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旧)黒きエルク  作者: ヘアズイヤー
風と炎

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パルム8


 図書館で目録を走査していると、閲覧室を利用する学生たちの小声が聞こえてきた。


「あの娘、誰だろう? 変わった服を着てるがきれいな娘だ」

「娘? 男の子じゃないの?」

「……あんな速さでめくって、遊んでるのか? 子供がなぜ図書館で遊んでる?」

「いや、あの色、一年か? あの年で?」

「……きれいな子。あ、いま笑った。笑顔もきれいだわ」


 門が閉まる鐘の前に司書が閉館を告げた。


 屋敷に帰るとセリアから、専門校に入学が許可され、試技が翌日であると連絡が入っていた。


 夕食後に皆に話をした。

「明日も試技があるけど、目標の図書館には入れた。まだ全部ではないけれど、蔵書の確認を始められた。皆のおかげだ、ありがとう。それで、魔王国中央情報局の件もあるが、皆交代で休みをとってもらいたい」

 全員が顔を見合わせて、アザレアが尋ねてきた。

「……休みですか? 毎晩休息は十分にとっていますが……」

「そういう休みではなくてね……僕が言ってるのは見聞を広める休みだよ。……アザレア、服屋さんで服を買ったことはある?」

「……いえ、ありません。エルク様のお作りなったものをいただきましたから」

「うーん、じゃあ、お菓子は好き?」

「……はい。エルク様と旅をするようになってから、初めて食べたお菓子が美味しくて」

 ちょっと赤くなってそう言った。

「うん。休めといって仕事の話をするのは変だけど、これからの魔王国のために楽しいことを探してほしいんだ。たとえば、美味しいお菓子や料理を探す、どんな服を自分は好きかとか。何色が好きか。……市場調査で、どんな物がいくらで売られているか。どうやって買い物するかとかね。そこで、交代で例えば五日働いて二日休みとか、考えて休暇を取って欲しいんだ」

「休暇ですか……」

 再び皆顔を見合わせた。


 ……つい、思いつきをそのまま言ってしまったけど、うーん、要検討だな。


「……後で、僕が考えたことをまとめて渡すよ。さて、今日レーデルと知り合いになったけど、その件を報告してくれない?」

「はい。あの男たちの組織を探らせています。まだ結果は出ていません。あの者たちはブーシェ男爵からと思っていますが、どうやら男爵の近くにいる者が画策したようで、ブーシェ男爵自身は知らないようです。誰かが娘のネリーに父親からと手紙を渡し、レーデル殿下を誘い出したと考えられます」

「……ブーシェ男爵に近い者か。自由に動ける者……レーデルも簡単に誘い出されるなぁ……護衛も巻かれるし……いや、知っててか?」

「はい、今日の学内での様子からは、護衛というよりも監視者かと。……ブーシェ男爵の屋敷の下働きと接触しています。今回の件は、魔王国中央情報局の演習、協力者を作る訓練にもさせていただきます」

「うん、わかった。ブーシェ男爵、姉のネリー、弟のジョエルの警護も演習に使ってね。レーデルは……学院全体を洗うか……どうやら、パルム……フラゼッタ王国の人物相関図もいるね」


 翌日はまたセリアが来てくれて、専門校に向かった。

 専門校は職人街の西側、北門の近く、レンガの塀に囲まれた所だった。幾つかある門には門衛が数人立ち、塀の外側も同じ制服の門衛が巡回していた。

「専門校は大量の魔石や魔力鉱、高価な魔道具があるので、学院より警備が厳重です。それでも盗みに入ろうというものが後を絶ちません」


 セリアが門衛に書類を見せて正面の入口から案内されて応接室に通された。ラド、アザレアが背後、扉の左右にオディー、ラウノが立つ。専門校の校長と、学部長と紹介された男性と女性の挨拶を受け、試技を行うため建物一階の部屋に案内された。


 前に演壇があり、大きな机と長椅子が演壇に向かって並んでいる。示された椅子に座った。


「学院の試技を通って入学が決まっているとか」

「……どうしてこっちに? 学院はいかないの?」

「いや、両方で学びたいらしい……」

「……何も知らない子供だという話だが……ただでさえ時間がないのに、迷惑な……」

 部屋の外から会話が聞こえてきた。四人の中年の男女が入ってきた。

 試技を審査する教授と紹介されて、エルクの前後に二人ずつ、四人の教授が立った。


 職員が金属の箱と平たい魔道具らしきものをエルクの前においた。

 魔道具は木と金属で作られ、真ん中にくぼみがある。くぼみの左右に金属の半球が取り付けられている。

「では、魔法工学の試技から行います。魔石に魔力を充填する試技です。目の前にあるのは充魔器です。術者の魔力を増幅して、魔力のなくなった魔石に魔力を充填します。箱から魔石を取り出して、くぼみに載せてください」


 箱に入っていたのは色の失われた黒い魔石で、大きさは指先くらい。くぼみに載せて両脇の金属球から魔力を込めるようだ。

「では金属球に手を置いてください。訓練された学生は、魔石を満たすのに一時間ほどかかります。ご自分の最大量の魔力を注いでください。では、手のひらから魔力を流してください」


 ……魔力の増幅? どんな仕組みなんだ? 鑑定しても、仕組みがよくわからないな……この魔石はどんな魔物かな。角ウサギか。最大量で一気に満たすと魔石を壊しそうだね。細く、少量ずつかな。


 流し始めた瞬間に、魔石が白く発光した。あわてて流すのを止めたが、みるみる形が崩れ、蝋のように溶け出した。

「「「えっ!」」」

「あらら、溶けちゃった。これでも込めすぎか、短杖より脆いのか」


「……魔石が溶けた? いやあんなに……溶けるなんて見たことがない!」

「……そ、そんな……。ちょっとお待ち下さい……」

 職員は四人の教授と相談を始めた。


「何が起きたのか、魔石が溶ける現象について理由が不明です。もう一度行っていただきます」


 そう職員が言って新しい充魔器を用意した。


「今度は大きい魔石を使います。灰色狼のものです」

 そう言って、エルクに渡したのとは別の箱から、先程より大きな魔石を取り出してくぼみに載せた。


 ……ベルグンの灰色狼より小さいな。


「ではお願いします」


 ……細くしても増幅されて込めすぎになるのか? ごくごく、本当に細く、細くだ。


 エルクが魔力を流し始めるとすぐに、黒から赤に変わった。ベルグンの灰色狼のものと同じぐらいになった所で止める。


「「「速い!」」」

「これくらいでしょうか?」

「……ええ、ええ、これで結構です! いかがでしょうか?」

「……ふむ、今度は溶けんか。……だが、なぜ溶けた……魔力の込め過ぎがあっても溶けるなど……」

「もしこの魔石に過大な魔力を込めたら溶ける……熱か? 鉄が溶けるように熱? ……いやそれでは……」

 職員の声が届かないようで、二人の教授が、溶けた理由について議論し始めた。


「エルクさんの試技は合格でよろしいでしょうか?」

「……溶ける理由も調べねばならん。合格で良い。込める魔力量か?」

「魔力量か……それは確かにな……だがそうすると……」


「エルクさん、魔法工学は合格です。次は支援魔法です。訓練場に場所を移します」


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