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朱邑魔都 〜白炎の王〜  作者: 月湖畔
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十四 ー 1 ー

サブタイトルは年齢です。

魔の森を背に建てられた広大な建物。

邑を象徴する建物だというのに質素な造りである神殿は、年々増築され建国当初に造られた棟は朱色が褪せた雰囲気がある。

いくつも建てられている神殿の建物は大きく二つに分けられる。

神殿深層の居住区の一室。

少年がふたり、寝台の端に腰掛けていた。

ふたりともそろそろ少年から青年に手が届く頃合い。

ひとりは白磁の長い髪、もうひとりは肩まで伸びた漆黒の髪色をしている。

黒髪の少年はふてくされた表情で白髪の少年に腕を取られていた。


「痛ったいって!」

「うるさい」


白髪の少年の眉間には深いしわが刻まれている。

黒髪の少年の腕にぎゅうぎゅうと包帯を巻き付けている。


「もっと緩めろよ。食い込んでんじゃねーか」

「怪我をする方が悪い」

「しょうがねーだろ」

「しょうがなくない」


声は淡々としているが、感情を抑えきれない金の目が怒りで満ちている。

包帯を巻き終えた腕をじっと眺め、手をかざした。

一瞬の間が開いて、突如ぼっと炎が上がった。

乳白の中にキラキラと金色が混じる炎、『白炎(はくえん)』。

高温であるはずの炎は包帯を燃やすことなく、数秒揺らめいてすっと消えた。

美しい炎に目を奪われていた黒髪の少年は、はっと我に返ると責めるような目を隣の少年に向けた。


「おい。こんなことに白炎使うなよ」

「なら、俺の前で怪我するんじゃない」

「うっ……」


当代の神官は、十代の少年だった。

人口二百に満たない邑の王でもある。

魔を撥ね除ける炎を生み出す神官の家系に生まれ、この地に追われた。

神官に生まれた者は神聖な朱色の髪を持って生まれるはずなのに、彼の髪は白。

忌むべき色として疎んだ実父は生母の実家が用意した使用人を神殿から追放し、彼の教育を一切許さなかった。

彼を育てたのは実父の末弟である叔父と彼の優秀な部下たち。

魔に怯えながらも逃げてきたこの地で暮らしていた。


神官は神職であると同時に王であり、誰より尊い存在と認識されている。

皆が彼に跪き、敬愛を抱く。

しかし、目の前の少年は少し違う。

気安い幼馴染で、抱いている想いは親愛だ。

誰よりも神官である少年を理解し、神官としての尊厳よりも彼の心情を選ぶ。

それを時折危ういと思いながらも健気な幼馴染を傍から離せなかった。


「リー」


神官は幼なじみを抱き寄せた。

布越しに伝わる体温が彼を安心させる。


「心配させるな」

「……悪かった。クロウ」


黒髪の少年、リーはクロウの背に腕をまわした。

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