表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/11

11.異世界にも多いみたいです

異世界で生きて行くことになりました。最後に少しだけ幽霊が出てきます。

 美味しいお菓子をたっぷり堪能した後は、私のこれからについての話が始まった。


 さらに追加で目の前に新しいお茶とお菓子が用意されたが、さすがにもう食べれそうにない。こんなに満腹感を味わったのは、大袈裟ではなく生まれて初めてのことだった。


「先ほども言ったが、幼いレイには、本当に悪いことをしたと思っている。今すぐにでも両親のもとに帰りたいだろうが、帰してあげられそうにない。すまないがこの国で生きていくことを、真剣に考えて欲しい。」


 アルヴァン皇子は王宮の広間で言ったことと同じことを、もう一度口にした。

 ここで泣いても喚いても(泣いたり、喚いたりしないけどね。)、元の世界には帰れないのだから、この国で生きて行くことを考えた方が良いのは解っている。しかし私にも確認しておきたいことがあった。


「あのぅ、私、聖女ではありませんよ。」


 この国の人たちが欲しいのは聖女だと思うから、確認の為にもう一度言っておく必要があった。

 私はこの世界に間違って召喚されてしまった、聖女ではない方なのだから。


(何度も言うと、卑屈に聞こえちゃうよね。()()()()()()()()()()()。)


「それはもう解っている。聖女であろうとなかろうと、レイはレイだからね。いきなり異世界へと、召喚された可哀そうな女の子だよ。」


 アルヴァン皇子に甘々な声音で言われて、頭の中までとろけそうになる。

 彼に言われると自分が可哀そうな女子に思えてくるから、不思議だった。


 容姿端麗、完璧なビジュアルから聞こえてくる甘々な口調には、お砂糖にメイプルシロップにいろいろな甘味を混ぜ合わせたたような甘さがたっぷり含まれている。人を甘やかすのが上手なタイプと言おうか、前の世界ではお目にかかったことはないタイプだった。


(解っているのならいいけれど、ね。私は聖女ではありません。()()()()()()()()()。)


 それともう1つだけ、言っておかなければいけないことが私にはあった。


「えーと、それと私、幼くないです。」


 ここもちゃんと、訂正しておいた方がいいと思う。いつまでも幼いのに可愛そうと、同情されるのも嫌だった。


(だって幼くなんてないんだもん。)


「それは、どういう意味だろうか?」

「私、これでも15歳なんです。」


(立派な大人なんですとは、言えないけどね。だって生活能力はゼロだし、ね。)


「・・・・・・・?」


 私が15歳と聞いて、3人が3人とも固まってしまった。


 発育不全の身体は、見た目6歳から10歳くらいにしか見えないことは、私自身がよーく解っていた。だから信じられないかもしれないが、事実は事実だった。


(まだごまかすような年齢でもないし、ねぇ。少なめに言うのならわかるけど、多めに言ってあまり利益はないと思う。)


 固まってしまった3人が、どうやって気持ちに折り合いをつけたのかは解らないが、意外とすんなり私が15歳であることを認めてくれたようだった。(だって異世界だし、ねぇ。)


「いや、年齢が15歳でも、こちらが勝手に召喚した事実は変わらない。元の世界の親元に帰してあげられないのも、事実だからね。ごめんね♡」


(うっ、甘い。甘すぎる。) 


 ほんと何でも許してあげちゃいそうになる。

 別に親元に帰りたいとは思っていないので、それはもう構わなかった。

 異世界召喚が片道切符なのも、小説や漫画で読んでよーく知っている。もうこの世界でしか生きていけないのなら、ここで生きて行くしかないと言うのも理解していた。


「さきほどもお聞きしましたが、異世界から来た私が、この国で生きていけるのでしょうか?」


 今までとは全く違う異世界で、どうやって生きて行けばいいのか私には解らなかった。 


「今までとは違う世界で、戸惑うことも多いとは思うが、私もここにいる2人も、できるかぎりレイの力になりたいと思っている。」

「もちろん経済的にも、すべてこちらで面倒をみさせていただきます。」


 レックス様は文官らしく、経済面からの援助を申し出てくれた。

 経済面での援助って、とても大事だと思う。

 世の中、生きていくには、絶対にお金が必要だった。

 今の私は、無一文だからね。これからイタコとして稼ぐとしても、それまでの生活費を出してもらえるのはありがたかった。


「身の危険に関しては、私が守ろう。」


 データス様は騎士らしく、私の身を守ろうと名乗りを上げてくれた。

 この国でナンバーワンの騎士様が守ってくれると言うのだから、安心してもいいと思う。

 これでお金と安全面の確保は、できたようだった。


 3者3様の真摯な目で見つめられ、私はなんだか嬉くなる。

 この人たちは今日初めて会ったばかりの、みすぼらしい少女の為にこの世界での生活を約束してくれる。


 何度も言うけど私は聖女ではないし、3人にとって、何の利益にもならないのに・・・・・。


「ところで先ほど言っていたイタコのことだが・・・」

「イタコ、それは何の話ですか?」


 本当に記憶力の良いアルヴァン皇子に、感心してしまう。

 私が話したことを聞き逃さず、ちゃんと覚えてくれているようだった。


(きっと誠実な人柄なんだと思う。)

 

 王族なのに、身分に関係なく優しく接してくれる皇子様なんて希少な存在だと思う。だって漫画やラノベに出てくる王族って、傲慢だったり、異端者だったり、みんな悪い意味で個性的だった。

 アルヴァン皇子は個性的なのは個性的だけど、世の中の悪意から排除されて育った純粋培養な感じがした。

(まだ会ったばかりだから、本当のところは解らないけどね。)


「レイがね。自分は聖女ではなく、イタコだと言うものだから」

「・・・・・()()()?初めて聞く言葉ですね。私もとても興味があります。レイ様、イタコとはなんですか?」

「イタコと言うのはですね。えーと・・・・・。」


 私、あまり頭が良くないので、なんと答えたらいいのか解らない。


(うーん、イタコ、イタコ・・・・・・?)


 師匠が何時も言っていた言葉を、思い出す。


「私を最近まで育ててくれていた師匠は、死者と今生きている人を仲介するお仕事と言っていました。」

「・・・・・死者と生きている人を仲介する仕事?」

「もしかして、それはシャーマンのことでしょうか?」

「シャーマンって、なんですか?」


 なんだか聞いたことが、あるようなないような気がした。


「シャーマンと言うのは、脱魂・憑依のような特異な心理状態で、神霊・祖霊などと直接に接触・交渉し、予言・治病などを行う人のことです。この国でも降霊術を施すシャーマンと言われるものが、何人かいます。」

「降霊術?そ、そうです。そんな感じです。」


(神霊・祖霊って・・・・?)


 絶対、それだと思った。この世界でも霊がいるのだと思うと、嬉しくなる。


(この世界でも、イタコの需要があるってことだよね。)


「レイは霊と、接触することができるの?」

「はい、できます。霊を見ることもできますし、話すこともできますよ。」


 だってイタコは、それがお仕事だから、ね。

 私が肯定すると、アルヴァン皇子とレックス様の様子が明らかに変わったような気がした。


「では、今この場に霊はいるのかな?」


 私の力を試そうとでもしているのか、アルヴァン皇子があたりを興味深く見回すと質問してきた。レックス様からは興味津々と言った感じで見つめられていたが、データ様は霊の存在など信じていないのか、まったく興味の無さそうな顔をして、うわの空のようだった。


 私はアルヴァン皇子の質問に、どう答えるべきか考える。


 ――――――この場に霊はいるか?


(・・・・確かにいる。)


 しかしそれを正直に言ってしまってもいいものか、悩んでしまった。

 だってこの世界の霊の認識が、私にはどうなのか解らない。(悪?善?)


 アルヴァン皇子たちが霊を信じているのならばよいが、信じていなければここに霊がいると言っても嘘つき扱いされる恐れもある。

 子供のころのことが頭をよぎる。親にさえ信じてもらえなかったことが、この異世界でしかも今日あったばかりの人たちに信じてもらえるかどうかわからなかった。


 今はデータ様のそばに佇む霊に目をやると、霊はまるで自分の存在を彼ら話してくれと言わんばかりに、ウンウンと首を上下させた。


(自分の存在を、彼らに伝えて欲しいのね。)


 まぁ、それがイタコのお仕事だし、霊自身が存在を明らかにして欲しいのなら、私も黙っていることはできなかった。


「はい、今、ここにおられます。」


 私はデータ様の右肩あたりを掌で示し、霊の存在を肯定する。


「そ、それはどんな霊か聞いても?」

「はい。私よりも少し年上の、美しい姫様の霊がここにおられます」


 私の言葉にアルヴァン皇子とレックス様が、目を見合わすと何か確信を得たように頷きあった。最初からここに霊がいることを、知っていたような雰囲気だった。


「容姿を聞いてもいいかな?」

「はい。全体の色合いは先ほどお会いした第一皇子のラートメース皇子様に似ています。コーラルピンクのドレスが良く似合っておられます。」

「コーラルピンクのドレス?」

「・・・・・」


 コーラルピンクのドレスに、何か思い当たりがあるのか?3人が3様の表情で、私を見つめる。

(そんなに見つめられても、私も困ってしまう。)


「えーと?」


 彼らから目を反らし、顔を下に向けると、自分の着ているドレスが目に飛び込んで来た。


(はて?このドレス、どこかで見たような)


 自分が着ているドレスなのだから、どこかで見たようなもないと思うのだが・・・?

 もう一度顔を上げ、データ様のそばに佇む霊に目をやる。


 なんと目の前の霊は、今の私と同じドレスを着ていた。

 このドレス、リリス姫が10歳の時のドレスだと侍女たちが言っていた。

 しかし、目の前のリリス姫はどう見ても17、8歳に見える。

 まぁ霊体なら着たいドレスを着れるし、年齢だって変えられると思う。見えてはいるけど、生きていた時のようにしっかりした個体ではない。霊体はそこにあって、そこにないものだった。


「もしかして、リリス姫様ですか?」


 データ様のそばを離れようとしない霊が、嬉しそうに微笑んだ。


「リリスがここにいるのか?」

「・・・リリス姫が?」

「・・・・・」


 ここはひとつ私がイタコの力を使って死者の言葉を聞き、生きている彼らに伝えてあげようじゃないって、張り切ってしまう。

 私のイタコとなって初めての、しかも異世界での初めてのお仕事。

 今まで忌み嫌われた私がお役にたてるって、凄いことだと思わない?(異世界、最高!)

読んでいただき、ありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ