沈黙の鐘楼 2
遠くの空が突然、柔らかな光で満たされ始める。
光は一瞬で渦を切り裂き、暗雲を押し退けていく。大地の端から光の奔流が広がり、森や村の影を優しく照らした。
『あれ……光……?』
ノエルの目に映るのは、黒く禍々しい空を裂く、一筋の輝き。空のうねりは徐々に消え、暖かい空気が村を包む。
『魔香炉は……閉じたか』
ヴァルティスがノエルの手をギュッと握りしめ、静かに呟く。
『ノエル。もう大丈夫だ。村に戻ろう』
そう言い階段を降りようとした時──
『ねぇ。父さん。馬車がこっち向かってる……』
ヴァルティスがもう一度外を見やると、一台の馬車が村の方へ走ってきていた。禍々しい気配はない。
『ノエル。馬車の人を村に入れよう』
階段を降り、馬車の方へと足を進めるヴァルティス。
遠くから近づく馬車を凝視すると、懐かしい顔が見えた。
『……レオナール……か?』
どんどん近づく馬車の中、レオナールは血まみれだった。
『レオナール!何があった!』
大声で叫びながら馬車へ駆け出すヴァルティス。
レオナールも気付き、ゆっくりと馬車を止めた。
『ヴァルティス───久しぶりだな』
そこには、かつての勇敢で頼もしい表情はなかった。
『もう喋るな!』
ヴァルティスは両手を前にかざし、治癒魔法を展開する。
【ヒーリングベール】
『無駄だ……もう俺は……長くは……ない……エリ……シアと……娘を……シエルを……助けて───』
レオナールは手綱を静かに離した。ヴァルティスは目の前で旧友を失う痛みに胸を抑える。
ノエルは馬車の後ろを覗き込み、血だらけで眠る女の子と、母親を見つける。
『父さん。こっち!……』
ヴァルティスは少女と女性の前に手をかざし、魔法を唱える。
【ヒーリングベール】
少女の顔は少しずつ赤みを帯びていき、安堵の息を吐く。しかし、母親の胸の傷は塞がらなかった。
『この子は……シエルは……助かる?』
不安げに尋ねるノエルに、ヴァルティスは涙を拭いながら微笑んだ。
『あぁ。傷も浅く、眠っているだけだ。時期に目を覚ますだろう。ノエル。今日からこの子も私達の家族だ』
『わかった……』
二人はレオナールを荷台に乗せ、村へ向かって馬車を走らせた。
お久しぶりです(*^^*)
なかなか続きが書けなくて...
頭の中では出来ていても言葉にするのは難しいですね。
待たせてしまいすみません。