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自作小説倶楽部 第25冊/2022年下半期(第145-150集)  作者: 自作小説倶楽部
第146集(2022年8月)/季節もの「夫婦(8月の誕生石 ペリドット)」&フリー「博物館」
9/26

04 紅之蘭 著  博物館 『ガリア戦記 38』

【あらすじ】

共和制ローマ。ガリア遠征七年目、遂にウェルウェルキンゲトリクスが蜂起。前年、中東で盟友クラッススが、パルチア帝国軍を相手に敗死したことで、三頭派の一角が崩れた。内と外にいる敵がカエサルを窮地に立たせる。報告書『ガリア戦記』最終章・第Ⅶ巻。――アウリクム攻略戦以後の行動。


挿絵(By みてみん)

Ⓒ奄美「ロリカ・セグメンターダ(投げ槍)」

    第38話 博物館


 博物館に勤務する文献史学や考古学といった専門分野をもった学芸員たちは、『ガリア戦記』の舞台が、どこであったのかということを話題にする。そこに書かれてあることは、かなり正確に書かれており、実際に古戦場跡地に赴いてみると、ときたまおびただしい数のローマ兵やガリア兵の遺体が、森の中から発掘される。

 後に、ブルッヘともブルージュとも呼ばれるアウリクムの町は、包囲するカエサル麾下のローマ軍に塔や城壁を次々と奪われていった。こういう現在に至るまで続いている町では、文献通りの戦いの痕跡を見出すことができたりするわけだ。



 アウリクムの町の兵士たちは、最後にイチかバチかの大勝負に出ようと、広場や市場に残兵を集結させ、楔形陣形をつくっていた。

 だがそんな手には乗りたくもない。

 ローマ軍は、敵の挑発には乗らず、淡々と、市壁や塔を制圧していく。

(これでは撤退路をなくしてしまうではないか!)

 焦りを覚えたガリア兵たちは、ローマ軍に町を完全に包囲される前に、町を脱出した。この脱出行では、脚の遅い女子供が置いてきぼりにされた。そして四万いた兵士たちが、ウェル王が陣を構える場所に到達したときには八百に減った。町に残された女子供は悲惨で、これまであった裏切りで憤慨していたローマ兵が八つ裂きにしてしまったのだった。

 ウェル王は、たどり着いた友軍兵士たちを、各部族各隊の補填に当てがった。


 翌日、ウェル王は族長たちを集めて、自分がこれまで通り、全ガリアの盟主を続投してよいか可否を問う会議を行った。

 ウェル王は自分に非があれば、素直に認める。

「アウリクムの町の件に関しては、住民が、町を要塞化したから、焦土作戦は容赦願いたいと言って、作戦を変更したもの。その結果だ。王に責任はない」

 族長たちは、若く爽やかなウェル王を、これまで以上に支持した。そして、族長たちは、これまで以上にウェル王の言葉に耳を貸すようになったのだった。

 だがそれでもウェル王は、念のため、各地の部族の王たちに贈り物を送ったりして、忠誠をつなぎとめることにした。


 良将は敵に食むというではないか。カエサルがアウリクムの町を落とすと、穀物や肉類など食糧を倉庫から調達させた。

 他方で麾下の兵士たちには、屋根付きの家に泊まらせ休ませた。

 カエサルは考える。

 ウェル王には人間的な魅力がある。だが一方で、人には脆く愚かな一面も確かに存在する。

 ウェル王に魅力を感じた者は、自然とウェル王にたなびく。要は二択だ。案外と計算高いガリア人たちの一部には、自分に誼を持とうとする。

 ニティオス族は、親ローマ部族だが、コンウィクトリタゥィスと、コトゥスの二人が、同時に王を名乗る事態となっていた。

 カエサルは自ら彼らのもとに赴き、法の根拠を確認すると、コンウィクトリタゥィスが正統だとして支持。そしてこの人に忠誠を誓わせた。コンウィクトリタゥィスは、恐らくはドルイドらしい宗教の僧侶のようだった。

 カエサルはさらに踏み込んで、自分がガリアを統一した暁には、どのような報酬を用意するか提示し、相手を喚起させいた。


 夏、

 カエサルは兵士の疲れがある程度癒えたところで行動を起こし、六個軍団を率いて出撃。エラウェル河を挟んで対峙するに至った。

 カエサルは、ウェルが壊した橋のつけね側にある森に布陣。麾下二個軍団でコルホス隊を編成する一方で、敵の橋を補修しだした。

 するとウェルは兵を退いた。

 5回の行軍でゲルコイアの町へ移動。着いて早々、騎兵の小競り合いが始まった

 ゲルコイアの町は四方を断崖絶壁に囲まれた要害だ。食糧の備蓄も多い。ところが安心したのか敵兵力は少なく、容易に落とすことができた。カエサルは町を落すと、二個軍団を駐留させた。


 続く

【登場人物】


カエサル……平民派が支持層。嫡娘ユリアは、盟友ポンペイウスの後妻として嫁ぐも『ガリア戦記Ⅵ巻』の冬、死産に伴い没する。各軍団長には、副将ラビエヌスや、ファビウスといった名将かいる。副心にブルータス、デキムスといった若く有能な将官がいる。姪アティアの息子オクタビアヌス、その姉オクタビアがいる。

キケロ兄弟……兄キケロと弟キケロがいる。兄は元老院派の哲人政治家で、弟はカエサル麾下の有能な軍団長となる。

クラッスス……カエサルの盟友。資産家。騎士層の支持。長男が親元に戻ると次男がカエサルの属将となる。

ポンペイウス……カエサルの盟友。軍人層の支持。カエサルの娘・ユリアを後妻に迎える。

ウェル大王ウェルキンゲトリクス……反ローマ派領袖。クーデターにより、ガリア・アルウェルニ族の王・全ガリアの盟主となる。イミリケは教育係で、同王族出自の愛妾。〝戦妃〟の二つ名がある。麾下にルーク元帥(カドルキ族の王ルクテリウス)がいる。

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