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旧)黒きエルク  作者: ヘアズイヤー
黒き光

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ウトリー8


 聖教会の者たちを施設の外に連れ出し、馬は放した。


 エルクは土魔法で施設全体を覆い、錬成魔法でその塚を六方晶金剛石よりも硬化させた。

 そこに一枚の石碑を作り墓標とし、こう刻んだ。

『愚かな考えの犠牲になった人々が、ここに眠る。願わくは安らかな休息と良き転生を』


 塚を作るために土を掘り出した後の広く深い穴、その内部を錬成魔法で鏡のように磨き上げた。

 タルタデ司祭以下全員の衣服を剥ぎ取り、手足の骨を全て折って、重力魔法で底に下ろした。下ろした後で透明な結晶の蓋を錬成する。


『ここを見て悲しむな。ここは愚かで無残な行いをした者たちが罰を受ける牢獄。彼らが心正しきものとして転生することを願う』

 石碑を作り、下の者たちに声をかけた。


「そこで朽ちるといい。蓋は水と空気を通すようにしている。運が良ければ雨が降り、溺れなければ水が得られるかもしれない。腹が空いたなら、隣を見るといい」

 骨折の苦痛に身悶えし、怨嗟の声を上げる聖教会の者たちを残して、エルクは次の施設に向かった。



 ロークス王国の施設も深い森の中にあり、狂熊が集められていた。

 魔石は異常な魔石になりかけていた。

 資料によると、最初に少量魔力濃縮液を与えることで魔石が変化し始める。さらに魔力濃縮液を与えると急激な魔力増加で異常な魔石となり、肉体も異常活性化する。


 全ての狂熊の転生を祈り、光の矢で絶命させた。

 土魔法と錬成魔法で塚を作り、聖教会の者たちはペルワルナ王国と同じ様に鏡面の壁にした穴の底に残した。


 フラゼッタ王国の施設には狂穴熊が集められていた。全ての狂穴熊の転生を祈り、ロークス王国同様の処置をして、聖都ウトリーに戻った。


「エルク様、お顔の色が優れません。何がありました?」

「……ラド、話は明日に。……今は……眠りたい」




 翌朝、エルクは食堂でジェセたちを眺めていた。

 にぎやかに笑う五人の子供たち。

 朝食は、粥が美味しくなり、スープに肉団子や野菜が入るようになった。卵も付けられている。蜂蜜や果物などの甘い食べ物も出ている。


 にぎやかな子供たちの中で、ジェセは、かいがいしくペペの世話を焼いていた。

 心が和む風景を見ているとジェセがこちらを見て微笑んだ。

「エルクがクレマ司祭にお願いしてくれたって聞いたんだ。ありがとう、エルク」

「ん? なんのこと?」

「ご飯。エルクがいってた美味しいってもの。食べさせてもらえるのは、エルクがクレマ司祭にお願いしたからって……」

「ああ。それはね、クレマ司祭が優しいからだよ」

「……怖い人だったのが、変わってきた……」

「うん、みんなが、美味しものが食べられるようにって。優しくなったね」


「……ほら、ペペ、これも甘くて美味しいよ」

 ジェセがペペに蜂蜜をかけたイチジクに似た果物を食べさせ、口からたれた蜂蜜を指で拭き取り自分がなめた。ペペはジェセに屈託のない笑みを見せた。

 笑いあう二人を見て、エルクは助けられなかった獣人の子を悲しく思い出した。


 朝食の後で、ラドに施設壊滅の報告をし、聖都ウトリーでの情報局の報告を受けた。

 聖教会にかなり入り込めてきたのは、引き込んだクレマ司祭の影響が大きかった。


 さらにエウスタキオ主座と主座会議について探るように伝えた。クレマ司祭からの情報以外にも検証用の情報が欲しかった。


 エルクとラドはクレマ司祭の執務室で今後の計画についての会議を行なった。


「今まで作った新聖剣三本のお披露目を、クアトゥロ司教の施設で行おうと思う。エウスタキオ主座にも出席してもらう。魔物はかわいそうだが。それで施設にある危ない物も排除しようと……なにっ!」

 エルクが大声を上げて、立ち上がった。


「エルク様! どうしました?」

「魔石だ! 異常な!」

 エルクは執務室を飛び出して、子供たちの訓練室に向かった。


 訓練室の扉を蹴破ると中に駆け込んだ。


「ああああああー!」

「ペペ! ああー! ペペ!」


 そこには、握った小聖剣を白く光らせて、ジェセとペペが抱き合っていた。二人の足元に黒い首飾りが二つ落ちている。

 二人の身体は変形しはじめ、融合さえしているようだった。


「ジェセ! ペペ!」

 エルクは小聖剣を防壁で包み、二人に駆け寄った。


「あああー!」

「ああー!」

 大きく声を上げる二人から魔力を吸い出すが、やはり魔力が尽きない。


「カトルセ助祭! なぜ、おまえがここにいる!」

 クレマ司祭が壁際にいる男に飛びかかった。


 エルクに気づいたジェセが声をかけた。

「……エルク……みて……ペペは聖剣を……勇者よ……私も……勇者なの……」


 エルクは二人から小聖剣を取り上げて、さらに魔力を吸収するが、二人の融合は止まらずに、大きな肉塊になっていった。

 その中にジェセとペペの顔がまだ残り、声を出した。

「……もうこれで……幸せになれる……勇者に……幸せに……」


 エルクは二人を見つめることしか出来なかった。


「ペペ……ペペ……ペペとあたし……一緒になる……もう……ずっとずっと一緒だから……」

「……お……おねえちゃん……」


 エルクは手に持った小聖剣を見つめ、投げ捨てた。

 右脇の剣を抜いて白く光らせ、そっとジェセとペペに触れた。


 ……二人の粒子……結合を解いて……。


 抱き合った二人は光る細かな粒子になっていった。


「良き転生を……二人で幸せに暮らせる……良き転生を……ごめん……」

 二人はエルクを見たあと、お互いに顔を向けて、笑顔のまま、消えていった。


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