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最強の勇者が壊れた世界で、最弱の俺が選ばれた  作者: 雨宮カイト


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1/1

何も変われないまま、俺は死んだ

死んだ。


……たぶん。


いや、正確に言えば——


「やっと終わった」


そう思った。


最後に覚えているのは、

コンビニ帰りの信号だった。


夜。


少し雨。


コンビニ袋の中には、

安い弁当と、9%の缶。


いつもの帰り道。


いつもの疲れ。


ただ今日は、


少しだけ胸が苦しかった。


息が浅い。


でも。


不思議と焦りはなかった。


むしろ——


少し安心していた。


疲れていた。


仕事にも。


人生にも。


未来にも。


頑張ろうと思っても続かない。


変わろうとしても戻る。


金の不安。


身体の不安。


このまま何者にもなれない焦り。


「いつか変わる」


そう思っていた。


でも結局——


何も変われなかった。


信号が青になる。


歩こうとした瞬間。


胸が、


ズキッと痛んだ。


「……っ?」


息が詰まる。


視界が揺れる。


足に力が入らない。


「え……な、何これ……」


しゃがみ込む。


呼吸が苦しい。


心臓が、

嫌な音を立てる。


頭の中を、

いろんな言葉がよぎった。


疲れか?


ストレスか?


太ったから?


病気?


いや、


まだ大丈夫。


そう思ってたのに。


9%の缶が、

コンビニ袋から転がった。


雨に打たれる。


遠くで、

誰かの声が聞こえた気がした。


でももう、


動けなかった。


ぼやける視界。


冷たい地面。


スマホの通知。


未読。


支払い。


仕事。


どうでもいい。


最後に浮かんだのは、


後悔だった。


もっと痩せればよかった。


もっと頑張ればよかった。


もっと——


変わりたかった。


でも。


もう遅い。


何も変われないまま、俺は死んだ。



気づくと、


白い場所にいた。


天国。


……にしては、安っぽい。


真っ白な空間の真ん中。


なぜかパイプ椅子が一個。


そして——


そこにいたのは、


ジャージ姿のジジイだった。


缶コーヒーを飲んでいる。


しかも、

めちゃくちゃくつろいでいる。


「……は?」


するとジジイは、


こっちを見て言った。


「死んだぞ、お前」


「え?」


「人生終了。お疲れさん」


軽っ。


いや待て。


もっとこう……


神っぽいの想像するだろ普通。


後光とか。


羽とか。


威厳とか。


俺が固まっていると、


ジジイは鼻で笑った。


「何期待してんだ」


「お前、そんな大層な人生じゃねぇだろ」


「……っ」


地味に傷つく。


俺は少し黙った。


でも——


少しだけ安心してしまった。


もう頑張らなくていい。


仕事も。


金も。


将来も。


全部終わり。


そう思った時だった。


ジジイが、

深いため息をついた。


「ただなぁ」


「お前みたいなの見ると、毎回思うんだよ」


「……?」


空気が変わる。


初めて、


ジジイの目が、


まったく笑っていない事に気づいた。


そして。


ジジイは言った。


「漫然と生きて」


「後悔だけ抱えて終わる奴、多すぎ」


ムカついた。


死んだあとに説教とか、

最悪だ。


俺が顔をしかめると、


ジジイは立ち上がった。


そして——


真っ直ぐこっちを見て言った。


「——もう一回、生きるか?」


空気が凍る。


「ただし」


ジジイは続けた。


「次の人生は、地獄よりキツい」


「それでも行くか?」


その時の俺は、


まだ知らなかった。


この世界では——


勇者たちが、折れすぎていた事を。

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