初任務 6
王都の街灯にポツポツと灯りがともり始める頃。
南門前には、旅の始まりを告げるように馬車と荷を積んだ荷台が並び、静かに出発の時を待っていた。
空には細い三日月が浮かび、冷えた夜風が頬を撫でていく。
昼間の喧騒が嘘のように静まり返った通りに、これから始まる旅への高揚と一抹の不安が漂っていた。
そんな空気の中、ムーンロードの仲間たちが一人、また一人と荷台の方へと集まってくる。
『シエル...もう落ち着いた...?』
心配そうにノエルがシエルの顔を覗き込んだ。
シエルは少し疲れた表情を浮かべながらも、微かに笑って頷く。
『うん....もう大丈夫だよ。ごめんね?心配かけて....』
小刻みに震えていたその手を、ノエルは優しく、そしてしっかりと握りしめる。
『俺がそばにいいるから。だから安心して...?』
その言葉に、シエルの瞳がわずかに揺れる。
視線を少し逸らしながらも、頬をほんのり赤らめ───小さく、囁いた。
『.........ありがとう。』
ノエルの手の温もりが伝わったのか、彼女の震えはいつの間にか止まっていた。
───
一方その頃、荷物の積み込みが終わり、メンバー全員が顔を揃えていた。
『今日はよろしくお願いします。まず、最初に馬車を引くのがこっちのルコン。その後は僕、アルです。ムーンロードの皆さんには順番に運転手の隣に座って護衛してもらいながら、街まで向かおうと思ってます。』
『まかせて。私たちが交代で見張るから!』
ルナが明るい笑顔でそう言うと、続けてさらりと頼もしさも添える。
『もしも魔物が出ても、アルたちは結界の中で大人しくしててね』
ルナの言葉に、アルとルコンの表情にもほっとした色が浮かぶ。
『じゃあ皆んなは荷台乗って。───シエル。お願い!』
『任せて!』
【スリープベール】
淡い光がふわりと広がり、夜風に舞う羽のように仲間達を包み込む。
まるで月の光が形を持ったかのように、優しく、眠りへと導いていく。
『よし。準備オッケー!』
元気よく振り返ったシエルに、コルンも笑顔で応えた。
──夜の王都に、馬車の車輪が静かに軋みを上げる。
『さあ、コルンさん行こうか!』
『はい!お願いします!』
こうしてムーンロードの一行は───
夜の帳が降りる中、静かに王都を後にした。




