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旧)黒きエルク  作者: ヘアズイヤー
黒き光

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魔王国4


 クラレンスの執務室に続く会議室でこれからのことについて話し合うことにした。

 初めて魔王城の正門から中に入った。


 魔王城は大部分は石造りだが、遺跡も利用している。聖都ウトリーの遺跡は極彩色の珊瑚礁のようだったが、ここでは全てが黒ずみ陰鬱な雰囲気だった。


 正面の石段を登った先に、黒い金属でできた両開きの大扉がある。その両脇に大男の門衛がいる。螺旋状の角が二本、額から突き出した魔族で、黒い革鎧を着て、剣を佩き、手には黒造りの槍を持っている。

「エルク様、この者たちは魔王親衛隊の者たちです」

 ガランが説明してくれた。

 ラドミールが唇を引き結んだ。

「そうです、ラドミール殿。あなたの一族の仕事を引き継いだ者たちです」


 門衛は人の姿になったガランにうなずき、槍の石突で四度扉を叩いた。

 静かに内側から扉が開けられた。エルクは扉の手前でいったん立ち止まり、目を閉じて黙礼をした。


 ……ルキフェ……ここまできた……あともう少しだ。



 クラレンスとラドミールを引き合わせ、今後の計画を話した。

「いつ、僕が魔王だと知らせ、聖教会に警報を出すか、だけど。こちらに有利な状況を作りたい。まず一つ目は組織化された軍隊の整備だ。これを短期間で行うのは難しいが、精鋭部隊を一つと空軍で対応できると思っている」

「精鋭部隊は理解できますが……く、空軍とは何でしょう?」

 クラレンスが首をひねった。

「ガランたち竜族のことだよ。ガラン、済まないが竜族の矜持は脇においてもらうことになる」

「……我々の矜持ですか?」

「うん、人種と一緒に戦ってもらうけど、その方法は気に入らないかもしれない」

「エルク様の命でしたら喜んで従います」

「ありがとう。具体的には後でね。次は経済的なことだ。戦費もそうだけど、戦後、魔王国が飢えないようにしたい。その上で、どの国よりも豊かになる方法を考えてる。そっちはラドと影の一族に担当してもらいたいんだ。情報局も一役買ってもらう」

「はい」


「最後に僕の名乗り。これからは魔王国全体での協力体制が必要になる。聖教会への警報の前に、魔王国国民への魔王ルキフェの後継者の名乗りをする。だが、これはあくまで後継者の名乗りであり、魔王としての戴冠式ではない」

 皆がうなずいた所でエルクは続けた。


「初めて見る子供が魔王の後継者だと認めるのは無理があるよね。ルキフェが後継者として名指しするのならともかくね。宝物庫の出し入れやガランへの騎乗でも弱いと思う。クラレンス、魔王国のみんなに納得してもらうにはどうすればいい?」

「……そういうことでしたら確かに難しいですね……」


「……魔王国で序列を決める方法は? いや、各部族で族長を決める方法は?」

「……力、です。魔法か、武力か。ほとんどの部族が、一番強い者が族長候補になります。もちろん皆を率いる知恵や人望も重要ですが、基本的に一番強い者がなります」

「一番を決めるのは力か……」

「はい。そのために各部族ではよく闘技会を開いています」

「闘技会ね……城の前に闘技場があるけど、そこで?」

「大体は部族の集落で行われていますが、もめた時や人数が多い時などはあそこが使われてきました。……ただ今は荒れてしまって、大掛かりな修繕が必要です」


「……よし! じゃあ城前の闘技場で魔王後継者を決める闘技会を開こう。参加自由は時間がかかりすぎるから、族長や族長後継者、魔王になりたい実力者。各部族推薦で。……勝ち抜きも時間かかるからなぁ。……一対一だけど、僕対その他で」

「よろしいのですか? 全員と戦うことになりますが」

「うん。……ねえ、ガランに勝てる人はいる?」

「いいえ、いいえ、魔王国で一番強いのはガラン殿です」

「本気のガランと戦ってみたいねぇ。ね、ガラン?」

「私ではエルク様には勝てません。ですが、とことんやり合ってみるのも魅力的ではあります」

「ガラン殿!」

「あ、でもガランと戦うと闘技場が……どんなに広くても闘技場じゃ無理かぁー。僕より強かったら、ほんとに魔王後継者になってもいいんだけど。ガランとはまた今度だね。じゃ、闘技会だ!」

 クラレンスは不安そうな顔をしていた。


 話し合いは深夜まで続き、翌日から準備に入った。

 早朝から、影の一族、商会、情報部にガランの念話で連絡がされた。

 エルクが提出した宝物庫所蔵品の一覧を見てその金額にクラレンスが驚いていた。

「これほどの……」

「長いことルキフェに捧げてくれたんだね。ルキフェのために、魔王国のために有効活用しよう。必要資材の購入を情報局、魔王国までの輸送は空軍が担当する。いずれは輸送業を始められるといいんだけどね」

 魔王城宝物庫からの資金は竜族によって運ばれた。


 エルクの名乗り、後継者闘技会は、三日後となった。各部族に竜族がクラレンスの使者として派遣された。



 エルクは城前の闘技場を見に行った。浮かび上がって各所を点検する。空に浮く子供に、近くを通りかかった者が目をむいた。


 ……ここも何らかの歴史があるのだろう。いきなり改築してしまってはなぁ。……隣に新築するか?


 エルクは高く浮かんで辺りを確認して、魔王城に戻った。


「ねえ、クラレンス、いま大丈夫?」

 執務室で夜を明かしたまま着替えもしていないらしく、昨日と同じ服装のクラレンスに声をかけた。

「はい、大丈夫です」


 ……目の下に隈ができて。大丈夫じゃないけど、ごめんね。


「外の闘技場、あのまま残しておくよ。で、街の外、西側の牧草地って誰の所有? 買い取れないかな?」

「……街の西。牧草地ですか。……エルク様のものです」

「あ。……いや、誰かあそこを牧畜で使ってるんじゃないの?」

「はい、街の者が使っているはずです」

「そう。街の長に聞いてみたほうが良さそうだね。その牧草地に新しく闘技場を作るよ」

「えっ? 新しい闘技場ですか? ……今からではとても」

「あ、僕が作るから大丈夫。一応長に言っとくね。……クラレンスの名前で新闘技場建設の許可状を貰えるかな」

「……かしこまりました」


 ……あたらしい闘技場には地下施設も昇降機もいらないな。観客席と排水設備だな。よし錬成しよう。……あ、あれか、あれに似た物が使えないかな? それなら白く出来る。どこかに火山の跡がないかな。


 エルクは浮かび上がり魔王城の周りを見渡し、錬成材料を採取しに行った。



 三日後、魔王後継者闘技大会が開催された。


 三日前までは何もなかった牧草地に、一日で造られた真新しい競技場に誰もが驚いた。

 黒い魔王城、薄黒い建材の街に比して、陽を受けて白く輝く円形闘技場。その壁には大鹿の角が白く染め抜かれている黒い懸垂幕と赤い懸垂幕が、交互に間を開けて飾られている。


 竜族の使者はエルクの用意した大量の革紐を持って赴き、なるべく多くの人を乗せて戻ってきた。実際には竜たちが魔法で落ちないようにしているのだが、乗る人が安心するために手綱に捕まる必要があった。


 食事や休憩用天幕、トイレなどが急遽用意された。


 朝から低い太鼓の連打が響いた。

 少しの静寂があり、何度も同じ連打が響く。段々と人々の期待が高まっていった。

 太鼓の音につられて、闘技場が部族、街の人々で埋まった。


 正面に一段高い貴賓席があり、その上に横長で四角い大きな壁が建てられている。その壁には外の懸垂幕と同じ大鹿の角の絵が飾られていた。


 小気味良い小太鼓の高い音が加わった。

 闘技場にはあちらこちらに白い円盤が浮かんでいた。直径は肩幅ぐらいで何の支えもなく浮かび、ゆっくりと移動していた。気がついた人々がその円盤に驚き、指を刺して隣の者に教えていた。


 高らかな金管楽器の合奏が響き渡った。


 ……やっぱり音楽は必要だよね。音響装置も良いみたい。録画の魔道具はどうかな?


 壁に飾られていた角の絵が消え、人の顔になった。貴賓席で立ち上がった、クラレンスの顔だった。

 クラレンスが右手を上げて話し始めた。

「お静かに。みなさんどうぞお静かに」

 クラレンスの声が闘技場一杯に響き渡った。


 ざわついていた観客席が静かになる。

「これより魔王後継者闘技会を開催する。急遽の開催ではあるが、各部族より戦士が集まってくれた。感謝する。……魔王ルキフェ陛下の後継者として、一人の人物が名乗りを上げたいと願ってきた。その人物が、魔王後継者にふさわしいのか、すなわち、魔王国で最も強いのか、判断を下すための闘技会である」

 クラレンスは観客を見渡して続けた。

「それでは、その後継者を見極める戦士を紹介する」


 軽快な音楽とともに五人の戦士が親衛隊の兵士の先導で、入場してきた。

「狐人族オーケ。狼人族ハンネス。熊人族ドーグラス。いずれも戦闘種族の族長後継者の若者である。続いて皆も知る二人の将軍。魔将軍の名を持つ魔族ランヴァルド。猛虎将軍の名を持つ虎人族ヴァルナル」

 紹介に合わせて、壁に映し出されたクラレンスの顔が、歩いてくる戦士の姿になる。歩いてくるその姿が、そのまま壁に映されていることに気がついた観客からどよめきが起こった。戦士たちは手を上げて観客の歓声に答えた。


「では、魔王後継者としての名乗りを希望する者を紹介する」

 その声とともに勇壮な音楽が響き渡った。


 ……うんうん、この超人の曲を選んで正解だね。透明感と勇壮、明るくてワクワクする音楽は必要だよね。


 魔王親衛隊と入場してきた者は、小柄だった。


「ドワーフ?」

「いや、髭がない」

「え、あれ、子供?」

「……子供か?」


 壁に映されたのは笑顔の子供だった。


 五人の戦士の横に並ぶとクラレンスが名を告げた。

「彼は、人間族エルク。自らを魔王ルキフェ陛下の後継者と名乗っています。このエルクと五人の戦士が戦います。まず最初は、狐人族オーケ!」


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