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カレンデュラ  作者:
聖女と少年
32/42

海の街 マリセイル 1

すみません。投稿時間過ぎてました。

申し訳ないです

馬車はマリセイルの街門をくぐり、石畳を駆け抜けた。

朝の光が淡く街を染め、潮の香りが風に混じる。港町の活気が少しずつ目覚め始め、石畳を叩く馬の蹄の音が乾いた音を響かせた。


『治療師の家はどこだ!?』

ヘクターの声が、焦りにかすかに安堵をにじませる。


アルが素早く地図を広げ、指先で道筋を示した。

『この通りの先、左手の建物です! あの屋根に青い旗が出ています!』


朝靄の残る通りを馬車は疾駆した。行き交う人々が、驚いたように足を止め、馬車の行方を目で追っていた。


『シリウス、フェリス! 二人を頼む!』


二人はノエルとシエルを抱え、荷馬車から飛び降りる。

治療師の家は古びた木の看板が揺れ、小さな花壇が入口を飾っていた。


中に入ると、薬草と消毒の混じった匂いが鼻をついた。

静かで、どこか懐かしい温もりが漂う空間。


奥から白髪の老人が現れた。くしゃりとした顔に、優しい目が光る。


『すみません! この二人を診てください!』

フェリスが声を張る。


シリウスも息を整え、状況を伝える。

『彼女は戦闘中に倒れ、彼は頭を強く……止血はしましたが血が……』


老人は頷き、素早く二人に目を走らせた。

『ほう……女の子は魔力切れじゃな。治癒魔法を軽くかければ、二日もすれば目を覚ます。』

『男の子は……こりゃ深いな。腕にヒビも入っとる。骨のかけらを取らねばならん、少し時間がかかるぞ。それでいいな?』


『お願いします……!』

二人は同時に頭を下げた。


『そこに腰を掛けて待つがいい。……お主らも随分な傷じゃ。娘に癒させよう。』


小さな影が奥から現れた。まだ幼い少女が、無言でソファを指差し、

『ん……』

とだけ呟く。


シリウスとフェリスは顔を見合わせ、疲れを隠せぬままソファに身を沈めた。


【ヒーリングベール】


柔らかな光が降り注ぎ、二人の体を優しく包んだ。

まるで、張り詰めていた心まで溶けていくような心地だった。


『……ありがとう。』

シリウスが静かに礼を言うと、少女は小さな足で奥へ戻っていった。


部屋の奥からは水の音、金属の触れる音、淡い光が時折ちらりと漏れていた。


『……あんなに幼いのに、あれだけの魔力……すごいな。』

フェリスが感心の声を漏らす。


『あぁ。あの歳で……あれだけ使えるとは。大したものだ。』


窓の外で風がカーテンを揺らし、遠くで船の鐘の音が微かに響く。


『まだ……時間がかかりそうだな。』

『ああ……王都へ向かう前に、少しでも休んでおかないと……』


二人は静かに目を閉じ、わずかに微笑み、心地よい眠りへと落ちていった。


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