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それってヤキモチ?



あれから何日も経った。


(記憶が正しければ)毎日訓練のお昼休憩にはうちの食堂に来ていたレオンが一度も来なくなった。


わたしの一日は家の手伝いで終わるから、レオンが来ないと当然レオンと会う機会がない。


ミラさんも驚くくらい確かに怪我は治ったはずで、とっくに退院しているだろうし。


食堂に来ている他の訓練生からもたまにレオンの名前は聞こえるから、訓練には行っているみたいだし、やっぱりこの前の話が原因…?



どんな顔をすれば良いか分からなくて会うのが怖かったけど、会わない日が増えれば増えるほどその気持ちが引けなくなっていた。


週に一度ある休みの日もわたしからは会いに行けない、外でばったり会うのも怖くて買い物にも行けない。


このままレオンと会わなければわたしはモブらしく一生食堂で働いて、レオンはシナリオ通りにヒロインと結ばれてしまうのかもしれない。


トラウマ設定を回避できたように勇気を出せば何か変わるかもしれない、でもその勇気が出せない。


ただただ、レオンが来てくれる日を待ち続けた。




*****



季節が3つほど変わった頃、食堂にレオンが姿を現した。


前よりも筋肉がついて、髪も少し長くなって、久しぶりに見るレオンはわたしの知っているゲームの"レオン"に近付いていた。


わたしと目が合うと一瞬目を逸らして、そして再びわたしを見た。



「久しぶりだな」


「うん、そうだね」



カウンター席に座るレオンの前に水を置く。


少しの間、2人だけしか聞こえないような小声での会話が続く。



「あれから…たくさん修練した」


「うん」


「アルベルト騎士団長覚えてるか?」


「もちろん!」


「実は、俺に騎士団に来ないかって話が来た」


「…すごいっ!

レオンの夢でしょ!おめでとうっ」



死ぬはずだった初恋相手は生きていて、トラウマもないはずだけど、こうしてレオンが騎士団へ入る物語に繋がった。


やっぱりここはシンヒロの世界なんだと実感する。


レオンがずっと目指していた夢が叶うことは嬉しいはずなのに、物語からわたしの退場を突きつけられたようで胸が痛む。


今のわたし、ちゃんと笑えているかな…?


レオンはこちらを見るでもなく、正面を向いたまま淡々と話し続ける。



「正直迷ってる」


「え、なんで?」


「前までは騎士団に入りたくて鍛えてたけど、今はお前を守りたくて鍛えてたから、この剣を振る目的が変わることに迷ってる」



そっか、トラウマや復讐心の代わりに、わたしがこの前勢いで言ってしまったあの言葉を守ろうとしているんだ。


結果として、物語を戻してしまった訳だけど。


うーん、複雑だ……



「それにお前、あの誕生日からなんか変わっただろ?」


「そ、そんなことないよ…?」



ようやくこっちを見たレオンの真っ直ぐな瞳に見透かされたような気がして、ドキッとして思わず声が裏返った。


転生したことはバレないだろうけど、転生前と変わったことで冷められる可能性は大きい。


推しの初恋相手と言う最高な役から始まったけど、これからシンヒロとしてヒロインに心変わりしていくストーリーになるのが当然だ。



「髪とか服とか全然違う」



ま、まぁ、それは前世の流行りがわたしの中に残っちゃってるからで…


あれから毎日髪を結んだり、何となくそれっぽい薬草とかで髪の毛をサラサラにする努力したんだけど。


服も派手なものはないからプリーツ作ったり、フリル付けたりしたのがやっぱり変だったかな。


違和感ないように少しずつ変えていったつもりだけど…



「昼ここに来た奴らが訓練所戻ってきてからお前の話してるのが苛立つ。今まで見向きもしなかったくせに、急に俺に紹介しろとか言いやがって」



ちらっと他の席に座る同じ訓練生を見ながら言った。


ま、まさか、それって……



「やきもち…?」


「さぁな」



いや絶対ヤキモチじゃん。


どうしよう、拗ね気味の推しがかわいすぎる。



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