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THE SCRAP DREAM【第2章完結】  作者: Mr.G
第1章-Angel-
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第5話「行きは良い良い」

 ところ同じく次の日。俺らは今後の方針を決めた。


 まず、1つ目は企業に詳しい人間に話を聞くこと、これは既に目星がついてるから早めに終わることだろう。


 2つ目にビルの所属するギャング、クラシック・ボーイズへの聞き込みをする事。これは『エンジェル』についての話を聞くためだ。まぁ、何の情報もないよかマシだな。有益な情報が出ることを願う。


 3つ目、スミスを殺す。……例え何があってもこれだけはやらなければ依頼は完了しない。逆に言えばこれだけやれば依頼は完了。すぐにでもジョンに報告できる。


 この流れでいくことにする。三叉槍(トライデント)作戦ってとこかな。



「うん。こんなもんか、どうだビル」

「おう、合点だ。異論は無い」

「じゃあ、早速1つ目行くか」

「久しぶりだなぁ、奴に会うのも」

「ああ、楽しみだ」



 ──────────



『ビッグファイブ』の一つ、ハリソン・コーポレーション。ここの本社に奴はいる。


「なんか最近、企業にばっか来てる気がしねぇか?」

「一応、スミスの専属になったし、こうなるのは分かってただろ?」

「こう毎回緊張してたら訳分かんなくなるぜ。こういうのが嫌でフリーになったのにバカみてぇだ」

「まぁ、でもここはいいだろ。肩で風を切って歩けるぜ」

「それも居心地悪い原因の一つなんだよ!」

「ハハ、はいはい」



 そうして俺らはいつも通り、とんでもなく陽気な受付嬢と話し、その後目的の部屋の前に着いた。

 扉から出てきたのは、金髪で顔立ちの整った男。身なりも良い。が、ローブ姿で出てきた。


「カワバンガ!君たち。よく来てくれたね」


 とその男は言いつつ、なんか美女と出てきた。


「おっと、じゃあね。子猫ちゃん」


 そうしてその2人は親密そうな掛け合いをして、美女は俺らを尻目に横切って行った。



「はぁ、またこれか。コイツはいつもこうだな!」

「やぁ、ビル。相変わらず元気だね」

「アート、久しぶりだな。……部屋に入ってもいいか?」

「いいよ、もちろん。どうぞユウト、ビル」

「ありがとう」


 いつ見ても豪華な部屋だ。サイバーな雰囲気があまりない。ヴィクトリアン調?シャンデリアがついてそうな感じだ。金細工があって壺があって、……まぁそんな感じ。



「……それで、何の用で来たの?」


 さて、この男の名はアーサー。アーサー・C(カーディフ)・ハリソン。

 名前を聞けば分かる通り、この大企業『ハリソン・コーポレーション』の御曹司だ。そのおかげで馬鹿みたいに欲しいモノを手に入れてきた。


 ……の割には話の分かる奴だし、初めて出会ったのも俺らで“悪さ”をした時だ。俺らみたいな正式な苗字も無いような人間には理解できんが、生まれながらに何もかもを手に入れた奴は”不良ごっこ”をしたくなるらしい。

 そんな奴だ、まぁこのタイプの男を受け付けない人間も多いだろうな。しかもさっきの通り、女にモテる。


 ……もしかして、受け付けてないのは俺かもな。フッ。



「最近の俺らの仕事の話は聞いてるか?」

「もちろん、全く」

「あぁ、だろうな、そこから始めよう」

「なよっちぃオマエに、オレ様の活躍の話を教えてやるぜ!」

「ぜひ頼むよ」



 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



「――なるほどね。それで僕のところに」

「協力してくれるか?」

「もちろん、こんな楽しいことに僕を頼ってくれるなんて光栄だよ」

「おい、話聞いてたのか?楽しくねぇんだよ!大真面目なんだよ!」

「わかってるよ、ビル。……カタオカ、ライバル企業だからね。情報ならウチのクラウド内に沢山あるよ。ちょっと調べてみようか」

「あぁ、マジで助かる」


 そうして俺らはアートがコネクタをPCに繋いで作業をしているのを眺めることにした。



「本当は君たちにも手伝って貰いたいんだけど、流石にウチの情報全部見られる状態にしたら僕でも殺されるだろうしねー」

「だろうな」

「ホントに盛り上げたいなら、それくらいのスリルはあってもいいんじゃねぇか?」



「いやぁ、僕はすぐ横でちょっかい出す傍観者くらいのポジションでいいんだよ。ってかさ、この後カタオカに帰るってこと?」

「あぁ、スミスに会いに行かなきゃならないしな」


「ふーん、じゃ、ここの会合バレてないといいね」

「一応他所の依頼も受けていいって許可は貰ったけど、どうだろうな。やっぱマズイか」

「ヤツがオレらを信用し切ってるか確信がねぇよな」

「意外と尽くして来たから、ある程度の信頼はされてると思うけどな」



「……ま、企業の人間なんて何考えるか分かんないしね、電脳の方が分かりやすくていいや。用心しなよ、2人とも」


 そう言うとアートの作業の手が止まった。


「……うん、なるほど。スミス・アンダーソン、手強いね。『エンジェル』関係者である疑いはあるけど、経歴がほぼ空白だ。カタオカに入る前の情報がほぼ無い。企業の人間にしちゃ珍しいね。ストリート出だ。」


「やっぱれっきとした成り上がりか……。」

「他の奴らと違って用心深いし、偏見も少ないだろうね。君たちを雇うくらいだし」



「……言わないようにしようと思ったがやっぱキツイぜコレ。確かに少しイヤミだけど、あんなに良くしてくれたヤツがオレらのターゲットなんてよ!」

「……そうだな。……今回は俺らが悪者だ、完全にな」

「うーん、そうだね。これ、フリーの仕事も減りそうじゃない?」



「考えてなかった。肩書きが専属クライアント殺しは流石にまずいか」

「まずいねぇ」

「なんか前途多難だなァ。まぁその方が燃えるしいいか!」

「ユウトもこの前向きさは見習った方が良いかもね」

「バカにしてんのかホメてるのかどっちだ?」


「褒めてるでしょ?もちろん」

「ウソつけ」

「アハハ、やっぱいいね、この感じ。悪くない」

「……あー、次に言う台詞が大体予想つくな」


「僕最近暇なんだよね。パパもあんまり仕事手伝わせてくれないしね」

「だろうな。こんなやる気のねぇドラ息子」

「同感だ」


「でやっぱ僕って正義感強いからさ」

「コイツって嘘つかないと死ぬチップとか入ってんのか?」

「ウイルス反応は無い。天性のものだ」


「だから一緒に連れてってくんない?」

「断る」

「断固な」



「好き勝手いってくれるね、ほんと」

「……冗談だ。また三人でひと暴れするか」

「ハハハ!また騒いでやろうぜ!自殺部隊(スーサイドスクワッド)にようこそだ!アート」

「うわ、縁起悪いチーム名!」



「……まぁ、実際のところ、企業に詳しい人間がチームに居てくれるのは心強い」

「いやぁ、それは君も……。いや、僕の方が詳しいか」

「あぁ、俺のは所詮人づて、付け焼刃だよ。働いてる人間の心すら分からなかったんだから」

「どうやら自分を卑下する癖は抜けてないみたいだね」

「そうなんだよ、アート!言ってやってくれ!あれ(姉の死んだ日)からこんなんばっかりなんだよ!オレじゃ救えねぇ言葉ばっかり言いやがるんだ!」


「……卑下じゃない、事実だ。それに……」


「……それに、俺はあの日以降もありのままであろうと努力してる。そう見えないのは俺の努力不足か、お前らの色眼鏡のせいだと思うが」

「そこじゃないと思うけどね」




「……そうだな。いいか、ユウト。努力が必要な時点でお前は元通りじゃない。それに、元に戻る必要なんかねぇんだ。オマエはそれを乗り越えて、強くなる必要があると思うぜ。それがオマエのカタルシスだとオレは思う」


「わぁ、強い言葉。言うようになったね。ビルも」


 本当にその通りだ。

 ビルはいい奴だ、それ故そこに甘えていた部分もある。


 こいつは俺についてくれば自ずと夢に近づく、だからこそ手放しでも俺についてきてくれている節もあると思ってたが、どうやらそれは俺の不安から生じた幻想のビルらしい。


 反省しないと。思ったより引きずってるんだな、俺。



「……フフ、まさかビルに諭される日が来るなんてな」

「ああ……そうだな、確かに俺は姉さんの話を聞いてたおかげでサカモト(ビッグ・ファイブ)の内部事情にはある程度詳しい。だが、企業回りの事にもっと詳しいのがアート、お前だ。だから力が借りたかった。まさかチームを組むとまでは思わなったが、……ありがとう」


「うん、どういたしまして」

「これからも一緒に頑張ろうぜ、ユウト(相棒)

「あぁ、ビルもありがとう。スミスとの専属契約をした時も多分思う所があっただろうが、黙ってついてきてくれて感謝してる」


「安心しろ、ユウト。オレはオマエが暴走したら死んでも止めるし、あの一件(姉の死んだ日)以来企業にムカついてるのはオレも一緒だ。だからオマエが金の為じゃなく、企業に近づくためにスミスとコンタクトしたのは分かってたが黙ってたぜ。どこにでも振り回せ、ユウト、オレにはこの腐った世界で名を上げたいって夢がある。オマエについてけばソレも叶いそうだからな」


「あぁ、企業を潰して、ストリートも救ってやろう。ビル。」

「……!おう!」




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