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アル≒テミス  作者: 谷 風汰
第4章 愛の魔女編

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第25話 「愛の魔女」

「結婚⋯⋯相談所⋯⋯?」


 ぼくは言った。


「ええ、そうよ」

「何なんですか? それ」

「婚期を逃した旅人や商人に結婚の助言をするの。

 たまに偉い人もこっそりくるけどね」


 な、なるほど⋯⋯。

 だから『子どもが行くところじゃない』って言ってたのか。


 アマラさんは、急にこちらに顔を近づけた。

 目と鼻の先。

 

「可愛いのね」


 美しい顔が視界を占める。

 心臓がバクバクする。

 

 の、のまれる⋯⋯!!


 ぼくはとびのいた。

 これが愛の魔術か⋯⋯?

 なんて強力で、凶悪な⋯⋯!!


「冗談よ」


 そう言うと、アマラさんは微笑した。

 凶悪な笑顔。


「それで、どうしてここに来たのかしら?」


 そうだ。

 忘れていた。


「俺たち、魔族の村に、空の書を探しに行きたいんです。

 それでフランソワ先生が魔女さんを頼れって言ったんです」


 ロイが言った。

 感謝だ。


「フランソワ⋯⋯? へえ、彼が」


 アマラさんは目を細めた。


「彼の考えていることは大体分かるわ。

 魔族の村は強い魔物がウジャウジャいるから、私に魔術を教わってこい、ていうところでしょうね」

「⋯⋯そうですね」

「いいわ」 


 あっさりと了承してくれた。

 流石先生だ。

 

「その代わり、ここで働いてね」

 

 え。


「ぼくたちがですか?」

「ええ」


 働く⋯⋯。


「大丈夫よ。簡単だから。

 あなた達みたいな年頃の子が好きな人も偉い人にはいるしね。

 とりあえず、中に入りましょう」


 アマラさんはそう言うと、館に向かって歩き出した。


 ついていく。


「ところで⋯⋯あの男の人たちは何なんですか?」


 ぼくは聞いた。

 流石に気になって仕方がなかった。

 

「従業員」

「⋯⋯へえ」

「もちろん自主的にやってるのよ」

「⋯⋯へえ、でも、さっき道で脱獄した人を見かけたんですが⋯⋯」

「そうね、たまに我に返ってしまうんでしょうね」

「そうですか」


 四角形の彼らの列に入った。

 真正面を真顔で見つめている。


 居心地が悪い。


「えーっと⋯⋯ぼくらもあの格好を?」

「そうね」

「そうですか」


 先生を恨んだ。


「みんなも中に入りなさい」


 アマラさんは男たちに言った。

 綺麗な一つの列が出来る。


 トカゲを玄関に置き、館に入った。

 赤い絨毯が床に敷かれていて、壁際には長椅子が置いてある。

 天井に吊るされているシャンデリアが綺麗だ。

  

「今日はお客さんはいないんですか?」


 ロイが言った。


「ええ、基本は夜だから。相手もこっそり来たいみたいね」


 なるほど。 

 やっぱり人には言いづらいものなのかな。 


 奥の部屋に入った。

 一脚の椅子と、その前に大きな机が置いてある。 

 その上には赤い布が敷かれてあり、きれいな水晶があった。


「ここが相談室」


 そう言うと、アマラさんは大きな机の方に座り、


「じゃあ椅子に座って」


 ぼくらを促した。


「何をするんですか?」

「結婚占いよ。将来どんな人と結ばれるか、私が見てあげる」


 これも商品の一部なのか。

 ちょっと気になる。


「分かりました!」


 ぼくは言った。


 椅子に座ると、アマラさんは水晶に手をかざした。

 赤く光る。


「見える⋯⋯見えるわ⋯⋯」


 ドキリとする。

 汗が滴る。


「あなた⋯⋯想い人がいるわね」

「どどどどうして?」

「見えるわ⋯⋯そして⋯⋯その人とは1,2年前に出会った⋯⋯

 さらに⋯⋯何か貰ったわね⋯⋯?」

「はっ!」

「その首にかけている何か、それだわ」


 当たってる!


「じゃあ、その子との将来はどうなるか⋯⋯」


 水晶はさらに輝きを増した。

 目が眩むほどだった。

 アマラさんも細目になっている。


「⋯⋯ん⋯⋯あれ?⋯⋯ちょっと待ってね」


 なんだろう?


「⋯⋯見える⋯⋯見える⋯⋯あれ」


 水晶はさらに⋯⋯。


「眩し」


 アマラさんは言った。

 光は弱まった。


「うん、そうね、見えないわ。あなた」

「え⋯⋯」

「なんでか分からないけど、あなたの想い人、もやがかかったようになってるの」


 それって、もしかして⋯⋯。


「あの、彼女、ちょっと変わってるんです。

 ぼくらとは違くて」


 違う世界から来たことと関係あるのか?


「⋯⋯へえ、もしかしたら関係あるのかもね。

 どちらにせよ、その人⋯⋯」


「歴史に名を残すわ」


 ぼくの目を見て、そう言った。


「え」

「だからアドバイスとしては、あなたもそれに並ぶくらい頑張るしかないってことね」

「ふわっとしてますね」

「しょうがないじゃない。あんまり見えないんだもの」


 アマラさんは小声で言った。

 悔しそうだった。


「あなたもやる?」

「いや、俺はいいです」

「そう、あなた、薄そうだもんね」


 いいのかロイ!!


「じゃあ、こんなところにして、とりあえず仕事の説明をしましょう。

 魔術の修行は明日からね」

「はい」


 アマラさんはぼくらにここで待つよう言って、部屋を出ていった。


「いいのか? ロイ」

「え? うん」

「そっか」

「それより修行がしたいよ、俺」


 それはそうだけど、こちらも何かを返さないとしょうがない。

 

「まあ、頑張ろう」

「うん」


 どんなことをするのか楽しみだ。



‐‐‐



 夜、ぼくは葉っぱ一丁になっていた。

 もちろんロイも。

 なぜこんな格好をするのかと聞いたら『趣味』だと答えていた。

 お客さんは男が多いのに、これで良いのだろうか。


 何をするのかというと、まずアマラさんの横に突っ立っていること。

 それだけで絵になるから、と言っていた。

 よく分からない。


 次に、水晶を綺麗にすること。

 アマラさん曰く、あれは魔術によって光り輝いているが、溜まっていく魔素を取り除かないと段々暗く濁っていくらしい。

 それを取り除いてくれ、と。

 ちなみに水晶がなくても占いはできるらしい。

 ただの飾り。


 今は、占いをする横で突っ立っている。

 動いちゃいけないのは結構辛い。

 足がムズムズする。

 ロイはぼくより辛いらしく、たまにあらぬ方向に体を曲げていた。


「どうぞ、お掛けになって」

「はい」


 ローブを羽織った男。


「今日はどうされまして?」

「故郷に想っている人がいるのですが、どういう風に会いにいけば良いのか分からなくて」

「そうね⋯⋯」


 水晶が光った。


「⋯⋯見える⋯⋯見えるわ⋯⋯彼女、毎日教会に行ってるわね」

「はい、熱心な信徒でした」

「⋯⋯つい最近、失恋してるわね」

「そうなんですか!?」

「ええ、つまり傷心中ね、彼女。

 教会が心の拠り所になっているのかしら」

「そんな⋯⋯」

「ということは、彼女が教会を出た直後、そこを狙いなさい」

「分かりました! ありがとうございます!!」


 男は去っていった。


「どうぞ、お掛けになって」

「はい」


 高そうな服を着た男。

 こちらをジロジロと見ている。


「今日はどうされまして?」

「⋯⋯ええ、まあ、射止めたい人が⋯⋯いましてね。

 どんなものが好きなのかを知りたいのです」

「そうね⋯⋯」


 水晶が光った。


「⋯⋯見える⋯⋯見えるわ⋯⋯植物の標本が好きみたいね。

 買ってプレゼントしてみたらどうかしら」

「あ、ありがとうございます⋯⋯。

 それにしても、可愛らしい従業員がいらっしゃいますな」

「そうね」

「また来ましょう」


 男は去っていった。

 若干身震いがした。


「じゃあ、今日はここまでね」


 アマラさんは言った。


「水晶は明日でいいわ。もう遅いし、寝る準備をしましょう」

「はい」


 ぼくらは従業員室に行き服を着て、占い室に戻った。


「こっちよ」


 寝室に案内してくれるらしい。

 館はかなり大きいため、使っていない部屋がかなりあるらしい。

 

 二階に上がった。

 ギシギシと、木で出来た床が軋む。

 少し不気味だ。


「どうだった? 初仕事」


 アマラさんは言った。


「⋯⋯どうと言われても、立っているだけでしたし」


 ぼくは言った。


「役に立ったわ」

「? なら良かったです」 


 と、しておこう。


「でも足が疲れました。ね、ロイ」

「うん、動けないのは辛いですよ」

「徐々に慣れるわ」


 奥の部屋についた。

 アマラさんが扉を開ける。


「ここよ」


 部屋に入ると、大きなベッドが二つ目に入った。

 シンプルな部屋だ。

 

 疲れも溜まったし、今日はぐっすり眠れるだろう。

 明日も頑張ろう。


 仕事はうまく出来てるか分からないけど、ここに来ている人たちはみんな悩み事を抱えていて、それぞれが結婚という大事なことに悩んでいるんだ。

 真面目にやり切ろう。


「アマラさん、明日も頑張ります。

 お客さんが、愛する人と出会えるように」


 ぼくは言った。


「良い心意気よ。でもね」


「愛なんてないわ」


 そう言うとアマラさんは微笑み、扉を閉めた。

 静かな夜に、ガチャリという音が響いた。

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