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それから自分の準備もした。

娘の目の前で自分のお泊まりの準備をするのは気が引けたのでバタバタだ。


稗田さんが家まで迎えに来てくれるらしく、とりあえず車に荷物を置かせてもらうつもりだ。

約束は19時で夏川くんたちとの待ち合わせが19時半だった。


何だかそわそわして娘が寝てたときに出来なかった掃除機を急いでかけた。


電話が鳴って見てみると有希から写真が何枚か送られて来ていた。

翔太くんとオセロをしている写真や並んで夕飯を食べている写真だった。

楽しそうで安心した。

最後に『稗田さんとあつ~い夜を過ごしてね』って…


そこはスルーして写真のお礼だけ送った。

もうっ!有希ったら恥ずかしいじゃない!

一人部屋の中で赤面してることも恥ずかしかった。


また電話が鳴った。

また有希だって思いながら見てみると稗田さんから着いたよメールだった。

私は慌てて家を出た。


急いでマンションの下に行くと稗田さんの車があり稗田さんも車の外に出てきていた。


「お待たせしました。迎えにきてもらってありがとうございます。」


「久しぶり。会いたかったよ。」


稗田さんはそう言うと私からカバンを取り後部座席に載せて助手席のドアを開けてくれた。


「ヘヘッ、ありがとうございます。照れますね。」


「フフッ、照れてない時がないよね。そんな香織ちゃんが可愛くて愛しいよ。」


またまたそんな事を言う!

でも甘い言葉を言ってる割に顔はイタズラに笑ってるから何だか悔しい。


「どこまで本気なのか…」


そう言いながら私は車に乗った。

稗田さんもすぐに運転席に乗ってきた。


「え~、ひどいなぁ。いつだって俺は本気なのに。」


なんていいながらやっぱりあの笑顔。

稗田さんの方を向き文句を言ってやろうとしたとき、稗田さんから腕を引かれ抱きしめられた。

稗田さんの匂いだ。

私って匂いフェチなのかな?この匂いがすごく好き。


「はぁ~、やっと会えたね。何日会えなかったか。いつ会えるって連絡が来るかと待ってたらまさかの夏川通してだったし。俺、拗ねてるんだけど?」


首もとでしゃべるからくすぐったいやら恥ずかしいやら嬉しいやらで笑ってしまった。

でも稗田さんも笑ってくれたからそこは素直に謝った。


それから待ち合わせのお店へ移動した。


「今日って田邉さんもくるんですか?」


「その予定だけど遅れてくるみたいだよ。先に食べててって言ってたから。田邉のことが気になる?」


「はい。離婚のことも稗田さんとのことも伝えてないですしやっぱり傷つけてしまいますよね…」


田邉さんの事だから怒るかな?


「そうだね。夏川とも話したけど内緒がいいよね。後ろめたさもあるけど夏川からも出来るだけ刺激しないでってお願いされたんだ。」


そうだよね。夏川くんと田邉さんは同じ立場で、やっぱり辛いよね…


「夏川くんって最近はずっとあんな感じなんですか?」


「う~ん、どうだろうね…。日本に居るときは気張ってる感じだけど海外にいるときは落ちてるんじゃないかなぁ。帰ってくると頬がこけてることが多いよ。」


そっか…田邉さんはその点強いなぁ。

結構あんな調子だし。


お店に着くと夏川くんが既に席を取っておいてくれた。

良く見ると稗田さんの言った通り夏川くんは痩せてた。

こちらに気づくといつもの笑顔でこちらに手を振っている。

私と会うのも正直複雑な心境なのかもしれないなぁ。


「夏川くんお帰りなさい!」


「ただいま、香織さん!会いたかったよ~!」


そう言いながら腕を引かれて夏川くんの隣に座らされた。

そして私の腕にしがみつくと肩に頭を乗せてにこにこしてる。

これは甘えられてるのかな?からかわれてるのかな?

とりあえず頭をよしよし撫でてみた。


「無事に帰ってこれて良かった。毎回少し心配しちゃう。私は日本ほど安心なところはないと思ってるから!」


すると頭を上げてこちらをみながら

「そういえば海外は嫌いでしたね、フフッ」

って笑われた。


そんな私たちのやりとりを見てた稗田さんは驚くほどの真顔だ。


「ねぇ、香織ちゃんって俺と真剣にお付き合いを始めたんじゃなかったっけ?取り持ったのは夏川だよね?」


「ハハッ、嫉妬してる!僕だって久々の香織さんなんだから許して下さいよ~!またすぐ海外行かされるし、そしたら独り占めでしょ?僕だって寂しいんですよ」


って泣きまねを始めた。

そんな2人のやりとりが可笑しくて私は隣で笑ってた。

こんな風に皆が笑えればいいのになぁ。


「正直、弘人が来ること考えたらこの組み合わせが一番無難ですよ!香織さん人気者だから取り合いになりますしね。」


いたずらっ子な可愛い笑顔で夏川くんはそう言ってくれてるけど私の心の中は複雑だ。

きっと夏川くんの心の中はもっと…


「そうやって夏川は美味しいところを持っていくんだよなぁ。まぁ今夜は独り占めできるし、今だけ我慢するよ。」


ニヤニヤと稗田さんも冗談っぽくそんな事をさらっと言う!


「そうですよ!僕のおかげですからね!香織さんの指輪に気づかなかったら今頃社長はまだドロドロのままですから!お給料あげてください。」


そんな冗談を言い合って3人で笑っていると30分ほど遅れて田邉さんも到着した。


「遅くなりました。ってあれ?まだお酒飲んでないんですか?」


おつまみ程度のものを注文しただけで田邉さんを待っていたのだ。


「揃ってからじゃないとお前は強いからな。周りが困る。しかも俺は車なんだ。」


「えっ?代行頼めばいいっすよ。しかも俺、先輩の隣っすか?癒されません。」


やっぱり田邉さんが来ても冗談まじりな会話になり楽しく過ごした。

それからとりあえずのビールを皆頼み乾杯をした。


「何気に4人って初ですね!」


「そういえば、香織、夜出てきて大丈夫なのか?」


ドキッ


「えっ?大丈夫だよ!娘は友達のお家にお泊まり行かせてもらってるの。」


「ふ~ん、旦那もよく許したな。俺なら付いていくけどな。」


「ハハッ、それはそれで怖いよ…」


田邉さんならしそうだ!


「そういえば香織さんの娘さんにはお会いしたことないですね。社長と田邉さんはあるんですか?」


「う~ん、会ったというかちらっとなら後ろ姿見たかな?」


「確かにないな。香織に似てるのか?」


思い返せば初めて田邉さんに会った日にチラッと見られたのかも。

あの時はただ娘に会わせたくなくて隠すように逃げ帰ったもんなぁ。


「え~っと…どちらかというとパパかな?あまり私に似てるって言われたことはないもんなぁ。」


「へぇ~!写真ないんですか?香織さんの娘さんみたいです。」


う~ん、少し躊躇ったけど悪い人たちではないからさっき有希から送ってもらった写真を見せた。


「すごい!香織さん本当にお母さんなんですね!僕の周りには子どものいる人がいなくて!可愛いなぁ。やっぱり香織さんでも怒ったりするの?」


「するよ~!最近は自立心が強くなってて反抗的だからついかっとなっちゃうし、後回しなことが増えて忘れちゃったりとか…怒ってばっかりな気がする…」


「フフッ、香織ちゃんのそんな姿見てみたいな。立派にお母さんだね。」


「いえ、お見せできるような姿ではありませんよ。」


思い返せば反省するけどやっぱり怒ってしまう…特に仕事を始めてからというもの時間の縛りが出てくるので尚更だ。

怒らない育児なんて誰ができるんだろう…


ふと気づくと田邉さんは私のスマホを手に持ち真剣な顔で娘の写真を見ていた。

その姿をみるとまた複雑な気持ちがこみ上げてくる。


「田邉ったら香織ちゃんの娘さんが可愛いからって見すぎ!はい、俺にも見せてね。」 


そう言って稗田さんが田邉さんからスマホを取り上げた。


「えっ?あ、可愛いっすね。本当に、香織の子。」


私の子…

夏川くんの前なのに…皆が幸せにって言うより田邉さんが元に戻れれば…


「あっ!そういえば信用できる友だちに田邉さんのこと相談したらパラレルワールドみたいだねって!あの時私が仕事を辞めたか続けたかでいろんな人の人生が分岐したみたいって。」


「確かに!田邉さんの話と香織さんの話を聞くとしっくりくるかも!海外でもそういう自分だけど別の人生を歩んでる世界があるって説がよくあるんですよ!体験した人もいるとか!会ったことはないけど話は聞いたことがあります。」


「もしそうだったら田邉、お前はすごいことをしてることになるな!なんかの拍子に別世界の自分と入れ替わった?でもなんで?」


「なんで?何でだろう?」


「はっ!もしかして事故にあったとか?映画とかなら何らかの衝撃を受けて入れ替わる的なのよくありますよ?」


「夏川は映画の見すぎ。事故は起こしてないと思う。気づいたらベッドに寝てたから。頭が痛かったような気がする。覚えてないんだ。あの日の夜普通にベッドで寝たはずなのに起きたら今の部屋のベッドの上だったんだ…」


場を和ませるつもりで言ったのにまさか本当にパラレルワールド?からきたのかな!?


「俺の知ってる人物は存在してて、仕事もあまり変わらないし、でも人間関係がかなり違う。あとは最近慣れたけどあったはずのところにコンビニやマンションとか無かったりあったり、ビミョーに違うんだ。」


うわぁ!本当に?

皆の話を聞いてて鳥肌が立ってきた!

もしも本当にパラレルワールドが存在するならば…

その世界の間を移動して入れ替われるならば…

なんて恐ろしい…

でも何の目的で?誰がそんな事をするの?神様?本当にいるの?

私の頭ではなかなか追いつかない話だ。


「すごい!面白いですね!正に映画の世界ですよ!!なら入れ替わったときと同じ状況になればっ!」


夏川くんがすごく興奮している。

辛いはずなのに楽しそうだ。

でも戻れる可能性があるのなら夏川くんも希望がもてるよね。


「僕、その辺色々詳しい知り合いに聞いてみます!」


それから夏川くんは気分良くすごいペースでグビグビ飲んでいる。


「もしパラレルワールドが存在してるとして、こっちの俺と、入れ替わったのかな?もし無数に世界が存在するとしてごちゃ混ぜになってたら…俺って戻れるのかな?」


「まぁ、よくわからないけど前に田邉の主治医に聞いた話では戻ってたよな。恋人が死んだって記憶のある青年は。」


私が病院に行ったときに聞いた話だ。

そっか、それなら説明がつく。

ただ科学的に証明されてないから医者はパラレルワールドの可能性なんて考えてなかったのかな?


「あっちの香織はどうしてるかな?もしこっちの俺が入れ替わってたとして俺と香織って出会えてなかったんだよな?じゃあ朝起きて隣に香織がいたら驚くし香織も忘れられたって傷ついてるよなぁ。」


「そうだよ!弘人、僕はかなり傷ついてます!すぐにでも元に戻って下さい!」


「夏川は飲みすぎ!もう頼んじゃだめ。そして香織ちゃんと田邉は席を変わって!夏川酔ってさっきから香織ちゃんのことベタベタ触ってる。」


「えっ?何で俺?先輩が変わって下さいよ!」


酔っ払っても夏川くんの隣が一番安全な気がする…


「仮にも恋人だろ!責任持って介抱してやれよ!襲ってきたりはしないよ。田邉の方が力強いだろ?」


「いや、あの…こいつ強いっすよ。」


「弘人~!来て来て!僕は弘人を指名します!」


酔ってる夏川くんは更に可愛い。

私と田邉さんが席を変わると腕にしがみついて体をもたれてる。

本当なら甘えたいよね~!


「俺はホストじゃねー。」


「こんな時くらい甘えさせてあげてよ。普段頑張ってるんだから。」


からかい半分で私が言ったから…


「じゃあ香織は?普段頑張ってる俺をいつ甘えさせてくれるの?」


なんて返された…


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