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自作小説倶楽部 第25冊/2022年下半期(第145-150集)  作者: 自作小説倶楽部
第147集(2022年9月)/季節もの「幸運(9月誕生石「ラピスラズリ」」&フリー「地平線(土、夕暮れ)」
11/26

02 柳橋美湖 著  幸運 『北ノ町の物語 100』 

【あらすじ】

 東京のOL鈴木クロエは、母を亡くして天涯孤独になろうとしていたのだが、実は祖父一郎がいた。手紙を書くと、祖父の顧問弁護士・瀬名が夜行列車で迎えにきた。そうして北ノ町に住むファミリーとの交流が始まった。お爺様の住む北ノ町は不思議な世界で、さまざまなイベントがある。

 ……最初、お爺様は怖く思えたのだけれども、実は孫娘デレ。そして大人の魅力をもつ弁護士の瀬名、イケメンでピアノの上手なIT会社経営者の従兄・浩の二人から好意を寄せられる。さらには、魔界の貴紳・白鳥まで花婿に立候補してきた。

 季節は巡り、クロエは、お爺様の取引先である画廊のマダムに気に入られ、そこの秘書になった。その後、クロエは、マダムと、北ノ町へ行く夜行列車の中で、少女が死神に連れ去れて行くのを目撃。神隠しの少女と知る。そして、異世界行きの列車に乗って、少女救出作戦を始めた。

 異世界では、列車、鉄道連絡船、また列車と乗り継ぎ、ついに竜骨の町へとたどり着く。一行は、少女の正体が母・ミドリで、死神の正体が祖父一郎であることを知る。その世界は、ダイヤモンド形をした巨大な浮遊体トロイに制御されていた。そのトロイを制御するものこそ女神である。第一の女神は祖母である紅子、第二の女神は母ミドリ、そして第三の女神となるべくクロエが〝試練〟に受けて立つ。ダンジョンの試練を達成し、第三の女神となったクロエ。さらにもう一つ待ち構えた最後の試練、恋もクリア――そして見習女神クロエの物語はついに完結。大団円!

長らくのご高覧ありがとうございました。


挿絵(By みてみん)

Ⓒ奄美「異世界鉄道ターミナル駅」

    100 幸運


「ご乗車の紳士並びに淑女の皆さん、私共の言う通りにして頂ければ、危害を加えることなどいたしません。どうぞ、哀れな我々に、おめしのアクセサリ、現金のすべてをお譲り下さいませ」

 二つの大陸間海峡に架けられた長い長い鉄橋を、紅色にカラーリングされた列車が駆け抜けていきます。蒸気機関車に牽引された五両編成の列車です。最後尾の展望車にいた黒服五人組のボスが、笑みを浮かべ恭しくお辞儀をしました。

 ボスの両脇にいた男たちが、拳銃を乗客たちに向けていました。

 すると、前の車両から、灰色の服の紳士がやってきます。意に介す様子もなく、列車強盗団に歩み寄って来るではありませんか。

 ボスも顔を引きつらせ、ジャケットの内側に忍ばせた拳銃を抜き、トリガーを引きます。けれども後ろにいた緑のドレスの少女が、障壁通力を張ったため、全弾がはじかれてしまいました。

「どうした。終わりかね?」

 灰色の服の紳士が不敵に笑うと、男たちに次々と手刀を食らわせ、拳銃を床に叩き落してしまいました。すかさず、緑のドレスの少女が、拘束通力で確保、一網打尽。

「すばらしい余興だ!」と、セレブの乗客たちが歓喜喝采です。


 現世と異界とを往復する〝紅列車〟と呼ばれる異界鉄道。初めて、お爺様と一緒に、北ノ町から乗車したときは、軽便鉄道でしたが、今や、広軌道に拡充され、本数も増えています。

 食堂車の各テーブルには、お爺様、お婆様、それからマダムと私がいます。

 私はお婆様に、異界の歪みや生態系の綻びを修繕したり癒したりする方法を学んでいます。

 お爺様は、ときどき北ノ町から異界にやってきては、珍獣をスケッチして、彫刻作品にします。マダムは作品を買い取り、〝紅列車〟を借り切ったオークション会場で、現世・異界のセレブたちに、落札させるのです。

 実をいいますとね、今しがた、拳銃を持った黒服の悪者って、イベント要員じゃなくって、本物の列車強盗だったのですよ。

 灰色の服の紳士は父、緑のドレスの少女は母。

 父は、日本の公安委員会の人で、列車強盗情報があると、異世界の母とコンビを組んで確保のためにやってくるのです。

 トップモデルのような令嬢が、父に声をかけました。

「緑のドレスのお嬢さんは貴方様の――?」

「妻です」

 トップモデル系令嬢が引いていると、横にいた若い紳士がフォローするように言います。

「お二人は合法的に結婚なされたんだ。ミドリさんは見かけこそ童女だが、リアルではご主人よりも年上。それもそのはず、異界序列二位の女神様なんだ」

 白服で盛装した若い紳士は白鳥さん。エスコートしているご令嬢は、とても奇麗な人で、正直、妬けちゃいます。

 魔界の貴公子・白鳥さんは、異界鉄道の大株主で、鉄道会社主催のイベントツアーに招待状を送ると、だいたい来て下さるとのこと。


 車掌室から、車掌さんと一緒にきたのは、異界鉄道会社の支配人さん。メカに強い浩さんは、スカウトされたのです。

 父母に拘束された賊たちは浩さんに引き渡され、尋問のため、車掌室に連行されていきます。その際、浩さんは、私たち夫婦に微笑みかけてくれました。

 私たち夫婦。――夫になった瀬名さんは、異界第三の女神になった私のサポートをしてくれています。


          ◇


 皆で、最後尾にある観覧車に行き、バルコニーから空を見上げると、炎竜のピイちゃん、風、土、炎、水の精霊たちが、列車を追いかけていました。


 追伸

 間もなく家族が一人、加わります。

  By クロエ


 (完)重ねて長らくのご高覧に感謝いたします。

【主要登場人物】

●鈴木クロエ/東京暮らしのOL。ゼネコン会社事務員から画廊マダムの秘書に転職。母は故ミドリ、父は公安庁所属の寺崎明。女神として覚醒後は四大精霊精霊を使神とし、大陸に棲む炎竜ピイちゃんをペット化することに成功した。なお、母ミドリは異世界で若返り、神隠しの少女として転生し、死神お爺様と一緒に、クロエたちを異世界にいざなった。

●鈴木三郎/御爺様。富豪にして彫刻家。北ノ町の洋館で暮らしている。妻は故・紅子。異世界の勇者にして死神でもある。

●鈴木浩/クロエに好意を寄せるクロエの従兄。洋館近くに住み小さなIT企業を経営する。式神のような電脳執事メフィストを従えている。ピアノはプロ級。

●瀬名武史/クロエに好意を寄せる鈴木家顧問弁護士。守護天使・護法童子くんを従えている。

●烏八重/カラス画廊のマダム。お爺様の旧友で魔法少女OB。魔法を使う瞬間、老女から少女に若返る。

●白鳥玲央/美男の吸血鬼。クロエに求婚している。一つ目コウモリの使い魔ちゃんを従えている。

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