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旧)黒きエルク  作者: ヘアズイヤー
継承する者

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ベルグン30


 朝食を済ませ、銅証の剣士で魔法も使えるラドにアザレア、オディー、ラドの技量の確認と訓練をお願いした。

 中庭に面した納屋の一部をエルク専用の錬成魔法実験室として空けてもらった。ここで、衣装や武装などを錬成し、パーティの装備をそろえる。

 武器工房「蛇の牙」で各自に合わせてそろえた防具、剣、矢、短剣を見本にした。


 下に着る戦闘服は防水、防寒、防暑に加えて、剣や角や牙などで傷を受けない防刃を重視し、複雑な多層構造にした。

 高密度、高硬度ながら軽量。色は黒に近い濃い灰色。防具を着ける部分は黒。左胸と左右の腕にはエルクの角をモチーフにした記章をつける。

 ブーツは同じ素材で足首までの編上げ。靴底も耐久性は高く、しなやかで足裏の感覚を伝えやすくした。音もなく歩くのが理想だ。

 防具は、胸当て、肩、肘、膝の防具。繊細な感覚も得られる肌に密着した手袋。左右に帯剣でき、いくつか小物入れのついたベルト。見た目は黒い革の防具だが服と同じ様に高性能だ。


 ……頭部用につや消しのヘルメット。フルフェイスの無反射カバーを付けたものを作ってみたが、やりすぎのような気がする。


 街なかで目立ちすぎないように、古い革製に見えるフード付きで足首までのマントも用意した。防水、防寒、防暑、防刃で茶から黒まで色違いも揃えた。


 素材は訓練をする三人に、切りつけ、弓で射てもらい強度確認をした。


 ……衝撃の緩和は不十分だな。貫通して傷を負うことはないけど、剣や矢が当たれば内出血するか。


 剣などの武器は、耐久性を上げたものと重さを変えて数種類作り、試してもらうと、より軽量でつや消しの黒にしたものをみんなは選んだ。

 矢尻は以前アザレアに渡した物を参考に、これも光を反射しないようつや消しで作った。長さと重さのバランスは各自違うので、矢尻をかず揃えて提供し、矢軸や矢羽などの拵えは「蛇の牙」で各自が注文する。


 昼の鐘がなったので、作業をやめたが、出来上がったものを並べていた台をみんなが興味深そうに見ていた。

「これだけのものを半日で錬成されたのですか。エルク様、魔力切れはありませんか?」

 ラドが聞いてきた。

「うーん、ちょっと興に乗って作りすぎたけど、魔力切れはないね。午後からは装備して使い心地を教えてね。調整するから。もちろんラドとヴィエラの分もあるからね」

「……」


 「魔剣」の言葉に惹かれ、試してみたが、魔法の付与はあまり上手くいかなかった。魔力を流すとボウゥと光るくらいだ。雷撃や電撃、火、氷の追加攻撃を加えたいのだが。


「……エルク様、稼がないと、とおっしゃっていましたが、これらは高額で販売できると思います。この魔剣なども高額で……」

「そ、そうなの? 光るだけだよ? でも先端技術は味方だけが持ってないと意味がないからね。敵が同じ武装したら果てしない競争になってしまう。あ、息抜きに作ったこっちの剣なら特殊な機能はないから大丈夫か。売り物にならないかな?」

 ラドに見せた剣は、もとは「蛇の牙」の剣だが、金銀で細かく炎の絵柄を象嵌のように錬成してみたものだ。

「……これは。素晴らしい! 一流の象嵌師でもここまで美しい文様は出せません。これ一振でいかほどの値がつくことか! 王族や貴族が欲しがるでしょう!」

「……量産してみるか?」


 次は黒装束を錬成する。身体にしっかり密着した戦闘服。


 ……色は黒色。迷彩柄はあとでみんなの意見を聞いてみよう。防刃と伸縮、快適性を考えて複数の素材を重層化してみたが、もっと研究が必要だな。


 光学迷彩の衣装も試作したが、かなりの魔力を流し続けないと機能せず、ラウノでは、すぐに魔力切れになった。


 ……衣装には組み込むが、魔力消費の問題も今後の課題だ。魔石を使うと良いのかもしれない。魔道具の知識が欲しい。


 黒装束は、靴を含めて、防音、無反射で夜の闇に溶け込めるように作った。顔、首を覆う物も用意した。


 領主館に呼ばれる時の衣装は問題だった。


 ……ごてごてとした装飾過多はどうしても好きになれない。餌としては目立つことが重要だから、見慣れない服で注目を集めてもいいか? 悩むな。基本はアザレアたちと形は同じ服だが、色は灰色と黒を組み合わせた配色。光学迷彩機能付き。防具的なものは肘と膝のみでいこう。

 

 夜会用の服も作った。

 ラドたちを呼んで見てもらう。

「この夜会用の服、どう思う?」

「……見たことのない、変わった衣装ですね。異国風と申しましょうか」

 ラドの言葉に、アザレアたち三人は顔を見合わせてうなずいた。

「凛とした感じがして、とても良くお似合いです」

「夜会に呼ばれたらこれで行こうと思ってるんだ。呼ばれない予定だけどね。夜会どころじゃなくなるはずだから」

「注目を集めるのは間違いないですね。……布地の量が少ないですが、見たこともない凝った織です。一体どちらの衣装なのでしょう?」

「師匠の本で見た、ある国の衣装なんだ」

 アザレアたちに微笑んでみせた。

「この記章はパーティの印にもするのでみんなの分も作ったよ。いずれは魔力を流すと場所を知らせる魔道具に出来ればと思ってるんだ。実験に付き合ってね」


 夕食後に、全員に衣装を試着してもらい微調整をした。


 ラドに訓練を相談した。

「これから夜間の侵入と防衛の訓練をしたい。見つからないように敷地外から目的の部屋まで侵入。侵入した証を残して敷地外に出る。僕ら四人が侵入組。屋敷の人たちはラドの指揮で侵入を警戒する。見つかっても捕まらなかったらいいことにする?」

「そうですね。屋敷の者たちは技能も高いので、領主館よりも警備が厳重になると思います。侵入と防衛、一度試してみて、問題点を見つけましょう」


 一階の応接室を標的に、まずは、アザレアが侵入役。ラウノ、オディー、エルクの順に侵入役を交代することにした。

「能力を全部使うと侵入者の行動がすべて感知できてしまうなぁ。僕は侵入役だけするよ」


 アザレア、ラウノ、オディーの三人は、応接室の前までは侵入できたが、物陰にひそむ警備に見つかった。


 近所の守衛に誰何された時のために、屋敷の使用人がついて外に出る。エルクの番になり使用人と屋敷の塀に沿って歩く。

「このへんでいいかな。行くね」

 そう使用人に声をかけると光学迷彩に魔力を注ぐ。使用人が目を見開き、きょろきょろと見えなくなったエルクを探した。


 エルクはフワリと宙に浮かび、屋敷の魔力を観察した。ここではすべてのものに魔力が宿る。人が動くと乱された魔力の光跡が残るのがわかった。

 魔力を乱さぬように、自分の体に魔力を這わせて、ゆっくりと屋根まで飛んだ。

 屋根裏にいる警備を避けられる部屋を見つけ、鎧戸に魔力を細く伸ばして鍵を開ける。

 鎧戸が音を立てないよう魔力の膜で覆い、細めに開けてするりと入り込んだ。宙に浮かんだまま床には足を降ろさない。

 部屋の扉を開けると警備のものが気づき、音を立てずに部屋に入ってきた。入れ替わるように天井近くを動いて部屋を出る。


 一階の応接室の前まで天井付近を飛び、浮かんだままで、再び魔力を伸ばして応接室の窓の鍵をすべて外して一斉に開けた。

 突然開いた窓と扉にみんなが注目した隙に応接室に入り込んだ。

 懐から「エルクだよ」と書いた羊皮紙を取り出して、テーブルに向かって落とした。突然現れた羊皮紙に注意がそれたところで窓から外に出て、使用人の待つ塀まで飛び、光学迷彩の魔力を止めた。


 ちょっと手狭だが、応接室に警備やついてきてくれた使用人にも入ってもらい、飲み物を出して労った。

「エルク様が侵入、脱出とも成功ですが、方法がわかりませんでした」

 ラドの言葉に皆がうなずくのを見てエルクが難しい顔をした。

「……僕のは、あんまり参考にならないね。魔力まかせだから。それにもっと誰にも知られずに侵入、脱出したいかな。そうそう、ちょっと試したいことがあるんだ。みんな見ててね」


 エルクは壁際に自分の記憶を映像化して上映した。ルキフェを立体映像で見せる方法を使って、二次元の映画上映をイメージする。


「壁際に進んで暗がりに入ったところ。ここで光学迷彩を起動。ラウノに試してもらった見えなくなる服ね。ああ、驚かせてごめんね」

 一緒に行ってくれた使用人に謝った。

「宙を飛んで屋根裏部屋に入り込む。屋敷の天井を進む。ここで応接室の窓と扉を全部開けて、注意をそらした隙に入り羊皮紙を出して、窓から塀まで戻った、と」

「空を飛べるですか……。エルク様には本当に驚かされます」

「うん、飛べるよ。内緒にしてね。でも、ラド、僕が応接室に入った時に気がついたでしょ?」

「……ええ、なにか気配のようなものを感じました」

「魔力の流れを乱さず、呼吸音や衣擦れの音がしないように注意したけど、もっと訓練が必要かなぁ」

「たいていの人間なら気がつかないでしょう。しかし、この……えいぞうか……は見事なものです。声や音もするなど」

「それなりに魔力は使うよ。こんな魔道具が作れないかなあ」

「……エルク様、もしこれが使えれば……」

「うん、そのための訓練も目的の一つなんだ。彼らの所に忍び込み、目撃することが出来れば、糾弾する時に使える。でも、僕の能力だから、裁定の証拠として提出は出来ないね」

「それでも、使い道は多そうです」


「ラド、四人の評価は?」

「……エルク様は論外です。お使いになった方法が特殊すぎます。他のお三方は、狩りの高い能力をお持ちです。応接室の扉から入ろうと、隙を伺っているところで発見されました。やり方が素直過ぎると思います。エルク様は窓と扉を一気に開けることで隙を作りました。同じことは出来ないでしょうが、もう少し発想を柔らかくする必要があると思います。エルク様、魔力を使わないで出来ますか?」

「うん。そうだな。天井裏から入ろうとも思ったけど、壊すのもね。ついてきた使用人にお金で味方になってもらうとか、警備も抱き込む。その辺を歩いている人に客役をしてもらい来客の応対の隙に、とか」

「ええ、相手は人間。どんな手段でも隙をつくることができれば、と考えてみるのが良いでしょう」

「覚えがいのある講義が受けられそうだね」



 ブリッタの話では、木証から鉄証昇格試験を受けるには魔石の採集が必要だった。低品質の魔石、角ネズミか四足コウモリなら三十個、角ウサギか四つ目タヌキなら二十個が目安らしかった。

「明日はアザレアたち三人の訓練を兼ねて三日間の討伐に行くよ。用意をしておいてね。装備エーツー……じゃなくて今日渡した装備で集合ね」


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