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村娘モブとして生きてね




「今なにか言いました?」


「ううん、何も………

あ、そう!さっきもこんな感じで声が」



耳から声が聞こえた訳でなく、直接脳に語りかけるような、自分の中に誰か居るみたいななんとも言えない不快感。



『不快などと失礼な。

こうして直々に話しかけてやってるのに』



まただ。


思わず耳を塞いでしまう。



『これ、聴覚に関与していないからそんなの無意味だよ』



面白そうに笑ったような声。


少女のようにも、少年のようにも聞こえる、中性的で幼い声。



『胡桃 玲奈、君はヒロインに選ばれた。

ってこれはさっきも言ったよね』


「し、知らないっ!

こんな悪戯やめて!お願いっ」



玲奈さんを見ると、涙目で首を振っていた。


この様子、やっぱり駅で落ちたのは自殺とかでなかったんだ…



『悪戯じゃないよ。

ヒロインの君にはこの世界でヒーローとなる"誰か"と結ばれてもらう。それがルールだから』


「ヒロイン?ヒーロー?結ばれる?

そ、そんなの嫌…!彼氏だっているし…そんな勝手に…」


『彼氏?そんなのよりもっと魅力的なキャラクターがいるから気にしなくて良いよ。どうせすぐ忘れる』


「う、ううぅ…っ」



何言ってるのか全く理解できないけど、とりあえずこの声の人、ひどすぎ…


声の主が見えるなら子供でも引っ叩いたのに。



『あ、そうそう君も居たね。

間違えちゃった、君。

まぁそう怒らないでよ』



次はわたしの番…


思わず全身に力が入る。



『ほら君は巻き込み事故をもらったようなものだからさ、残念ながら元の世界には帰してあげられないけど、この世界で生きていくには十分なサポートはするつもりだよ』



わたしの返答を待たずに話は続く。



『ヒロインはそこの胡桃 玲奈だし、悪役もいらないから、君は物語の外でのーんびり暮らせば良いよ。その辺のキャラクターと結婚するのもアリ、力をつけて下剋上もアリ、モンスターを懐かせて森で暮らすのもアリ、選択肢は無限大だ。嬉しいでしょ?』


「て、え、モンスターいるの!?

そんなの!死ぬじゃん!!」


『だって一度死んだでしょ?

一度も二度も変わらないよ。

ま〜この世界の方が前の世界よりは楽に死ねるよ。

ここで死んだらホントに終わりだけど』


「……………」


『でも言ったでしょ、サポートはするつもりだって。

君にはトクベツに"女神の加護"をつけてあげるからさ』


「え!?ちょ、なにっ」



謎の声が言い終わると共に、わたしの身体は白い光に包まれ、一瞬温かくなった。


そしてすぐに光とともに温かい感覚も消えた。



『どう使うかは君次第。

でも初めから物語を壊されるといけないから、使い方は自分で見つけてね』


『さあ、もうすぐ時間だ。

君たちの物語が始まるよ。

ボクの介入はここまで、それじゃあ面白い物語を完成させてね』



霧も何もないのに、目の前がぼやけていく。


だるくて、眠くなるような、そんな感覚に襲われる。


玲奈さんをチラッと見ると、放心状態でずっと床を見つめたままだった。



初めて触る床の触感、得体の知れない声の伝わり方、全てが不思議な感覚の世界でもう一度目を閉じるなんて恐怖しかなかった。


ヒロインと言われた玲奈さんはきっとこの世界の中心に囚われる。


いろんな人と出会い、彼女を助けてくれるだろう。


…対して、わたしは分からない。



怖い


怖い


怖い



嫌だ、玲奈さんと離れたくない………




意識が遠のき始めた中で伸ばした腕は何も掴めなかった。





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