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傍観者役




「こんにちは」



昼食ラッシュの片付けもほとんど終わり、食堂内に人が少なくなった頃、見覚えのある人がやってきた。



「アルベルト様!」



わたしに気付き右手をあげる。



「あの時はわたしとレオンを助けていただきありがとうございました!」



あの時騎士団が居なかったら、わたしとレオの共存ルートは確実になかった。


どこでストーリーが分岐したのか分からないけれど、わたしは死んでいた可能性が高かった。


あの状況で不審に思いながらもわたしを信じて魔術を使用してくれたし、感謝しきれないほどの命の恩人だ。



「あの時も言ったが、あれは騎士団のミスだ。

当たり前のことをしたまでだよ。

………うん、君が元気そうで良かった」


「気にかけていただきありがとうございます。

本日はテーブル席になさいますか?

カウンター席もございますが」


「ではテーブル席に頼むよ」


「かしこまりました」



この前の時の装備よりはだいぶ軽装だけど、防具は外したいだろうし、空いている席で少し広めの席に案内した。



「もうレオン君から騎士団勧誘の話は聞いたかな?」


「あ、はい。先程」


「じゃあ、ティアラパートナー候補の話も?」


「承知しております」


「…君たちを引き離すつもりはなかったんだが、レオン君には騎士団長としての素質があるからどうしてもあの学園を卒業して欲しかったんだ。

君を守るために一人であの場を耐え抜いた、王であれ、国民であれ、誰かを守るのが騎士団の務めだ。

彼は強くなるよ」



アルベルト様は差し出された水を一口飲むと、胸元から折り畳まれた紙を一枚取り出し、テーブルに広げた。



「あの時のレオン君の対応にも称賛したが、わたしは君にも学園に行く権利はあると考えている」



テーブルに広げられた紙には、アルベルト様の名前と推薦状の文字が並んでいた。



「レオン君と共に、君のことも推薦しようと思っている。

もちろん君が良ければ、の話だが」



一瞬何が起きているのか理解できなかった。


テーブルの上の紙とアルベルト様の顔を交互に見る。



う、うそうそうそ、待って…


まさかモブ役のわたしが学園に行けるの…!?



驚いて言葉の出ないわたしに、アルベルト様は静かに理由を話してくれた。



「モンスターの群れとの遭遇でのあの知識量は、この武術の国どころか、あの騎士団にいた知識の国出身よりも優れていた。

大抵の記録されている知識は特徴や習性をまとめたものばかりで、その具体的な対策などは実際は未知のものが多い。

見るからに君はあの小型モンスター以外にも知識があるのだろう?」


「……………」


「後は不思議な噂も聞いてな。

騎士団の治癒魔法でも治せないほどの大怪我をしたレオン君が次の日には傷一つなくなっていたと。

まぁこれに君が関係しているかは分からないが。

少なくとも、君には村の外に出る権利があると考えているのだよ。

もちろん食堂の方は推薦したこちらが責任を持って最後まで援助させてもらうつもりだ」


「あ、あの、いろいろと恐れ多くて」


「もちろんこの場で返答を貰おうとは考えていないよ。

まぁ、ゆっくり考えてくれればいい。

後日正式な書類を持参する。

推薦を受け入れるならその時にサインを、拒否するならその時に断ってくれればいい。」



アルベルト様はそのまま軽食をとって帰って行った。


この話を裏で聞いていたお父さんとお母さんは、どちらを選んでも良いとわたしの意思を尊重してくれた。



モブ転生したわたしに、推しのレオと共に学園に行っても良い選択肢が与えられた。


学園には見知ったキャラクターもたくさんいるだろうけど、何より一緒に転生したティアラの玲奈さんもいる。



前世が恋しい訳ではないけど、同じ転生者としてもう一度玲奈さんに会いたい。


そして奇跡的に掴み取ったわたしの生存ルートだけど、物語に沿うためにいつまた命の危機があってもおかしくない。


それなら、1秒もレオの傍から離れたくない。



一人だけ置いて行かれて知らないところでストーリーが進むくらいなら、このチャンスは利用した方が良いに決まってる。


答えは出た。


わたしもレオと一緒に学園に行く。


玲奈さんがレオを選んだらその時は辛くなるだろうけど、それでも巻き込まれたこの転生物語、大好きなシンヒロの世界だもん、この先もモブらしく参加させてもらおう。



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