ジョブ村人の妹が聖女の姉を退け王妃になる話
「マリアは屋敷で仕事をしていなさい」
「はい・・・お父様」
今日も家族は舞踏会に出席する。
私は留守番だ。
何故なら、姉のマルルのジョブは聖女で。
私は村人だからだ・・・・
馬車はお父様、お母様、マルルお姉様を乗せて出発する。
王家も注目するお姉様だ。
「さあ、仕事をしなければ・・・」
私のジョブは村人だわ。
だから、薪割りから帳簿つけ。ワンちゃんのお世話まで何でも出来る。
いえ、苦にならないから仕事を覚えるという方が正確だろう。
「ワン!ワン!」
「はい、お食事よ。ハンス、薪は?」
「はい、準備しております」
私はどうなるのだろう。
お姉様は王子様との婚姻がほぼ決まりだわ。
だけど、そうもいかない一応競争をしなければならないからだ。
慣習としてある。
今日は二人で王宮に向かう。陛下と王族の方々と謁見する。
二人で会うはずだが、私はメイドのようにお姉様に後ろに寄り添い。カーテシーのまま頭を下げている。私は名前を呼ばれないからだ。もっぱらお姉様に質問攻めだ。
「陛下、私、聖女の力がございますの。王妃になったら国の為に祈りますわ」
「ほお、そうか。して、妹君のマリア嬢、もし、マンフリートと娶せたらいかように国を動かす?ジョブ村人でも己の考えを述べよ」
私は話しかけられたわ。私はここでやっとカーテシーから頭をあげて、陛下に答えた。
「我が王国は弱小なれど、謀略を持って国を保ちその間に国力を増しますわ」
一瞬、王宮の者たちの顔が「えっ」となった。小国というのが気に触ったようだ。
「小国とはいささか現状を理解されていないのではないか?我が王国はルーシー帝国も一目おく国であるぞ」
「それは・・・」
私が意見を言おうとしたら。
使者が飛び込んで来た。
「陛下、大変でございます。ルーシー帝国、辺境に軍を進めて侵入しております!」
「な、何だと!」
ここで謁見は中止になった。
どうやら、大軍と言うほどではない軍勢が辺境のフランクドル地方に侵入。現地の騎士団と一触即発?
名目は演習中に台風による被害に遭い。避難をさせて欲しい。
「それどころか木造の家まで建てて駐屯する勢いです」
「はあ?これは、ルーシー帝国の皇帝の書状をここに、永遠の友好を誓うと宣言したばかりだぞ!」
王宮は混乱している。
私とお姉様は王宮に止め置かれた。
情報漏洩を防ぐ目的だ。暇を持て余していたら殿下から声をかけられた。
「やあ、マルル嬢、マリア嬢、二人なら如何する?」
王太子殿下が諮問をされたわ。
「殿下!私、聖女ですわ。法王猊下に取り次ぎをしてもらいますわ」
「うむ。頼む」
結局、私まで意見を聞かれなかった。
すぐに法王庁に使者が向かいルーシー帝国に勧告されたが、ノラリクラリ状態だ。
「では、私が祈りますわ」
お姉様は祈りだした・・・
さて・・・私は戦支度をしている殿下に話しかけた。
「マンフリート殿下、如何しますか?」
「これは・・・もう、どうしようもない。戦争だ」
「勝てますか?初戦は勝てますが、その後は無理でしょう」
「そうだが、これを放置したら各国から侮られる」
「私に良い考えがあります。無血で追い出して差し上げましょう」
「何をするのだ?」
私は我が王国と仲が悪いイース連合王国の大使のケベック卿に面接を取り付けた。
ほぼ一日で会ってくれた。
殿下を伴い面会する。ヒゲを生やした慇懃そうな紳士だ。
「イース連合王国に依頼します。ルーシー帝国に勧告して下さいませ。出て行けと」
「・・・分かった」
「はっ?!」
殿下は驚いた。ケベック卿は簡単に我が王国の要求を聞いて下さった。
「何故だ。マリア・・・」
「はい、実に簡単な事です・・・」
簡単に言うとイース連合王国はルーシー帝国に嫌がらせをしたいだけです。
しかし、自らいくと戦争になるかもしれない。
「口実があれば動く事例です。我国の依頼が欲しかったのです」
「そうだが・・・見返りが怖いぞ・・・」
「名誉を与えれば良いのです。今、イース連合は女神圏での盟主の地位を欲していますわ。公平さをアピールできればそれに超した事はございません。
ケベック卿にさしあげる勲章と感謝状をご準備なさって下さい」
「分かった・・」
私はケベック卿から頂いた撤兵勧告書を携え。殿下と共に辺境に向うことにしたわ。
こういった計画は言い出しっぺの者が先頭に行かないと村人はついて来ない。
村人?そうか、ジョブは村人だったわ。私はジョブの村人で動いているのだわ。
「マリア、兵は護衛だけで良いな」
「いえ、大軍でいきましょう。この撤兵勧告書はイース連合王国の宣戦布告書でもありますわ」
辺境についたら、現地の騎士団と合流して。
ルーシー帝国軍を取り囲んだ。
私は護衛騎士をつれて。
敵のヒゲ面の隊長に上から目線で話しかけた。
「これ、そこの酋長、我はソイド王国ヒルド侯爵令嬢のマリアですわ。これがイース連合の撤兵勧告書ですわ」
「はあ?それは何だ」
「つまり、撤兵しなければイース連合が動くと言う事です」
殿下は私の隣で剣に手をかける。
一触即発の雰囲気だわ。
「遭難したのなら、水と食べ物を恵んでやる。そうそうに出て行くが良い」
交渉ははったりと建前が重要だわ。建前は遭難したことにする。
「しかし、少し、時間が・・・撤収する時間が欲しい。家を建ててしまった」
「なるほど、家を焼けば出て行くのかしら?」
私は殿下に命令してもらいルーシー帝国軍が建てた掘っ立て小屋を焼き払ってもらった。
彼らはルーシー帝国の一部族だった。
これは問題になるかと思ったが、ルーシー帝国から書状が来た。
すりあわせが行われて。一部族が遭難したとの事で落ち着いた。
その間、お姉様は祈っていた。
「まあ、私の祈りが効いたから敵兵は撤退をしたのね」
「敵兵?一応、ルーシー帝国の一部族が避難した扱いになっている」
その頃からお姉様の化けの皮が剥がれてきた。
聖女であるが力が弱い。
それに、学力はなおざりだ。問題解決力がない。いや、そもそも問題解決能力なんて私にもない。
「拙速が上策です。正解を当てるのではなく、選択を正解にする気概が必要なのです」
「な、なるほど、マリア嬢、王妃として私の隣で政務を見て欲しい」
「しかしながら、私のジョブは村人ですわ」
私は村人の視点でしか見られない。
しかし・・・賢者が言うわ。
「マリア嬢の王太子妃擁立賛成でございます」
「何故よ!マリアは村人よ!」
お姉様は反対する。
王宮は騒乱になった。
ジョブ村人の王妃は女神信仰圏では例がない・・・。
賢者は話を続けるわ。
「文献にございます。村は小さな都市国家でもあるのです。たった100戸の村でも、村長と若衆による権力闘争、政略結婚による近隣の村との同盟、平時でも裁判による闘争が起きています・・・」
「つまり、マリア嬢には小さな都市国家の指導者並の力があります」
散々持ち上げられて、都市国家の指導者かしら・・・でも、まあ、いいわ。
「殿下、その話はお受けします」
「マリア・・・・嬉しく思うぞ」
「嘘よ!」
一晩で立場が逆転をした。
国際政治に永遠の同盟も敵対もあり得ない。
「今回のルーシー帝国の件で全く機能しなかった女神教会への寄付を少なくするべきです。
その代わり、お姉様を修道院の指導者に推薦しましょう」
「分かった」
屋敷はもう出た。
お父様とお母様はまだ信じられないようだ。
「あまりにも悲しみが続くようだったら、お父様とお母様は侯爵の公務懈怠で爵位没収いいわ」
「君・・・」
「実の所、無能はいられない厳しさだわ」
「分かった」
そう、トンビも鷹として舞わなければたちまち狩られる世の中だ。
これがお父様とお母様のためでもある。
私は遠い親戚の者を侯爵に推薦することにした。
家族の処置は正解かどうか分からない。
しかし、私の処置が不正解でお父様お母様が有能でお姉様が復権すれば良いとは思うが、
現実は非情だ。
私は王妃につき。村人の感覚でマンフリート陛下に助言し。水争いの調停のように貴族の利害を調整している。
全く、人生は分からないものである。
最後までお読み頂き有難うございました。




