スキルはなに
「なぜ分かった?」
村まで馬で送ってもらう途中、アルベルト様はわたしに問いかけた。
「えっと…アルベルト様だけ近寄らなかったので、騎士団長とは言え戦闘しないはずがありませんし、近接ではないと…遠距離、それも弓など所持していないところを見ると魔術の使い手なのかと思いました」
「モンスターは?」
「多少知識がありまして…」
「スキルか?」
「そ、そうです」
ゲームで得た記憶です、なんて言える訳がない。
アルベルト様の言うスキルとは、この世界で生まれてくる人1人ずつ与えられた能力。
どんなスキルかはその人しか知らないし、隠している人も多い。
アルベルト様は納得していないみたいだったけど、それからは無言のまま馬上で揺られ、気付いたら村に着いていた。
先に着いていた騎士団によって事情を知らされていたお父さんとお母さんは顔を真っ青にしてわたしに駆け寄ってきた。
レオンはそのまま村の医者の元へ運ばれたらしく、わたしはレオンの姿を確認することはできなかった。
病院に行こうとしたのを止められて家に連れられ、部屋で休むよう厳しく言われた。
わたしの擦り傷は軽度だったから騎士団の治癒魔法で処置できたけど、やっぱりレオンが心配。
ヒロインと出会う前にヒーロー候補が死んだら、それこそ物語を壊すのと同じ。
そんなことしたらあの謎の声はただじゃおかないだろうし、絶対にレオンが死ぬわけがない。
でもやっぱりちゃんと自分の目でも確認したいから、明日様子見に行こう。