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旧)黒きエルク  作者: ヘアズイヤー
継承する者

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ベルグン11


 ジュストの商館を出ると西に向かって細めの道を歩いていった。

 周りの家が段々粗末になり道も曲がりくねってきた。人は行き交っていたが、途切れがちになってきた。

 ゴドにベルグンの街について聞いたときに、西街は治安があまり良くないから行くなと言われていた。


 人通りが途切れた。横の路地から道を塞ぐように三人の男が出てきた。エルクが足を止めると後ろから声がかかった。

「小僧、持ち物置いて消えな」

 後ろを見ると二人の男が歩いてきた。五人は申し合わせたように剣を抜き近づいてくる。

「みなさん、こんにちは。ずいぶんと直接的ですね。もっとあれこれ策を弄するのかと思ってたのに、がっかりです」

「なんだとこらぁ!」

 男たちの中で一番若そうな男が凄んできた。

「いいから荷物を置いて行きな。そうすりゃ怪我はしない」

 エルクは軽くため息をついた。

「五人と。それと後ろのジュスト商会の人を入れて六人ね。最後の人は荒ごと得意じゃないのかな。隠れたままだけど」

 そう言うと今来た方に駆け出し、壁を蹴って二人の頭上を超えて、路地から顔だけ出している男の背後に着地した。他の男たちは誰も動けなかった。


 ジュストの商館から冒険者ギルド、英雄の集い、宵の窓辺、冒険者ギルド、またジュストの商館とずっとついてくる者がいた。ジュストの商館を出るときに、オットーがエルクを見て話していた相手だ。

「舞台に登場っと」

 ちょっと飛び上がって、隠れていた男の襟をつかんで倒す。そのまま引きずっていった。

「さて、これで役者がそろったと。この劇の演出家はまだだけどね」


 そうつぶやいたエリクは、引きずられてわめく男を、五人の無頼の方に投げ出した。

「さてさて、みなさんこれで続きを始められますね。荷物をおいていけ、でしたっけ。これが欲しい?」

 エルクは背のパックをおろして左手に持った。

「あれだ、あのパックを奪え。ガキは殺しても構わん」

 ジュスト商会の男が無頼たちに指示する。

「はい、脅迫、強盗殺人未遂、同教唆ね。これで、いいかなぁ? よくなくても、確保に入るね」

 エルクは男たちににっこり笑いかけ、飛び上がった。くるりと空中で回転し、六人の男たちの一番後ろに着地。ゆっくり歩いて近づき、一人一人、剣を持つ手に手刀をふるい、その腕を折っていった。六人目のジュストの男は、膝を蹴って潰した。


「どうする? 全員歩けないように、膝、潰しとく?」


 路地に通じる道に、目立たない茶色のマント姿の男が入ってきた。エルクはその男を知っていた。数日一緒に旅をしていた。馬車でジュストの横に座っていた御者だ。


「エルク様、連れて歩けなくなるので、膝はご勘弁を」

「そうだね。じゃ、革ひもで拘束しとくね」

 そうエルクは言うと、痛がるのも構わす、男たちを後ろ手に縛り、首を数珠つなぎにした。一人が逃げれば全員の首がしまる。膝を潰した男に近づいていった。痛みに悲鳴を上げる男にエルクが声をかけた。


「痛いよねぇー。痛み、止めてあげようか?」

 涙と鼻水、よだれを垂らしながら、男は声を出した。

「ヒィヒィ、おでがい、いだいがら……ヒュ……ヒュ……おでがい」

「うんうん、じゃ、頭潰してあげるね。死ねば痛くないでしょ?」

「ヒィー」

「うーん、死にたくないの? 痛くなくなるよ。……じゃさ。僕からパックを奪うことを

考えたのは誰かな? それがわかると僕、すごく助かるよ。お礼に痛いのを止めてあげるくらい助かるよ」

「ヒィー、ヒィー……オッドーざん、オッドーざんがばっぐをうばっでごいっで……」

「そう、ジュストさんのところのオットーさんが、エルクのパックを殺してでも奪ってこいってそう言ったんだね?」

「ぞう、ぞうでず。オッドーにいわれまじだ」

 男は泣きながらぶんぶん首を縦に振った。

「んじゃ、どうしよっかな? 痛いの嫌だよねぇー。でも痛くなくなったら、そんなこと言ってませんなんて、よくあるよねぇ」

 男は今度は横に首をぶんぶんと振った。エルクは顔を寄せて男の耳にささやいた。

「……僕はね、いつでも君の膝を潰せるよ。気づかないうちに君の後ろに立ってね……」

 そう言って、歪んだ顔の男に笑いかけた。

「じゃ、直してあげよう、特別ね」


 エルクは男の膝を治癒魔法で治すと、御者に向き直った。

「これでいい? もっと何かおしゃべりしてもらうことはある?」

「……いいえ、エルク様、これで十分です」

「えー、もっと遊んでほしかったのになぁ。みんなも遊んでほしいよね?」

 男たちは一層青ざめた。

「ごめんなさい、冗談が過ぎました。『様』はやめてもらえます? せめてさん付けで」

「了解しました、エルクさん。ではジュストさんのところに連れていきます」

「はい。手伝いますって、んーと、五人、いや六人か。お手伝いさんがいるのね?」

 御者はエルクを見つめて目を見開いた。

「……おわかりですか?」

「うん、相当やりそうな人たちかな、あなたもだけど。ねえねえ、一番若そうな彼女はすごいね。ジュストさんとこからずっと付いていてくれたけど、僕に敵対しそうな人、みんな排除してたし、もちろん釣り出したい人以外のね」

「……エルクさんは、ジュストさんが思っている以上の方ですね」

「えー、そんなことないよ。ジュストさん、旅の間もいろいろやってたし、面白かったよ」

 エルクは御者に笑いかけた。

「ねぇ、あのさ、もしよかったら僕に雇われない? もちろんジュストさんを裏切ってまでじゃなくて。あなたたちのようなすごい人たちと生きるって興味あるんだ」

「……ありがとうございます。そう言っていただけるのは光栄です。ですが、今はジュスト様に雇われております。お受けいたしかねます。ご容赦ください」


 ……「今は」ジュストさんにね。将来的にはわからないっと。いいなぁ、欲しい。


「はーい。戯言が過ぎました。では、あの人を糾弾するのは、おまかせね。ああ、トピ。トピは僕のことをいろいろ聞かれて、親しいふりをされていたけど、道具に使えないかと思われただけ。彼に害が及ばないようにお願いね」

「はい、理解しています。ご安心ください」

「うん、じゃあまたねー」

 男たちを任せると、エルクは宿に向かって歩き出した。


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