表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/23

間違えちゃったね




んー………?



特に痛みとかは何もなく、無意識に閉じていた目を開いた。


白く、明るい光景に視界が慣れずチカチカする。



これは、床…?


見渡す限り、どこまでも続く白。


まるでわたしを包み込むような初めて触るふわふわした何とも言えない触感、このまま眠ったら熟睡できそう。



当然ながら駅ではない。


ここはどこ?



情報収集のために少し歩いてみると、1人の女性が倒れていた。



この人は…



「あの、大丈夫ですか?」


「………ん、う、ん……あれ」



声をかけた女性がゆっくりと上半身を起こす。



うわ…綺麗な人。


服もアクセサリーも高そう。



「え!?ここは!?あなたは!?」



すぐさま取り乱す女性、ここで再度寝ようとしたわたしと違って、たぶんこれが当たり前の反応。



ていうか、この人見たことあるかも。



「わたしは立花 遥香です。場所は…わたしも目を覚ましたらここにいて、詳しくは分からないです」



記憶が正しければ、貴女に巻き込まれて電車の前に落とされました。



「立花、さん…?

わたしは胡桃 玲奈です。

えっと、すみません、わたしも状況が分からなくて」


「あ!玲奈って、もしかして女優の"レイナ"さん?」


「…わたしをご存知でしたか…

たぶんそのレイナで合ってますよ」



うわうわうわ、この前発表された舞台シンヒロのヒロイン役に抜擢された若手女優レイナさんだ………!


三次元化されるのはあまり気持ち良くなかったけど、改めて見るとレイナさん、ヒロインの雰囲気にぴったりだし、そのままシンヒロから出てきたみたい。


これから売り出すって時なのに…なんでまた。



「あの、失礼ですが、レイナさんは何故飛び降りを…?」


「と、飛び降り……?

あ、ち、違いますっ

何か頭の中に変な声が聞こえてきて」


「変な声?」



もしかして、レイナさんってやばい人…?



「『ティアラになりなさい』って…」



ティアラ?


まさかシンヒロに出てくる『ティアラ』?


…ってまあ、それはわたしがシンヒロオタクだから都合良く結びつけただけか。



「そうしたら急に頭が痛くなって、引っ張られるような感覚で、それで、思わず近くに手を伸ばして………って、あ!もしかして」



わたしを見て泣きそうな顔をするレイナさん。


困った顔も、泣き顔も、感情豊かな表情の豹変はシンヒロのヒロインそっくりだ。



「ごめんなさい!

本当にごめんなさいっ

謝って許されることではないと分かってますが、それでも謝らせてください」



勢いよく土下座のような姿勢をするレイナさん。


レイナさんの言う通り、謝って済む話ではないし、かと言ってアラサー独り身のわたし自身現世に未練のようなものはこれといって…



ああ、推しのバースデーイベストだけは見たかったかも。


それだけが心残りだ。



永遠に白い空間でどうすることもできなく、わたしとレイナさんは少しの自己紹介のようなものをした。




そして、話すことがなくなった頃に、声が脳に響いた。





『あーあ、間違えちゃったね』




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ