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旧)黒きエルク  作者: ヘアズイヤー
風と炎

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アグナー3


「今、協力者の話をしたが、聖教会が魔王国側にそれを作っていないとは思えないんだ」


 アザレアは最初にエルクにあったときに聞いていた。

「なぜ、魔王城に勇者が現れるのか? でしょうか?」

「うん、それ。ラドの一族は魔王城でルキフェを守っていた。狂乱の影響下にあるとはいえ、ルキフェのところまで入り込まれている。どうやって?」

「「「……」」」


「魔王討伐軍は……こちらの目をそらすため……」

 オディーがつぶやいた。

「こちらの注意がそれたからといってすぐに国境を超えては……これない……。討伐軍と戦う前に入っていなければならない!」

「そうだろうね」

「……入れるのは商人か……だが、狂乱の影響を受けるはず……しかし勇者たちは受けない……狂乱の影響を受けたら魔王城に入ってルキフェ様と戦うこともできない! 受けない方法がなければ!」

「うん、おかしいよね、ガランでさえ影響を受けるのに」

「もっとあるわ! 魔王城の場所をどうやって知る? 魔王城の中をどうやって知る? なぜ魔王城を移したり、中に罠をはらない? 玉座の場所を変えないのはなぜ?」

「おかしいよね、アザレア。……このいろいろな疑問はひとつずつ潰していかなくてはね」

「エルク様は、手引する者がいるのではとクラレンスに示しました。聖教会が我々の情報を得ている……そう考えると……」


「ひとつ注意があるよ。とらわれないこと。手引をする者か、情報を漏らす者がいるかも知れない。でも、あくまで『かもしれない』なんだ。別の方法がある可能性を排除してはいけないかな。たとえば、転移装置のようなものがあればどうか? とかね」

「……てんい……そうち?」

「空間を歪めたりして、ある場所から瞬時に別の場所に移動する魔法か、魔道具のことだよ」

「そのような魔法があるのですか?」

「僕はここにいても魔王城の宝物庫から物が取り出せる。アイテムパックのような魔道具もあるから、空間と時間を操作する魔法の技術は確実に存在するよ。空間魔法か時間魔法か、時空魔法かがね」


「ラウノ、思い当たるものはない?」

「……ただ……時間を操作するのは禁忌だと教わりました」

「だれから?」

「……魔王国で魔術師を束ねる……部族の長から……」

「あると知ってるってことだね。その長が怪しいわけじゃないよ、ラウノ。そう伝わっているのだろう」

「……そうであればいいのですが……」

「みんな、すまないね。僕らはすべてを疑る生活をしていかなきゃならないんだ。魔王国すべての人のためにね。いつかきっと、いつかはきっと、すべてを笑える日が来ると信じてね」


「ここまでにしよう。影の一族から協力を取り付けたわけじゃないけど、感触は良かった。これからどうしていくのがよいか考えてほしい。ラド、ヴィエラ、『蛇の牙』でやったことを、みんなでやってみるのもいいんじゃないかな」


 ……ラドたちには、潜入や協力者は無理でも、情報を集めるよう話をしたけど……。協力者はどうしても必要だ。それも、奥の奥、一番深い所の情報を集められるような……。


 昨日の検討結果のことを考えながら、エルクは冒険者ギルドに向かった。朝食は済ませたが、途中の屋台で、いろいろとつまみ食いを忘れなかった。

 独特のひねり方で焼き上げられた塩味のパン、ソーセージと酸っぱいキャベツを挟んだパン、キッシュのようなもの、どれも美味しい。


 ギルドは、人で混み合っていた。依頼を受けようとする列は短く、ギルド長のベルナールも受付に座っていなかった。冒険者たちから聞こえてくるのは大トカゲのうわさ話で、偵察隊を気にして集まっているようだった。


 買取のカウンターに行き列に並んだ。前には継ぎの当たった服を着たエルクと同じくらいか、少し年上くらいの男の子がいた。袋から角ネスミのしっぽ、四足コウモリの羽、小さな魔石を出していた。買取が終わり振り向いたが、エルクを見て銀証に驚いた。

「銀証……。俺より年下の女の子が……」

 そう言ってエルクの脇を通っていった。


 買取受付の中年男性が、通り過ぎた男の子を見ていたエルクに声をかけた。

「買取かい?」

「ええ、そうです。量が多くてこのカウンターでは狭くて出せないので、広いところで出したいのですが」

「パーティのお使いかい……銀証。失礼した。馬車用の出入り口の奥が解体場になっているので、そちらへお持ちください。ここでは、名前だけお伺いします」

「銀証冒険者エルクです。お金はパーティメンバーに割り振りたいのですが、ベルグンで登録したパーティでもできますか?」

「ベルグンですか。ノルフェ王国のベルグンでしょうか? フラゼッタ王国での登録はしていませんか?」

「ええ、フラゼッタ王国には初めてきました」

「パーティは国を越えるとその国のギルドでの再登録が必要となります。先に受付にいらしてください」

「わかりました、ありがとう」


 受付に並び直し、順番を待ち、受付でパーティを再登録した。お金の割り振りにはパーティ全員の階級証の登録が必要だったので、後でもう一度来ることにした。


 入り口が騒がしくなり目をやると、門衛がかけこんできていた。

「誰か来てくれ! 偵察隊が戻ってきた! 北門だ! 狩人一人だ!」

 職員と冒険者が数名、慌てて出ていった。

 エルクはそれを見送り、馬車の出入り口から裏の解体場に向かった。


 解体場のテーブルで、マジックパックと、魔物の種類と、数の多さに驚かれた。アグナーまでの旅中にアザレアたちが狩った魔物だ。

 どのくらいの時間で解体ができるか聞いてみたが、人員が不足しているのでこの量なら一カ月という。

 アグナーに滞在する理由、里を訪れる予定は済んでいたので、買取は王都パルムに着くまで待つことにした。


 入り口に戻ってみると、興奮した冒険者たちが低い声で話をしていて不穏な雰囲気だった。


「……一人しか戻ってこれなかったらしい」

「全員銀証だろ? 魔術師もいたはずだが……」

「……狩人と御者だけが戻れたらしい……」

「……銀証九人で行って、一人! あいつらウチで一番強い奴らだぞ」

「どうするんだ。あいつら以上はいないぞ……領国騎士団はあの通りだし……」

「……街に向かってきたらどうする……くそ」


 何人かの冒険者が駆け出していった。


 ……ゴド、オルガ、ダーガクラスが行って全滅? まずい状況そうだな。


 屋敷に戻り、みんなに情報を伝えた。

「大トカゲって狩ったことあるの?」

「私はあります、オディーは?」

「ありますが、矢が通りにくかったですね」

「私もありますが、とにかく皮が硬い」


 皆一度は狩ったことがあった。獰猛で素早く、皮が固くてなかなか弱らない面倒な相手らしい。身体は余すことなく有用だが、仕留めるのに時間をかけると、血の匂いに他の個体が集まってくる。出会っても無理に狩らないそうだ。


 ……仕留める方法を考えといたほうがいいな。みんなとの連携は今まで以上に訓練が必要か。


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