国侵略① 新盾と剣士
僕はニムリー…… 沖田さん、君と話がしたい……
「俺の眠りを…… んーー はっ!!」
3日後の朝、寝ているときに不思議な言葉を聞いた。いつもなら寝た直後に朝の目覚めが来るはずが、昨日寝たときはニムリーという事が記憶に残っていた。
転生してから一週間ほどこの世界で生活し、この青年の体にも慣れてきたころだ。蛮族の事件で傷ついた体はコルミーネにちょくちょく回復で直してもらい、魔力も睡眠で回復しつつあった。
ニムリーを知る者はもうこの街にはいない。昔の名は捨て、今は沖田洋平でこの体を動かしている。もしかしたら、前のニムリーの人格が何かこの体に残っているかもしれない。
そう考えつつ、いつものように魔導書店に向かって歩いていた。
店に入ると、暑苦しそうな赤髪のマッチョ男が上半身裸で窓ふきをしている。
「おはよう! 沖田だ! 誰かいるか!!」
少し待つと、グレアートがふわっと奥から現れた。
「来たわね、オキタ。新しい壁役を紹介するわ。ランダリルよ」
「よろしくお願いします!! 沖田先輩!!」
拭き掃除をしながら、こちらを見て挨拶をしている。
「えっと……だれ?」
「盾役が離脱してしまったので、代わりを急いで手配したの」
「そういうことか。えっと…… 何代目?」
小声でグレアートに聞いてみる。
「4代目。盾役は、攻撃を全て受け止めるからあまり長く持たないのよね……」
ちょっと外で買い物をしてくると、グレアートは外に行ってしまった。
何か別の気配があると気づいたら、奥の暗闇から角、角から背面にシュシュっと移動して背後を取られた。
「主、前のあれをやってほしい……」
誰だか見えなかったが、声で何となくわかった。
「ぐぐぐ…… 苦しい。ヴィレオ、あれって何だよ」
スッと背中から降り、俺の前に回り込む。無言で両手を突き出し、痺れるような振りをしている。ああ、魔力供給の事か。
「魔力供給を体験したいのか。別に良いけど、何で俺を あるじ って呼ぶの?」
「男が私の本性をすべて見た。恥ずかしいことを見られてもうお嫁にいけない。バラしたら殺して私も死ぬ」
「だから墓場まで持っていく。監視する伴侶として、生涯を共にする……」
「極端すぎないそれぇ?」
あの事件からヴィレオとどう接するのか考えていたが、元気に話してくれるなら良しとしよう。ただ、男というのを何か勘違いしているのではないのか?
「さあ早く」
両手を前にして、心からの笑顔を作ったヴィレオ。 興味と初々しさが混ざっていて可愛い。
両手を握り、ちょっと強めに魔素を流す。
「んんんん…… ああああああ……」
崩れた顔を見せるのが嫌なのか、マッサージ器の強めを声に出さずに体で受けるようだった。目がうつろになり、赤面する。
コルミーネは魔法を外でぶっ放していたが、魔法剣士のヴィレオはどんな放出をするのか眺めてみた。
おもむろに腰から長めの剣を抜いて、防御するように斜めに持ち上げて構えた。
目をつぶって集中し、ぼそぼそと呪文のようなものを唱える。 数秒後……
ブゥゥン!!!
剣の握った所から少し発光し、徐々に剣先に向かって光が伝わっていく。
ブシャァァァ!!
剣先まで達した光は、その延長線上に向かって一気に伸びた。 部屋のかどにまで光が伸び、穴が開いた。 俺の目と口も開いた
ブウゥン! ブゥン!
「これが愛の力……」
剣の先端をぐりぐり振り回すと、屋根の損傷が大きくなり、空の光が入ってくる。次第に剣先のレーザーは短くなり。剣は色を失って元に戻った。魔力の余剰放出が終わったようだ。
「あーらあら。これはすごい力ね。お空が真っ青」
帰ってきたグレアートは、左半分の2階部分がレーザーで焼き切れて露出した空を見て感心した。
「普段は魔力を剣に練りこんで、貫通力を高めたりちょっと飛ばたりするだけなんだけど」
「一気に放出すると、ここまで伸びるのね。これは色々と応用できそうね」
……なんか他人事みたいに話していないか? この修理どうするのだ?
「修理はランダリルにお任せあれぇぇ!!」
窓ふきが終わった後に、修理の準備でセカセカと動くランダリル。
「俺も手伝おう」
暑苦しそうな新しい盾役と一緒に、ぽっかり空いた屋根を修復した。
魔力で修理すると簡単ではあるが、前の依頼で使い切ってしまったため、フルチャージするまでは魔力を温存しているのだ。
転生した俺の人生に、ひと時の平和が訪れた。
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