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カレンデュラ  作者:
聖女と少年
18/42

教会4

花束を慰霊碑に飾り終えたあと、シエル、フェリス、神父の三人は静かに目を閉じ、祈りを捧げた。

その時の空気は、どこか柔らかく、けれど祈りの奥に宿る決意が感じられるものだった。


しばしの沈黙の後、神父が優しい声で言った。


『シエル。今日は王都での任務中に怪我をした者たちが、来る予定だ。もうすぐ祈りの間に来るから少し待ってくれるかい?』


『はい、わかりました』


神父は頷き、人々を呼びに行った。



『フェリスは...今から何するの?』

ふと、フェリスを見上げながら尋ねた。


『俺はね、神父様ともう一度慰霊碑にお祈りをしてから、子供たちの様子を見に行こうと思ってる』


そう言って笑ったフェリスの顔は、どこか懐かしさを含んでいた。


彼自身、幼い頃家族を亡くし、この教会で育った過去を持っている。

孤独だった彼に、神父の笑顔は何よりの救いだった。

だから今、こうして神父の手伝いをしながら教会を支えているのは、彼なりの恩返しでもあった。



『そっか。じゃあ....終わったら中庭で待っててくれる?私も後で子供たちの顔、見に行きたいの』

『もちろん。きっとみんなもシエルが来たらも喜ぶよ』


フェリスが優しく笑うと、ちょうどそのとき扉が開き、神父が怪我人たちを連れて戻ってきた。


『シエル、お願いするよ』

連れてこられた人々は、それぞれ不安と痛みを抱え、俯きながらもこの場所に縋るような表情をしていた。


シエルはゆっくりと立ち上がり、微笑みながら声をかける。


『それでは...順番にお話を聞かせてください。みなさん、こちらに並んで、この小さなお部屋へ一人づつお入りください。防音結界が張ってあるので、話声が外に漏れることはありません。安心してお話してくださいね。』


彼女の柔らかくも芯のある声に、人々の緊張か少しだけほぐれる。


そうしてシエルは小部屋に入り、次々と人々の傷と心を癒していく。


フェリスは静かにその背中を見送ると、神父とともに、再び慰霊碑へ向かった。


*****


フェリスはお祈りを終え、中庭に行くと二人の小さな女の子が飛び付いた。


『フェリスお兄ちゃーん!!』


アリアとマリアだった。


『どわっ!二人とも元気そうだね』

『うん!今日は来るかな?って毎日話てるんだよ♪今日はシエルお姉ちゃんは?』


キョロキョロしながらアリアが聞くと

『シエルは今"聖女"の仕事をしてるから終わったら来るよ』


『やったぁー!皆にも言ってくるね!』

そう言い二人はみんなのいる方に走り出した。


『さて。俺も他の皆の様子を見なくちゃ』

そう言いながら2人の後ろを着いていくフェリスだった。

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