表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カレンデュラ  作者:
聖女と少年
22/42

初任務 3

真っ黒な世界──


そこにはシエルはただ一人で立っていた。


『.....何も、見えない。』


そう呟きながら、一歩、また一歩と前に進む。


暗闇は深く、どこまでも冷たかった。

不気味な寒気が、シエルの全身を包み込む。


『誰か....いないの?』

震える声で問いかける。


『くるし....い....』

『た、すけ......て.....』

『いたいよ.....』


男たちの呻き声が闇の中から響いてくる。


『どこにいるの?まってて、今助けるから!!』


シエルは光の魔法陣を展開しようと、叫ぶ。

『サンクテリア!』


けれど、何も起こらない。


『なっ、なんで.....?』


焦ったシエルは、何度も唱える。


『サンクテリア!サンクテリア!サンクテリア!!!!』


その間も、苦しげな声は止むことなく続いた。


『どうして.....?なんで発動しないの...!?』

混乱するシエルにゆっくりと人影が現れる。



『まってて.....今、助けるから!ヒーリングベル!』

視界に姿を捉え、回復魔法を唱える。

───けれど、それでも魔法は発動しなかった。


『どうして!?見えてるのに.....なんで.....!?』


シエルは涙をこぼしながら、完全にパニックに陥っていた。


人影は、静かに近付き───シエルの服の裾を掴んだ。

『おねぇちゃんの、せいだよ?』


振り返った先に立っていたのは、

目の無い、血塗れの子供だった。


『いやああああああああ!!!!』


叫び声と共に───シエルは、がばっと目を覚ます。


『あ....れ.....?夢....??』


その大きな声に驚いて、隣の部屋からフェリスが駆けつけてきた。


『シエル!?どうしたの、開けるよ!?』


ベットの上で大粒の涙を流すシエルがいた。


続いてノエルたちも、二階へ駆け上がってくる。


『シエル!!なにがあった!?』


はっとして扉の方を向き、シエルは涙を拭った。


『ごめん....ちょっと怖い夢、見ちゃって.....』


その身体は小さく震えていた。

フェリスが抱きしめようと手を伸ばすより先に、ノエルが駆け寄る。


そして──迷いなく、シエルをぎゅっと抱きしめた。


『シエル。俺がいるから...ちゃんと、ここにいるから。だから、大丈夫だよ!!』


ノエルの必死な言葉に、シエルは耐えきれず、子供のように声を上げて泣いた。


****


『ルナ。今回の商人ってどんな人なんだ?』


ヘクターは、ルナと並んで街を歩いていた。


『ベクトル商会の人だよ。気のいいおじさんで、話しやすい人なんだ』


『ベクトル商会って....まさか....あの!?うわ。急に緊張してきた....!』


『ふふ、大丈夫だよ。私の顔見知りだから。』


ルナは微笑みながら言う。


『ルナの知り合いなのか!?すごいな....』


『うん。昔ちょっとだけ、お世話になったことがあってね。──ほら、着いたよ』


ベクトル商会は食料品を中心に扱っており、王都でも一、二を争う規模を誇る商会だった。


ルナは門前のインターホンを鳴らし丁寧に名乗る。


『ごめんください。【月の道標(ムーンロード)】です』


カチリ、と音を立てて扉が開く。


『よく来てくれたね。ルナ、待っていたよ。』


現れたのは、ふくよかな体型で優しげな笑みを浮かべた中年の男だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ