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努力する天才剣士の成長録――氷剣で己が道を切り拓く  作者: 文ノ陽


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7/10

三歳の誕生日①

僕は、外を見るのが好きだ。


お日様が出ている日は、なんだかポカポカして安心する。


雲が流れていくのも好きだ。

ゆっくりだったり、速かったり、形が変わったりする。

雲は自由だなって、いつも思うんだ。


雨も、嫌いじゃない。

屋根を叩く音は少しうるさいけど、なんだかじっくり聞いてしまって、いつも眠くなる。


でも、雷は嫌いだ。


急に光って、大きな音がして、胸の奥がびくっとする。

大きい音は、本当に苦手だ。


いつだって、静かなほうがいい。


雪が一番好きだ。

白くて、ふわふわしていて、光が当たるとキラキラする。


それが、とても好きだ。


今日は曇りで、少し雪。

でも、なんだか落ち着かない。


椅子に座っていると足がぶらぶらして、胸の中がくすぐったいみたいだ。


寒くなり始めた頃、お父さんとお母さんは、

「冬は寒いから、あまり好きじゃない」

って言ってたけど僕はそうは思わない。


だって、冬になるとイギルさんが遊びに来る。


イギルさんは商人さんで、この町で一番大きい店を持っている人だ。

僕の服は、どれもイギルさんのお店で買っている。


毎年冬になると、たくさんお土産を持ってきてくれてお父さんも


「今年も任せたぞー」


って、笑っている。


イギルさんは、雪がひどくなったときにみんなを助けられるように、たくさん準備してくれているんだって、お父さんが言ってた。


イギルさんはすごい人なんだって。

いつも忙しそうな人だなって思ってる。


今日はローズが朝から忙しそうだ。

廊下を行ったり来たりして、布を運んだり、指示を出したりしてた。


僕の誕生日、そんなに盛大にしなくてもいいのに。


でもお父さんは言った。


「領主の長男の三歳の誕生日はな、ちゃんとやらないといけないんだ」


よく分からないけど、大事なことらしい。


でも今年は、雪がひどくなるみたいだから、

外には出ないで、家にいるみんなで誕生会をするんだって。


それはちょっと残念で、でも少し安心だった。大人数は苦手だ。


あちこちで、人が歩く音や、お皿を置く音がする。

些細な音だけど、なんだか落ち着かない。


お母さんは、奥の部屋で休んでいる。

お腹に赤ちゃんがいるからだ。


最近はお腹が大きくなってきて大変みたい。

僕はお父さんと一緒に寝ている。


僕の弟か妹は、春頃に生まれるらしい。


弟がいいな、と思う。

理由はないけど、そう思った。


暖炉の薪が、パチリと鳴った。

部屋は暖かい。

窓も閉まっていて、風の音もしない。


なのに――


なぜか、

胸の奥が、ひんやりしている。


寒いわけじゃない。

怖いわけでもない。


変な感じ。


僕は、寒いのも冷たいのも平気だから、嫌じゃない。

ただ、不思議だった。


外を見ると、ポツポツと雪が降り始めていた。


小さくて、軽くて、まだ積もるほどじゃない雪。


それを見た瞬間、理由もなく窓際に移動した。


どうしてだろう。

でも、雪を見ていると、なんだか落ち着く。


「……」


そのとき、廊下の向こうから声がした。


「――おぼっちゃまー」


ローズの声だ。


はっとして、僕は振り返る。


そうだ。

誕生会が始まる。


みんなが待っている。


もう一度だけ、窓を見た。


雪が差し込んだ光を反射して、キラキラと輝いている。

なんだか、雪が応援してくれているみたいだ。


――大丈夫。


そう思った。


僕は、扉へ向かって歩き出す。


ーーーーーーー



扉を開けると


「お誕生日おめでとうございます!」


一斉に声が上がって、びっくりして肩が少し跳ねた。


広い部屋だ。

家族と、近しい人たちが一緒にごはんを食べられるくらいの大きさで、十人くらいが集まっている。


机の上には、いろんな色の料理が並んでいた。

赤いもの、黄色いもの、茶色いもの。

どれもおいしそうで、目が忙しい。


その中でも、すぐに分かった。


大きなお皿の真ん中に、どーんと置かれたローストビーフ。


つやつやしていて、いいにおいがする。

僕の一番好きなやつだ。


机の真ん中には、二段になったケーキがあった。

白くて、きらきらしていて、なんだか宝石みたいだ。


部屋に入ってすぐのところで、お母さんが座っていた。


「こっちへおいで」


そう言って、手招きしている。


お母さんの横にはローズがいて、その奥にお父さんがいた。


僕が母さんの横に座ると、ローズは静かに立ち上がって、扉の近くの席に移った。


みんなが席につくと、お父さんが立ち上がる。


「ヴァイス、三歳の誕生日おめでとう。」


お父さんは、僕を見て笑った。


「ヴァイスはな、喋るのも歩くのも早かったし、あまり泣かない強い子だった。パパもママも、いつも助けられているよ」


みんなもうんうんと頷いている。

なんだか少し、くすぐったい。


「今日は大好きなローストビーフをたくさん用意した。お腹いっぱい食べなさい」


それから、少し声を大きくして言った。


「それでは――乾杯!」


グラスが鳴って、誕生会が始まった。


みんなで料理を食べた。

ローストビーフは、やっぱりおいしかった。

ケーキも甘くて、口の中が幸せだった。


気がつくと、窓の外が明るくなっていた。


さっきまでポツポツ降っていた雪は止んでいて、夕焼けの光が、部屋の中に差し込んでいる。


赤くて、やさしい光だ。

冬になると空が赤くなったらすぐ夜になるんだよね。


お腹がいっぱいになって、少しぼーっとしていると、お父さんが声をかけた。


「そういえばヴァイス、おじいちゃんから誕生日プレゼントが届いているよ」


おじいちゃん。


「おじいちゃんも誕生会に来たかったみたいだけど、今年は雪がひどいくなりそうだからね。今度、会いに行こうか。」


そう言って、お父さんは細長い箱を一つ、僕に渡した。


わくわくして、すぐに箱を開ける。


中には、きれいな石のペンダントと、一通の手紙が入っていた。


石は冷たくて、透明で、

まるで氷みたいだった。


お父さんに手紙を読んでもらう。


「――ヴァイスへ。お誕生日おめでとう。おじいちゃん、誕生会に行けなくてごめんね」


僕は、じっと聞く。


「ヴァイスは雪が好きだって、お母さんから聞いているよ。箱には、雪の魔法が入ったきれいな石を入れておいた」


雪の魔法。


胸の中が、少しひんやりした。


「ヴァイスが大きくなったら、その石で魔法の杖を作ってもらいなさい。きっとヴァイスのためになる」


氷のワッペンを胸につけてもらい。

読み終わった手紙を、受け取った。


「良かったな。魔法が使えるようになったら、これを杖にしよう。それまで大切にしておくんだぞ」


僕は、大きく頷いた。


外は、すっかり暗くなっていた。


窓の向こうで、ぽつりぽつりと雪の結晶が落ちていくのが見える。


静かな夜だった。

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