ギルド追放② 暴発と追放
指先から「ぼっ」と火が出て消えた。数秒の出来事だが、俺はギルドでまだ働けると思った。魔法が使える感覚を忘れないように、何度か同じことをしたがそれ以降はまったく火は出なくなった。
--やはり魔法を使うと、何か消費して使い切ると出なくなるのか?
時計の短針は8時と9時の間だった。今日はもう疲れたのでベッドで寝ることにした。まくらがなく、ベッドの敷布団は薄くゴツゴツしていた。寝心地は微妙だが、寒い外で寝るよりましだと思って、そのまま就寝した。
異世界転生2日目
「何人たりとも俺の眠りを妨げる奴は許さん……むにゃむにゃ……」
外の光が差し込み、目覚めたときには朝3時だった。この世界は早朝3時なのにもう日が昇っている。体に違和感がある。昨日の果物の影響なのか、体が妙にムラムラする。何か発散したくなるような気分だ。目には見えないが、体全身から湯気のようなオーラを感じることができる。
机の上に残っていた果物を食べ、身支度をして家を出た。今日ならアントムにファイアーの魔法を見せられるかもしれない。前の広間に急いで向かった。
広場には誰もいなかったが、近くの商人にアントムのギルドの行き先を尋ねたら、この先の村で魔獣狩りをしていることを聞いた。商人にありがとう、と伝えてその村まで走って向かった。
近づくにしたがって、叫び声が聞こえてきた。洞窟の巣穴に住む、オオカミのような獣が群れを成している。アントムと他ギルドメンバー3人と小型の馬車が並んでいて、すでに獣の遺体が積まれている。すでに何か所か制圧しているのか、パーティ全員の疲労がたまっているように見えた。
「おおお!!」
「風で切り裂け! ウインドカッター!!」
アントムともう一人の剣士が近接で、コーネットと魔術師が遠距離から魔法で攻撃する。4人に対して、オオカミの獣はざっと7匹以上いる。剣士は防具があるとはいえ、あの鋭い牙で首元をかむと死ぬかもしれない。
「ニムリーだ! 俺も戦わせてくれ!!」
声に反応して、一瞬こちらを全員が見る。アントムはないよりマシかという表情をこちらに向ける。
「好きにしろ。ただ邪魔だけはするなよ!!」
「ありがとう! 役に立つように頑張る」
このギルドに残るためには、ここで成果を出さなければならない。腰から探検を引き抜き、一匹でも狩ろうと構えた。しかし、俺には刃物を使うことはほとんどなかった。かまれる恐怖がよぎる。
--昨日のファイアーをより強く唱えれば、戦力として活躍できるかもしれない!
その時、前衛のアントムが横からきた獣の奇襲で腕をかまれ、体勢を崩した。咄嗟に獣の目に短剣を刺して、獣はのけ反った。俺の正面にオオカミの群れ、その右にアントムが倒れている状態、後ろには魔法使い。正面にファイアーを叩き込めばアントムには当たらず、獣を一網打尽にできる、今しかない!
コーネットの教えを思い出して、集中する。全身にみなぎる魔力のようなものを指先に集めて流れるように押し出す。
「ファイアー!!」
ボッ! ゴオォォォォォッッッ!!
指先から出た火は爆炎となり、5メートル先の巣穴の壁に届き、倒れていた右のアントムを巻き込んで一面を焼き尽くした。今までの不安と緊張感が全て指先から放出されて、爽快感があった。
正面の獣数体は一瞬で丸焼きとなり、俺の指先が真上に跳ね上がる。反動で2メートル程後ろに吹き飛ばされた。
「なっ! あっつ! おい、火を消せ!!!」
アントムは立ち上がり、燃えている衣服の火を何とか消そうとしている。
後衛の魔術師が、水の癒しの魔法で火をすぐに消した。残りの獣は逃げ出し、戦闘は終わった。
「お前がウルフを黒焦げにしたことで、報酬は激減だ。俺の顔をよくも焼いてくれたなぁ!」
アントムは激怒し、俺の首元を持ち上げる。ここまで魔法が飛び出すことは想定してなかった。反論の余地はない。
「すまない。役に立とうと思って魔法を使ったら大きくなりすぎてしまった」
「約束したよな。ただ邪魔だけはするな、と」
「お、ま、え、は 追放だ!!」
アントムは俺を投げ飛ばした。
「明日からはトレヴィの王都に遠征して狩る予定だ。今日はこれで終わり。各自で休め」
身支度をして帰ろうとするアントム。無言で片付けるギルドメンバー。俺をかばうものはいなかった。
「そうだなニムリー。赤の他人になったから、最後に教えてやるよ」
「風のうわさでな、悪名高いラッセントから金貨50枚も借りたバカがいたって聞いたんだよ」
「そしたら偶然な。落ちてたんだよ、その金貨50枚が入った袋が。ハハハ!」
「もし拾った奴がお前だったら、奴隷女の一人くらいは救えたかもなぁぁ!」
アントムはコーネットに近寄って、後ろ髪を引き上げて笑い出した。彼女は痛がっている。
「やめろ!! 痛がっているだろ!」
「いいの。体は奪われても、心は決して奪われない! 私を解放すると誓ってくれた…… その言葉だけで私は耐えていける」
コーネットは涙を流しながら、笑顔を作って俺のことを見た。
「先週に借金が返せなくて奴隷に落ちたお前は、まだ口の利き方が分かってねぇようだな!!」
コーネットの首を強く締め上げる。彼女は抵抗するが、別の力で抑えられているようだった。
「このペンダントで…… 妹のコルミーネのギルドを訪ねて! ニムリーの強い魔力ならきっと役に立てるから!」
コーネットは首のネックレスを引きちぎり、俺に向かって投げた。
「キットヤクニタテルカラァ! だってさ。 魔力暴発する奴に何ができる? 世界でも変えるかぁ?」
アントムは声まねをしながら笑い飛ばした。
「ギルドで活躍して稼げれば、いつかは助けられるだろうな。 でもな……」
「もうお前の席はねぇから!!!」
「ずっと臆病者だったニムリーが、最近は人が変わったように俺にたてついてきた。その勇気だけは褒めてやる。魔力が好きなら、好きなだけ寝てろや!」
「復讐したけりゃいつでも来な! 次会うときには、鎖でつながれているけどなぁ!!」
その言葉を最後に、彼女を連れてアントムたちは帰っていった。彼女が残したペンダントを拾い、裏の文字を見ると住所らしき文字が書かれていた。ギルドから追放され、何一つこの世界が分からない俺にとって、この妹コルミーネのギルドが最後の希望となった。
日が沈み、失意のなか家に戻った。俺は眠ることができなかった。金貨53枚の借用書なのに、アントムは50枚の袋と言っていた。ニムリーがコーネットを買い戻そうと借金をして、あいつらに盗まれたのかもしれない。俺がこの部屋にある借金を返せなければ、同じように貸主の奴隷となり自由を失う。異世界転生はストレスなくバラ色のハーレムが待っているのではなかったのか?
異世界転生3日目
気が付けば寝落ちをしていた。時計を見ると6時。スマホや目覚ましがないと、時間通りに起きれないので非常に困る。
昨日何時に寝たのか覚えていなかったが、すぐに妹コルミーネのギルドに向かうことにした。家から歩いて10分、書かれた住所は確かにここだ。目の前にはボロボロの本屋のような館がぽつんと立っていた。看板には店の名前が書かれている。
「希望の館? まあ確かに俺にとってはここが最後の希望だけどな」
ドアを開けて中に入ると、そこは真っ暗だった。
「いらっしゃい。何の本がご希望かね?」
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