初任務 4
『お久しぶりです、ベクトルさん。』
ルナが挨拶をすると、ヘクターも黙って頭を下げた。
『改まらなくていいよ、ルナ。今回は依頼を受けてくれてありがとう。さぁ、こちらに……』
二人が足を踏み入れたのは、木の温もりが残る小さな応接室だった。
壁には古びた地図がかかっており、中央の丸テーブルの座った。
ルナが静かに頭を下げる。横にいたヘクターも、それに倣って深くお辞儀をした。
かつては刺々しさの残る鋭い目をしていた彼女が、今は肩の力を抜いたような穏やかな笑みを浮かべていた。
『顔付きが少し…変わったな。』
ベクトルが微笑みながら言うと、ルナは少し照れたように目を逸らしながら答えた。
『そう……かな?』
『あぁ。昔はもう少し険しい顔をしていたよ。ギルドを持って逞しくも優しい顔になったな。』
頭を撫でて褒めてもらい、ルナの顔は笑みで溢れた。
『今回の荷物なんだが....高級酒数十本、火山鳥の加工肉、魔法石...それに薬草と野菜が数種類。この荷物の護衛を頼みたい。
こちらから運転手は2人用意する予定だよ。』
ベクトルの後ろにいた若い青年二人をこちらに呼んだ。
『初めまして。ヘクターさん。僕はアル。こちらはルコンです。話はベクトルさんから聞いています。今回はよろしくお願いします。』
アルは少し緊張してるのか硬い表情で挨拶をした。
『そんな緊張しなくていいぜ!こちらこそ、よしくな!』
ヘクターは大きく笑いながら手を差し出した。
少し戸惑ったあと、アルはその手をしっかりと握り返した。
『ありがとう。』
緊張が解けたような表情で、アルはほっとしたように微笑んだ。
『出発時刻は10時に王都南門の前でお願いします。
護衛人数は七人聞いてますが間違いないでしょうか?』
『あぁ、間違いないぞ!』
ヘクターが元気に答える。
『わかりました。では僕たちは失礼します』
アルとルコンは深くお辞儀をし、談話室から出ていった。
アルとルコンが去ったあと、ルナは扉の方を見つめながら、呟いた。
『......無事に住むといいけど』
ルナの言葉に、ヘクターは小さく笑った。
『大丈夫だろ。ルナがいりゃ、なんとかなるさ。』
その言葉に、ルナもわずかに笑みを浮かべた。