魔女ギルド⑤ 充魔と限界
「ぎにゃぁぁぁぁー! あばばばば……!」
「はいそこまで!」
グレアートは指をひょいと動かすと、俺の左手を引き離した。握り続けた右手を見ると、コルミーネは伏して痙攣している。
両手がつながっている最中、何かムラムラした感情が右手から吸い取られる感じがした。左手からは、彼女がグレアートが一緒に狩りをしている風景が流れ込んできた。とても不思議な感覚だ。
「やばいよー…… これヤバいってグレ姉…… ぐぐぐ……」
コルミーネは必死に机にしがみついて、何とか立ち上がり、俺の右手をそっと外した。顔を真っ赤にして何かを我慢しているようだった。目がうつろだ。
「あーだめだこれ。 抑えられない。 ちょっとぶっぱなしてきて良いかな、グレ姉?」
コルミーネの魔術服から湯気のようなオーラが出て、空間をゆがめている。頭のてっぺんや背中からポツポツと火が噴き出している。
「ここはダメよー。外でしてきなさい!」
グレアートは指先を外に向け、優しい口調で外に出るよう促した。トイレかな?
フラフラしながら、魔術店のドアを開けて外に出るコルミーネ。道路の真ん中についたら右を向いて杖を上に向けた。
「消滅砲!!」
コルミーネが叫んだ瞬間、杖の先端から特大のレーザーが放たれ、爆音とともに周囲に衝撃波が飛ぶ。入り口のドアが開けっぱなしだったため、衝撃波が部屋の中に入って大量の本が宙を舞った。レーザーは数秒続き、日が落ちきった空がお昼のように明るくなった。
本が落下する前にグレアートは右手を薙ぎ払うように動かす。本は空中でピタっと止まりぎゅっと束ねられて本棚の真横にすとんと置かれた。ヴィレオが絶句しているなか、顔をツヤツヤした状態で戻ってくる笑顔のコルミーネ。
「すっごーい!! なにこれなにこれぇ!? オキタ、もっかいやってえぇ!」
今まで警戒心丸出しだったコルミーネが一気に懐いたように、俺の片手を掴んでくる。グレアートとチラ見すると、もう一回やって黙らせて、という目の合図を貰ったので、もう一度両手を掴んだ。
「ぐぐぐ…… 止まらないこのリビドー。この私を止めてみろぉ!!」
慣れてきたのか、ある程度魔力が吸われた後に、そのままコルミーネは外にダッシュで駆け出した。ドアから出た瞬間に、グレアートはパチンと指で音を立ててこちらを見た。ドアが魔法ですっと閉じて鍵がかかった。
「流星群!!」
ドォォーン! キラキラキラー!
ドアが閉まっているので先ほどよりも室内は静かだ。外で楽しく魔法遊びをしている所を見ていたが、パなしている途中でグレアートが話してきた。
「これがオキタの仕事よ。分かった?」
「要は、俺の魔力を必要な時に渡すということだな」
「その通り。今はまだ不慣れで、魔素漏れが3割くらいあるの。仲良くなったり、接触面を増やせば効率よく受け渡しができるようになるから、そこは鍛錬が必要ね」
「コルミーネが初めてあなたの魔素を受け取った時は、結構危なかったでしょう?あれは彼女が持つ魔力の限界容量を超えたからなの」
「渡す人が意図的に強く魔素を流すと、あふれて魔法が暴発したり、最悪制御……いや自我が壊れちゃう時がある。だから受け取る側がどれだけ耐えられるかを意識してほしいのよ」
「渡しているときの手の感触、流しても向こうに抵抗を感じたらそこまで。体から出る魔素漏れを直接見るのも有効ね」
「普段の魔術師は12マナが限度だから、お互いに全ての魔素を渡しても悪影響はない」
「でも魔力を持ちすぎるオキタは、50を超える巨大なマナを適量流し込む調整が必要」
「このパーティのそれぞれの魔力容量はどれくらいあるのか教えてくれ」
魔力が尽きて戻ろうとドアをドンドンと叩くコルミーネを他は無視して話を続ける。
「直接聞いたほうが早いと思うけど…… 直近3回の回復量の合計が目安になるわ」
「私の場合は4時間の12マナの3倍で36マナが最大。体調が悪い時は半分くらいになることも」
「2人は3時間睡眠で4マナ、3倍で12マナ。魔術者は10マナは扱えないとダメね」
「剣士で魔術を使わない場合はもっと少ないの。ただひとつ、注意がある」
「それは、3日以上魔素をため込まないこと。これはとても重要」
グレアートは真剣な顔で俺を見た。
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