表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/16

都市の影

森と湿地を抜け、俺たちは都市の外れに差し掛かった。

瓦礫と火災で煙が立ち上り、視界は曇っている。遠くの建物の窓には機関銃の閃光が走り、ドイツ軍の残存部隊が隠れているのがわかる。


「前進だ!」

上官の号令に、俺たちは低く伏せながら道を進む。建物の影に身を潜め、時折銃撃を返す。銃弾が壁に打ち付け、瓦礫が跳ねる。


通りを曲がると、民間人の姿が目に入った。老婆は瓦礫の隙間で身を震わせ、子どもたちは母親の腕に抱えられている。

「安全な場所へ!」

叫んでも、戦火の中で声は届かない。俺たちは注意深く距離を取り、彼らを巻き込まぬよう進むしかなかった。


路地の角で、伏兵が姿を現した。仲間が銃撃を受け、砂煙と埃に包まれる。俺は反射的に引き金を引き、敵を倒す。息をつく暇もなく、別の角から銃声が飛んでくる。


建物の中は炎と煙で視界が遮られ、破片が飛び散る。仲間の一人が倒れ、呻き声が空気に溶けた。

「大丈夫か?」

返事はなく、俺は肩を叩きながら前進を促す。恐怖と疲労が全身を覆い、手足は泥と血で汚れている。


広場に差し掛かると、さらに激しい戦闘が待っていた。ドイツ軍の機関銃陣地が残り、建物の屋上から狙撃が続く。上官が指示を出し、数人ずつ分かれて建物を制圧しながら進む。


炎の中で倒れた仲間、瓦礫に挟まれた民間人の影――

勝利の歓声はなく、ただ静かな恐怖と緊張だけが都市を包んでいた。


俺はライフルを握り直し、息を整える。

「まだ終わらない……」

心の奥で、戦争の虚しさが胸を締め付ける。

それでも、倒れた仲間の犠牲を無駄にしないために、俺たちは前へ進んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ