるんです?」
「イツキくん、知らないのこれ?」
俺は頷いた。
「コマンドプロンプト。昔のDOS時代は、みんなこういうの使ってたんだって」
「はぁ。そんな過去の遺物、なんで今使ってるんです?」
「プログラムをするときには、いろいろと便利なのよ。それに、こっちの方が説明しやすいもん。これから、ずっと使う事になるから、まず操作説明をさせてもらうわね」
「はい」
「まず、「cd ¥」って打ち込んでからエンターキーを押して」
先輩はそういうと席を外した。俺は代わってPCの前に座ると、キーボードで打ち込む。
すると、カーソルが
「C:¥>」
に代わった。>の右では_のカーソルが点滅している。
「ここが今、イツキくんがいる所。Cドライブの真下ね。では次にdirを打ってエンターを押して」
俺は言われたとおりにした。すると、ずらずらとリストが表示される。
「この中に、2011/06/06 17:00 <DIR> sampleってあるでしょ」
「あ、はい。下の方に」
「これがさっき作ったフォルダ。ディレクトリとも言うから覚えておいて。ちなみに、さっき打ったdirはこのDirectoryの略称。で、cdは、チェンジディレクトリ」
「俺、英語苦手なんで」
「わかってるわよ。じゃ、今度は、このsampleへ移動するよー。cd sampleって押してエンターね」
俺は打ち込んでいく。
C:¥>cd sample [ENTER]
すると表示が、
C:¥sample>
と代わった。
「今、イツキくんはsampleフォルダの場所へ移動しました。ちなみに、さっきの所へ帰りたいときには、cd .. って打ってエンターよ。これで上の階層へ戻るわ」
「うーむ。いちいち打たないと移動しないといけないんじゃ、面倒だなー」
「今のは相対パスって移動の方法。直接行きたい場所指定したいなら、絶対パスで入力するの。cd c:¥sampleとか」
「ふむふむ」
「じゃ、移動方法はこれくらいにして、次はいよいよコンパイルするわよ。まず、dirコマンドを入れてみて」
俺は入力した。すると、
<DIR> .
<DIR> ..
133 firstprogram.c
の三つが表示された。
「上の二つのは無視して。今は、このsampleフォルダには、さっきあたしが入力したプログラムがあるだけ。ちなみに前の133って数字は、プログラムの使っているバイト数の大きさね」
「はい」
バイト? なんだそりゃ。アルバイトのことか?
「では、コンパイルするわよ。gcc firstprogram.cって入力して」
俺は言われたとおりに入れた。すると数秒してから、再びC:¥sample>が表示される。
「あ? これで、成功したんですか?」
「うん。プログラムが間違っていたら、ここでエラー表示がされるの。何も表示されないから成功。じゃ、ためしにDIRで調べてみて」
俺はDIRコマンドを打ち込んだ。すると、
22,526 a.exe
133 firstprogram.c
の二行に増えている。
「このa.exeってのが、作られたプログラムですか?」
「そう。今コンパイルして作られた実行ファイル。exeはExecutable、実行可能の略ね。ちなみに、firstprogram.cの方はソースコード、略してソースやコードとも言うわ。これからは、そう呼ぶからね」
うーむ、意外とあっけないものだな、と思った。
「では、実行してみて。aって打ってからエンターでいいわよ。あ、後ろの.exeは打っても打たなくてもいいから」
俺は打ち込んだ。すると、しばらくしてから一行表示された。
C:¥sample>a [ENTER]
立花アカネは、世界一の美少女デス♪
C:¥sample>_
「ほらほら、大成功ー♪」先輩はきゃっきゃっと喜んでいる。
「うっ……突っ込んだら負けな気がする…」
ともあれ、どうやら最初のプログラムの作成は、成功したようである。