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46 最終話 侍女キャシーside




「―――こうして二人は結ばれたのでした」



絵本を読み終えると、私はそっと両隣りに座るお二人の反応をうかがった。


いつもなら読み聞かせの後はすぐに感想を言い合い、長椅子をおりて次の遊びに向かわれるのに今日は様子が違う。

お二人とも目を輝かせて、興奮していらっしゃるようだ。



「すてきなおはなし」


王女様が胸に手を当て言われると、王子様もこくんと頷いた。


「うん。すてき」


「おうじさまがでてくるところがいい」


「ぼくはなまえがいい」


「なまえは、おはなしじゃないでしょう?」


「でもすてき。おとうさまとおかあさまのなまえだもん」


「そうね。おうじさまがおとうさまで、おんなのこがおかあさま」


「うん」


「じゃあわたしは、おうじさまもおんなのこもすき」



私は口に手をあて笑いをこらえた。


お二人とも大きくなられた。

それでも、この絵本はまだ早かったみたいね。


表紙の絵に惹かれたのか「きょうのおはなしはこれがいい」と、本棚からこの絵本を持ってこられたので読んでみたけど。お二人が内容をきちんと理解されるのはもう少し先らしい。


絵本を本棚に戻そうとしたけれど、お二人はまだ見ていたかったようだ。

私から絵本を受け取ると子ども用の机の上に置き、頭を合わせてページをめくり始めた。

挿絵の人物を撫でる小さな手が可愛らしい。


微笑んで見ていると、軽いノックの音がして、入って来られたのは第一王子殿下だった。

大好きなお兄様の登場に、お二人が急いで駆け寄る。



「「おにいさま!」」


妹弟を迎えた第一王子殿下はお二人と視線を合わせるために少しかがまれた。


「二人とも、何をして遊んでいたの?」


「キャシーにえほんをよんでもらったの」


「そう。あのね、あの絵本」


王子様が指差した机の上を見て、第一王子殿下は微笑まれた。


「――ああ。あれかあ。面白かった?」


「すてき。おうじさまとおんなのこがでてくるの」


「おとうさまとおかあさまのなまえ」


「え?名前?……そうだね」


第一王子殿下はくすくす笑われた。

そしてお二人の手をとった。


「さて双子たち。行こうか。もうお父様とお母様が外遊から戻ってみえる頃だよ」


「おとうさま」


「おかあさま」


「早くお会いしたいだろう?お迎えに行かなきゃ」


「「うん」」


第一王子殿下――お兄様とそれぞれ手を繋ぎ、王女様と王子様は歩き出した。

ご両親にお会いできるのが嬉しくてたまらないのだろう。はしゃいでいらっしゃる。



と。


王女様が振り向いた。


「ねえキャシー。

それで、おうじさまとおんなのこはどうなるの?」


私は笑顔で答える。


「それはもちろん―――――」




―――いつまでも、仲良く幸せに暮らしました―――




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