第1話 人生山登りあり遭難あり谷なし
人生山あり谷あり、という言葉は俺 佐藤蓮斗には当てはまらない。
今日、好きな子にフラれた。
『なんで?』と電話を送り続けていたら、電話番号変えられた。
続いてはLINEの作戦。
でも——。
LINEを、ブロックされた。
ギャンブルに溺れた。
ギャンブルに溺れて、パチンコをやる。
負けが混んできてやめた。
酒を飲もうとした。
借金の取り立てに遭遇してやめた。
まさに人生どん底だった。
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無理じゃんって思った。
こんなどん底から? 脱却を? ——どうしろと?
「それは…………考えます」目の前の店員 佐藤は答えた。
俺は店長だった。佐藤の態度が気に食わないと、連日客からクレームが相次いでいる。
だから、今日付で、俺は佐藤を解雇する。
その宣言を、今日言い渡しに来た。
「だから、お前は——」
一番スカッとするところで、自動ドアが開いて、客が入ってくる。接客用の笑顔を慌てて作り直したがもう遅い。
透明な自動ドアの奥から、見られていたらしい。
「大丈夫ですか」
店員さん、と言いかけて客はやめたようだった。そして驚いた様子を見せた。
慌てて佐藤を見た。佐藤も口を開けていたが、膝から崩れ落ちた。
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「山本」
久しぶりだな……俺はおもう。
高校の同級生の山本。
「佐藤を、店長さんはどうするつもりだったんですか」
山本は聞いた。
店長が答に窮していると、俺は崩れた状態のまま山本に連行される。
慌てて俺は立ち上がる。
新しい人生のスターターピストルが、いま鳴った——