国侵略⑦ 不安と抱擁
俺たちの馬車は暗闇の中、揺られながら城の左側に向かっていた。今は夜の11時。普段の住人は12時ごろに就寝し、3時間の睡眠で3時ごろ目覚める。
崖から飛び降りて魔力で滑空しながら着地し、0時から3時まで魔術師組が寝ているときは俺とランダリルが運転する予定だ。8時間かけて移動し、朝の7時に到着する。その後は古城で兵士を迎え撃つという事らしいが、自殺という言葉がどうも気になる。
あと1時間で崖に到達する。その間、チュウル兵が易々と見逃してくれるだろうか。緊急事態の時は、常に最悪のケースを想定して動かないと危ない。
馬車の操縦はランダリル、前方周囲の確認はヴィレオ。馬車の中でコルミーネが後ろを確認。俺とグレアートは作戦を練るという形だ。4人の老体は、疲れているのか仮眠をとっている。起こさないための魔法がかかっているのか、目や耳を覆った布でわずかに光を発している。
「さて、ここからは直近の話だけに絞って話をするわね」
グレアートは馬車の中で小さな火を浮かせ、床に地図を広げた。ランダリルは運転したまま耳を傾け、ギルドメンバーが地図を囲む。
「1時間後、この馬車は崖から飛び降りて滑空する。その前に、馬に乗った追っ手がこちらに来るはず」
「そうね…… 良くて40分後。崖までは敵兵と戦いながら移動することになる。」
「途中で馬が走れなくなったらおしまい。私たちは何としてでも馬を守らないといけない」
「ヴィレオ、コルミーネ、ランダリル! 守るべき最優先は馬とオキタよ。この2つのために手痛い犠牲も覚悟してちょうだい」
「今からそれぞれの魔素を計りましょう。私とコルミーネと魔力が釣り合わないと川に落ちるから、ここは重要よ」
小型の魔力計測器を回し、各自で持っている魔力を伝え、グレアートはメモをして壁に貼った。
「複合回路の魔力計測器は持ってこれなかったから、オキタは昨日の魔力量から睡眠量で計算して」
「昨日が70で6時間寝たから、100くらいは魔力を持っている」
「オキタは100っと。馬車の重量はおおよそ2トン。二人で50メートルの川を滑空するには…… ええっと片側40マナが必要」
「オキタは滑空中に1回ずつ、私とコルミーネに直接魔素を渡すこと。忘れないように」
「滑空のための80マナを残して、他は各自の魔力を使い切っても構わない」
「ヴィレオ! コルミーネ! 涙の日よりも厳しくなること、覚悟しておいてね」
涙の日という言葉を聞いて、コルミーネとヴァレオの顔は強張った。
「それくらい、ギリギリの攻防になるわぁ…… 久しぶりね、この緊張感」
危機的状況でも、彼女は何か懐かしんでいるようだ。
「少し休憩しましょうか。オキタは馬車の使い方は知っているかしら?」
「いや、初めてだ」
「前に移動して、ランダリルから馬の操作を聞いておいてね」
「わかった」
コルミーネとヴァレオはうつ向いて、緊張しているようだ。やはりこのような状況はまだ若い女の子には酷かもしれない。俺はまだ人を守るために、命をかけて人を殺すことはなかった。殺しをちゅうちょして、誰かが殺されてはいけない。
俺は馬の操縦を聞くために、馬車から前に移動しようとした。
ギュッ
振り向くと、ヴァレオが防具の服を掴んでいる。
「ヴァレオ!? どうした」
「主は私が守る。絶対に死なせない」
ヴィレオは剣をグッと強く抱えながら、下を見て強い意志の声で俺に約束した。
「ああ、俺も皆を死なせはしない。約束だ」
俺は少し屈みこんでヴィレオと同じ目線に合わせる。ヴァレオは正面に目を合わせると泣いていた。不安にならない人なんていない。
同じ目線で優しく髪をなで続けると、ヴィレオは次第に落ち着いてきた。愛おしく感じ、ギュッと抱きしめた。
「主…… く、苦しい」
「うううーー!! オキター、私にもやって!!」
コルミーネはヴィオレをちょんと押しのけてグッと胸ぐらをつかんで頭をすりつけてきた。
「わかったわっかった!! コルミーネもな!」
ギュッと抱きしめて、少し落ち着いた後、髪を下にとかすように撫でた。花の香りがする。コルミーネが両手を出してきたので、握って魔素を渡した。
「ありがとう! 私もオキターを守るよ」
「二人とも、何とか乗り切ろう! 涙の日っていうのは何があったのだ?」
「……」
二人はチラッとグレアートを見て、黙り込んだ。思い出したくないようなことがあったのかもしれない。俺はそれ以上聞くのをやめた。
少し落ち着いた後、馬車の前の乗り出し、ランダリルの横に座った。
「ランダリル。馬の操り方を教えてほしい」
「面白い!」「続きが気になる」という方、8時間以上寝ることができる大賢者様、私ならこの異世界で無双できる!と思えた読者さんは、ブックマークや☆評価お願いします!
皆様のコメント・評価・ブックマークが燃料になります。よろしくお願いします!




