第十話 降伏の儀式
「ごめんっ」
俺は西原さんに深々と頭をさげた。
「えっ?」
「あのさ、昨日俺が言ったこと――あれ全部、嘘なんだ」
「そ、そうだったん……ですか……?」
「俺、本当はなにもプログラミングを知らないんだ。だから今、先輩から教わっていたところなんだ」
「……」
西原さんはしょんぼりとして、先輩に向かって言った。
「立花先輩、さっきは変なこと言っちゃって、済みませんでした……」
「いいのよ。全部、この『馬鹿』が悪いんだから」
馬鹿にアクセントをつけられる。先輩はすっと目を細めて俺を睨むと続けた。
「まったく、恥ずかしいったらないわ。それこそ、『生まれてすみませーん!』って言いながら道頓堀に飛び込むレベルよ」
先輩、例えがマニアックすぎるよ!
「もう、面目無い――」
俺は西原さんへと向き直って言った。
「西原さん、だから俺のことはもう忘れてくれ……」
「ううん」西原さんは首を振った。「イツキくんは、これから頑張ればいいと思うの。誰だって、そんな自慢したいなっ事ってあるもの。私は気にしないですよ」
な、なんとっ、出来た娘! まるで聖女のようだ!
「ぬおおおおっ。西原さん、マジ女神!」
俺は感涙しつつ言った。
あとは、もう一人の問題。
「ちらっ」
俺は立花先輩をちら見した。
「……な、なによ? あたしは、そんな甘くないわよ。ふんっ」
先輩は顔を逸らした。
こんな反応が当然だな。西原さんのような人が例外なんだ。
「俺、また先輩からプログラミング習いたいなー」
「もう教えてあげない」
「じつはさ、昨日俺は、3DもMMOもRPGも作れて、先輩に教えられるくらいの凄いプログラマーになるぞと決意表明をしたつもりなんだ」
「えっ、そうだったんですかー?」
西原さんが驚く。
ちょっ……西原さん、人を信じすぎるよ!
「うわっ、嘘くさ」と先輩。
「本当だよ。だから先輩、俺をそこまで導いてくれよ。俺はこの部活が好きだし、立て直したいんだ!」
言っているうちに、自分でもそうだったんじゃないかと信じたくなってきた。
「……うっ」
俺の熱意が伝わったのか、先輩は渋面を作って考え込む。
「……こ、今回だけよ? 許してあげるの」
しぶしぶと言った。
「本当!? サンクスだぜっ」
「はぁー。調子いい奴……」先輩は首を振る。「ま、初心者の頃には、そうやって他人にハッタリかまして自慢こきたくなる時期あるから、仕方ないか」
先輩は西原さんに向けて言った。
「西原さん、貴女も一緒に参加する? Cの基本的な内容だけど」
「はい。喜んで」
「そう。ならば、二人とも聞いてね」
立花先輩のプログラミング授業が再開された。