シナリオ通り
「しっかりしろ、ハルカ!!!」
肩を力強く揺さぶられ、ハッとする。
そこにはモンスターの群れを避けながら先に駆けつけ息を切らしたレオンがいた。
「相手は小型だけど数が多すぎる。
それに今は満足な武器も持ってない。
ハルカは俺を置いて村で救援を呼んでくれ」
「…だ、いやだ…そんなことしたらレオンがっ」
「見習いにもなれてない俺には、お前を守りながら戦うのは無理なんだ。
分かってくれな?」
余裕はないはずなのに、笑って見せるレオン。
レオンの右手に持った小刀に力が入るのを見て、わたしも決心した。
「………わ、分かった、すぐ戻るから!」
物語通りに行くなら、わたしは死ぬ。
でも、レオンは死なない。
レオンは死なない。
現世でも唯一の救いだった推しのいない世界で生きていくのは一番無理だ。
謎の声は物語は変えられるって言ってた。
もしかしたらわたしとレオンの共存ルートがあるのかもしれない。
きっとどこかに分岐になるきっかけがあるはず…
それまではシナリオ通りに動いてやろうじゃないの!
レオンがモンスターの気を引いている間に、わたしは急いで逃げ出した。
離れながらモンスターを改めて見る。
冷静になることできちんと物事が見えてきた。
あれは…
知ってる、見たことある。
ゲームで何度も出てきたモンスターだ。
強さは雑魚レベルだけど、群れで動く上に防御が硬くて一個体に対して相当な攻撃数が必要になる厄介な存在。
魔法には耐性がなく弱いけど、レオンもわたしも魔法は使えない。
魔術の使えないあの村に救援を求めたところで退治できるのか…
わたしは無理だけど、足の遅いモンスターだから足の速いレオンなら隙を見て逃げ出せるかもしれない。
なんて、いろいろ考えていたら、わたしは目の前の木の枝に脚を引っ掛けて転んでしまった。
前世と同じ、ちゃんと痛みも、血も流れてる。
転んだだけでもこんなに痛いのに、モンスターに殺されたら…
最悪なことを考えてゾッとする。
「ハルカ!!!!」
「え」
名前を呼ばれて顔を上げると、目の前にはすごい勢いで走ってくるモンスターの群れがあった。
そうだ、このモンスター、血の匂いに反応する習性が…
慌てれば慌てるほどうまく動けず、再び転びそうになる。
よろけるわたしよりもモンスターの方が圧倒的に速い。
レオンの叫ぶ声、剣の音が遠ざかっていく。
結局シナリオ通り、わたしは死ぬらしい。