6.逃した魚は大きい
「次の王家主催の夜会にて二人の婚約を発表する。それから王太子も発表する。王太子は、セインお前だ」
「はっ」
とセイン殿下が礼を執る。
「今まで王太子を決めず2人を見てきた。家を離れ学園に入ってからより違いが顕著になったと思う。
ジェネシスは勉学も王子の仕事もこなしているが、大事にしなければいけない婚約者より他の女性を優先し婚約者としての責務を放棄した。
優先順位もわかっとらん奴に国は任せられん」
ジェネシスもクインも婚約者に直接何かをしたわけでは無いが、婚約者に何もせず放置。
声をかけるでもなく、デートをするわけでもなく、プレゼントもしない。
これらは婚約者としての義務であり、仲良くするのは必須。
あの女と深い仲ではなさそうだが、学園ではべったり。全校生徒が知っているのだから醜聞でしかない。
「あいつはきっと夜会まで何も気付かないのだろうな。他の令嬢に現を抜かしても最終的に婚約者とは結婚するのだと思うておるのだろう。令嬢の親なら絶対にそんな男とは結婚させんだろうに」
令嬢の父上方はうんうんと頷いている。
正直メイソンとノアも危なかった。婚約者の懐が深くてよかったな。
まあ当たり前にまだまだ信用はされてないみたいだが。
「陛下。わたくし殿下に仕返ししてもよろしくて?」
おお!仕返し!
「さっきの技?を使えば男性の気持ちはこちらに向くのでしょう?」
「むしろ男爵令嬢よりお美しいですし、所作も綺麗ですから一発だと思いますよ」
と俺。
「わたくしの方に気持ちを向かせてからわからせてやるのですわ」
めっちゃダメージくらいそう。
「ああ。存分にやりなさい」
と陛下。
「わたくしもあの女ったらしに一泡吹かせてやりたいですわ」
とグレイス嬢。
「それではお二人共デートの約束から取り付けますか?これはまあ妃殿下や公爵夫人にお願いして観劇のチケットが手に入ったとかで誘い出してもいいですしね」
「任せなさい。わたくしが手配してよ。公爵夫人にもお渡ししておくわ」
とノリノリの妃殿下。
「そしたらお2人はもう少し男心をくすぐる技を解放しましょう」
と俺。
かくして、馬鹿男2人を懲らしめることとなるのだった。
気付いた時にはもう遅い。
立場も弱くなり、本当に自分に必要だった人は離れている。
ああ悲しい。だが自業自得。逃した魚は大きいのだよ。