3.馬鹿なの?
俺はまだマシだったメイソンとノアに最後の助言をすることにした。
「なあメイソン。あの男爵令嬢の何がいいの?」
「そりゃあ可愛いだろ!頼られたら男として応えてやりたくなる」
「婚約者は?」
「まあ顔はいいが、全く頼られない。あの作り笑顔が何より苦手だ」
「それってさあ、お前公爵家だろ?公爵家を支える人間があの男爵令嬢みたいに感情もろだしで社交するのか?何もかも顔に出るような人間の方がいいのか?」
「それは・・・」
「お前も小さい時から婚約者と仲良かったんだよな?令嬢は子供の時から作り笑顔だったか?」
「・・・」
「俺はしがない子爵家だけどさあ、公爵家の嫁になるって相当大変だと思うんだよ。王太子妃もだけど。成績が良くて当たり前、礼儀作法が綺麗で当たり前、いつでも美しく微笑みを絶やさず油断も隙も許されない。それが高位貴族なんじゃないの?」
「俺は・・・」
「お前が男爵令嬢に鼻の下伸ばしている間も婚約者は努力してる。そんな婚約者にお前は釣り合うのか?クインとジェネシスはもう無理だろうがお前は間に合えばいいな」
と。
それから。
「なあノア。お前もそろそろわかってるだろ?婚約者と向き合えよ」
そう。ノアは伯爵令息で婿に行く立場だから、爵位を自分で得られないノアにあの女からはもう何の反応も返ってこない。
露骨すぎる。
「・・・」
「婿入りって肩身が狭いような気がするよな。俺も次男だしそれはわかる。だけどあの女に入れ込んで何になる?あの女は男を身分で見定めてる。見ててわかっただろ?」
「ああ」
「お前も婚約者は可愛げがないって言ってたけど、可愛げでこれからの人生食っていけるか?当主になるのに気張ってなきゃいけないんだろ?それをお前が支えてあげないといけないんじゃないのか?」
「俺が支える・・・」
「そうだよ。お前が休める場所にならないといけないだろ。女侯爵として男どもとやり合ってくんだ、あの女みたいに感情、欲望丸出しでいられるわけないだろ」
「そうだよな・・・俺、謝ってくる。許してくれるかわからないけど」
「許してもらえるまで頑張れよ!!!」
ノアはたぶん大丈夫だろ。一生尻に敷かれるだけだ。
頑張れ!
メイソンとノアが婚約者のご機嫌取りをし始めて暫く経ったころ、俺は国王陛下に呼ばれることとなった。