出現4
その後ガランに座ってもらった。
もちろんガランは椅子に座れないのでうずくまっている。スフィンクス座り。
前足の前にテーブルセットが有り、巨大な黒竜と対面に椅子に座りしゃべっている笑顔の子供、その光景は相当シュールな景色だった。
……ガランは人間の言葉を話しているが、声帯の構造はどうなっているんだろう?
「エルク様、魔王ルキフェ様はお亡くなりになったのでしょうか?」
ガランは偉そうな話し方から丁重な話し方に変わった。
「いいえ、存命です。が、肉体は復活していない。今は魂の空間にいるよ。この話し合いも見ているかな」
魔王ルキフェからの依頼を話し始めた。
「ガランさんや魔族が知っている魔王ルキフェは、狂乱している状態なのです。本来のルキフェは理知的です。『受肉すると狂乱する』これを解決しなければ、復活したくない。狂乱は魔族たちを巻き込んでしまう。そのことにルキフェは心を痛めています。実験的に私が魔王国から離れて受肉したのですが、幸い狂乱しなかった」
「……我らが狂乱し、只々、血を求める衝動に駆られるのにはそんな理由があったのですか……」
「で、ルキフェと狂乱について方策を検討してきたので、ガランさんにお願いがあります」
「はい、ご命令ください。私のことはガランと呼び捨てになさってください」
「まあ、呼び捨ては心理的に難しいから、ガランさんで。お願いは、魔王国がどのように運営されているのか教えてほしい。それと、人を連れてきてほしいのです。人に混じって生活しても違和感のない人。私と一緒に組織を立ち上げられる人を」
「……それは魔族でも武力ではなく、知力が優れた方ということですね。運営についてもその方たちからお聞きになったほうがわかりやすいでしょう。我々竜種族はあまり人種と集団生活をしないので。では早速ここに連れてきます。本当は魔王様しかお乗せしないのですが、乗せてきましょう」
「お願いします。それと新魔王やルキフェに関することはあまり大勢に広がらないように気をつけてください。魔王の対となる勇者が生まれているかもしれません。邪魔はされたくありません」
しばらくガランと話した後、伝えることが残っていないか考えていて、一つ思いついた。
「魔王城には行きますか?」
「連れてくる者は魔王城か、その近くに住んでいます」
「では、宝物庫になにか印をつけたものを入れてもらってください。ここで宝物庫から私が取り出せれば魔王である証にもなるかな」
……決して、ルキフェの映像と声を出したくない、わけではない。たぶん。
黒竜ガランは夕日の中、魔王国に飛び立っていった。
戻るのは明日の朝、日が昇ってからと伝えている。