目覚めた後に、見るものは
あの夢を見たのは、これで9回目だった。普通、同じような夢を見ても細部までは覚えていないことが多いと思うけれど、私の場合は違った。どの夢も、はっきりと覚えている。
1回目、彼女と私が出会ったのは真夏のビーチだった。現実世界では、まだ肌寒い季節だったというのに。夢の中で私と彼女は灼けた砂浜を裸足で駆けて、海に入ると、いつまでも戯れあった。
2回目、夢の中で私と彼女は、秋の街路樹を見ながら手を繋いで歩いていた。美術館に入って、不可思議で情緒的な絵画を眺めながら、後で感想を語り合いたいと思いつつ芸術を堪能し続けた。
3回目、季節は12月となって、私たちはお互いのサンタクロースとなった。暖炉がある部屋でプレゼントを交換して、互いに愛していると伝え合った。
4回目、「私たちは、違う世界で生きているのね」と彼女に言った。「そうね。でも大したことじゃないわ」と彼女が答えた。そのとおりだと思いながら、夢の中の神社で共に初詣をした。現実世界では1回目から一週間くらいしか経っていなくて、でも夢の中の私たちは、長い時間を共有していた。
5回目と6回目は、二日連続で見た夢で。私たちは南の島でバカンスを楽しんでいた。時折りスコールというのか、ざあっと雨が降ったけど、すぐに太陽が顔を出して。海外旅行なんか行ったことがない私を彼女はリードしてくれて、6回目の夢で二人の家に帰って、いつまでものんびりと過ごした。
7回目、家でニュースを見ながら「世界は不条理だわ」と私は呟いた。「そうね。たぶん私は、修復する方法を知ってる」と彼女が言った。
8回目、私と彼女はそれぞれ、別の地球にいて。二つの地球儀を動かすようなイメージで、お互いがいる世界を近づけていった。夢の中で、彼女と一緒なら何も難しいことはない。
そして9回目。「補い合って、世界は調和していくの」と、私たちの家で彼女が言った。もう言葉は要らない。私と彼女は、お互いを重ね合った。
目が覚める。ベッドから身を起こし、「おはよう」と声をかける。「おはよう」と、彼女も返してくれた。
世界は重なり合って、一つになった。きっと全てが良くなる。彼女との、新しい世界と日々が始まっていく。