第1話
ここは、とある国
木々が生い茂り、光にあふれ
たくさんの場所で戦によって命が消える世界
そんな世界の中で旅をする旅人達がおりました
一人は、名誉のために
一人は、尽きぬ欲望のままに
一人は、ただ夢を追いかけて
一人は、まだ見ぬ未来を探して
この物語はそんな4人が織りなす物語・・・・
【誰か得する軍日記】
「森の蜘蛛さんご用心」
「あついんやーっ!」
「やっかましぃ!」
「あいたーっ!」
森の中、大きな声が遠く響き渡った
静かな湖畔だったはずのその湖に、4人の人影が見える
どうやら、昨晩は野宿だったようだ
まだ朝とは言いがたい時間帯である
先ほど叫び声をあげた青年に起こされてしまったのだろう
まだ幼さの残る彼女は今にも頭から角をださん勢いで青年を蹴り続けている
その隣に少年と女性も確認できる
女性はただ黙って
幼い少年は今にも閉じてしまいそうなまぶたを擦りつつ
その様子を眺めている
「今何時であるかー?」
少年が尋ねる
「あたしの時計では6時と出ています」
女性が答える
どうやら彼等にとっては良くある事の一つだったらしい
ともあれ、まだ15になったばかりの少年には早すぎた朝らしく
いまだしょぼしょぼする目を擦り、・・・そして、寝た
二度寝である、うらやましい
「あー、もう!起きなさい!
本日はそんなダラダラ過ごしていい場所じゃありませんのよーっ!」
こうして、朝の静かな時間は
彼等のダラダラとした朝の雰囲気にのまれ
彼女の叫び声によって消えていくのだった
「・・・ったく、本日は急ぎで集落を見つけなければなりませんのよ?わかってますの?」
「わいにだってわかっとるって
だてに一人旅長かったわけやないでー」
「我が輩とて!一人旅が短くったってわかってたのである!」
『あんた(あんさん)は絶対わかってない(わかっとらん)』
「・・・(無言だが同意)」
やや太陽が空へ昇って来た頃
森の中を散策する4人の姿が見えた
・・・どうやら集落を探している所を見ると迷ったらしい
食料も残り少ない、なかなかに危険な状態だ
す・・・っと訛りの強い剣士の青年が前へ出た
それに続き、妙な言葉遣いの幼い騎士姿の少年も前にでる
よく見れば、彼等の手には剣―と呼ばれる武器があった
「・・・何かいますわね」
「我が輩にもわかるのである!
・・・にしても普通と違うような・・・?」
「なー敵なんかー?倒して良いんけー?」
「とりあえずあんたはお黙りなさい」
「・・・誰か、来ます」
ういういとした表情をしていた青年から表情が消えた
・・・というか、萎えた、という顔をしている
その証拠に手に持っていた刀を肩に担いでしまっている
「あの・・・」
茂みから出て来たのは一人の女性だった
「お願いがあるんです」
しかし、それだけではなかったのかもしれない
「た」
ともにつれて来たもの、それは――
「助けてくださいっ!」
悪意――
「私の住む集落には、魔物がいるんです」
茂みから出て来た女性――が話しだした
今彼等は最初に説明した湖畔の側まで戻って来ている
落ち着いて話ができるのがそこしかなかったからだ
「魔物がでてきたのは半年前、最初は誰も魔物が来た事に気づきませんでした
・・・魔物は、最初とても小さくて、そう人形みたいな姿をしていたんです」
「人形――」
「?何か」
「――なんでもありません、続きを」
「あ、はい
それで魔物は――「っだぁーっ!もうっ!」」
そこで、突然青年が叫び声をあげた、本日2度目である
彼女の裏拳が見事に決まっているのは、お約束、というものなのだろう
「ミィ!何するんや!」
「エンジュ!話の途中ですわ、お黙りなさい!」
―――朝の二の舞である
そうそう、説明を忘れていた
軍服の彼女の名はミデル・ロックハイデン
侍風の青年の名は華桜焔酒
幼い少年騎士の名はキッシェ・ナイツ
美麗な女性の名はフォン・メビアという
賑やかな4人旅のリーダーは軍服の彼女ミデルのようだ
さきほどから何度か侍風の青年を殴りつけている分厚い本には「軍記」と記されている
その見事な一撃によって青年が沈んだようだ
・・・さて、話を彼等に戻そう
「だから、ここで話あっても時間が過ぎるだけや、手っ取り早くその集落に行こうや」
「・・・一理あるようで無いです」
「我が輩は一理あるのであるぞ?困ってる人は早く助けるべきと思うのである」
「私は無しですわ、相手の出方をうかがって・・・と行きたいのですが」
チラっと、彼女は青年を見た
・・・実に清々しい笑顔をこちらに見せてくる
隣の少年もしかり、だ
これは放っていても勝手に行くぞと言っているようにもとれる
そして、彼女は
ため息をついて、諦めた
「・・・わかりましたわ」
「良いのですか?」
茂みからきた女性が尋ねる
「話は行きながらでも聞けますしね
どうやら、善は急げ、らしいですわよ?」
急がば回れ、なんて言葉はきっと彼等には無いのだろう
・・・きっとそんな器用な生き方、誰も出来ないから
「・・・集落はこの先です」
女性の案内にて森を歩き続け数時間
集落付近まで来たらしい
女性の指すその先は薄暗く、気味が悪い
「魔物が出たのが半年前
人を襲いだしたのが2ヶ月前
魔物はどんなに屈強な戦士でもかなわない程強く
集落の人々は別の村へ避難
あなたは助けを求めて旅人を待ち伏せていて
今、集落には魔物しかいない
・・・そういう事ですわね?」
「・・・まぁ、そうです」
少々引きつった笑みで案内をした女性が答える
待ち伏せが行けなかったのだろうか
本人は何の気無しに簡潔に話しただけなのだが
「魔物は我が輩にまかせるのである!
我が輩にかかれば魔物等赤子同然!軽くひねってやるのであるよ!」
「・・・噛みません?その喋り方」
「勿論!我が輩は騎士の王を目指しておるからな!メビア殿もみならうと良いのである」
「いえ、遠慮しておきます」
若気の至りとクールビューティーの会話に不思議な空気が漂う
案内した女性はついて行けなかったようだ、なんとも言えない顔をしている
パン!っと手を打ち鳴らし、ミデルが場を仕切りなおした
「今回は作戦Dで行きましょう」
「D?珍しいなぁ、それで良いんけ?」
「全責任は私がとりますわ、それに」
そこまで言ってから、満面の笑みで答える
「この軍師ミデル・ロックハイデンが失敗したことがありまして?」
どうやら、作戦は決まったようである
作戦D――めったに選ばれる事のないその作戦に−————




