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「うん!いいと思う。私は香織を全力でサポートするよ!」
やっぱり有希、心強い。
「まず、前に話してた弁護士さんに会ってみようと思う。弁護士さんに会ってから旦那にきちんと話をして、香澄にも…。あの子には生活環境が変わるから負担もかかるけど…。」
「大丈夫よ!今までの香織の姿を見てきてるんだもの、真剣に話せば理解してくれると思うよ。」
きっと働き出したら寂しい思いもさせちゃうんだろうな…。
「待ってね、善は急げで弁護士さんに電話するから。」
言い終わらないうちにもうスマホを耳に当ててる。
行動の速さは本当に有希らしくてスゴイ!
「明日はどう?10時とか?」
早い!予定もないので首を縦に振って返事をする。
すぐに電話は切ってしまった。挨拶くらいするべきじゃなかったかな?
「じゃあ明日の10時に来てくれるらしいわよ。すごく話しやすい人だからゆっくり話してみてね。」
「え?来てくれるの?私何もないから行くのに…」
「うちが事務所への出勤途中にあるからいいって!」
今の弁護士さんって優しいな。
って弁護士さんが来てくれるなんて恐れ多い…
翌日の10時前本当に紹介された弁護士さんが来てくれた。
てっきり男性と思い込んでいたけどスラッと背の高い美人弁護士さんだった。
「私有希ちゃんとは近所の幼なじみでね、そろばん教室が同じで学年は3つ上だけど仲良かったのよ。香織さんは有希ちゃんと同級生よね?泉って呼んでね。」
幼なじみだったなんて!
そんなこと有希は一言もいわなかったからびっくり。
「は、はい。宜しくお願いします。」
「早速だけど、話はね聞いていたのよ。私と会うのを渋っているっていうのも。解るわ。皆さん同じだし、私もね旦那に浮気されちゃってバツイチなのよ。」
こんな美人を奥さんにしておきながら浮気なんて…そんな話をしながら素敵なスマイルでこちらを見ている。
でもきっと私が話しやすいように言ってくれたんだ。
「驚きました。こんなに素敵なのに。」
「あら、香織さんも素敵よ!前を向いて歩こうとする女性はかっこいいもの。私は応援するわよ。それで、香織さんの気持ちはもう決まったの?」
私の気持ち…
「はっきりとは言えません。でももう今までのような生き方はしないって決めました。」
「今のまでのような生き方って?」
「旦那に頼りっきりの生活です。何で私は旦那を許せないのに一緒に生活しているのかわからなかったんです。でも頼りきっててひとりで立てないから不安ばかり募ったんだと思います。だから働こうと思っています。離婚に関しては私が一方的に決めることではないから…」
「そうかしら?あなたがもう旦那さんと無理なら無理って言う権利はあるのよ。そもそも頼りきってって経済面で、でしょ?その代わり家のこと身の回りの世話から食事、子どもの世話をあなたひとりで担ってきたんじゃないの?それだけのことを家政婦さんやシッターさんにお願いするとなると月にいくらかかると思う?それを職業としている人たちはそれで生活しているのよ。離婚して困るのはあなたではなく仕事しかしなかった旦那さんの方だと思うけど?」
困るのは旦那?
「でも、私との生活にストレスを溜めたのであれば離婚してあの子と新しく生活したほうが幸せなんじゃないでしょうか?」
「う~ん、そこは旦那さんと話さないとわからないわ。でもそれならそれですっきり離婚したほうがいいわね。どちらにせよ相手の方は罰することが出来るの。慰謝料請求や離婚しないのであれば誓約書を書かせて旦那さんとは一切の関係を持たないと約束できます。冷静に考えてもし離婚するならお金は必要になります。相手の方に遠慮せずそこはきちんと払ってもらうほうが得策とも言えます。あと、離婚するのであれば慰謝料、今後の養育費、財産分与等考えていかないといけないし親権も。離婚しないのであればそれなりの条件を付けた誓約書を書くとか。簡単に言えばこんな感じかしら。」
しっかりしないと。
考えることが沢山あるんだ!
「わからないけど、きめないといけないことがたくさんあるってことですね。わかりました。相手の方についてはもう責めれる立場では無くなったので…」
「どういうこと?」
稗田さんとの話をするのは本当に気まずく、稗田さんに申し訳ないけど…
「私も浮気みたいなことをしました。相手の方は優しい方でどこまで私に好意を寄せてくれているかはわかりませんが、デートしてキスもしました。その、行為自体はしてません。相手の男性に迷惑をかけたくないので私も旦那の相手の方にはもう何もできません。」
「そう、せめて離婚が決まっていればね…わかりました。そうなると慰謝料などにも影響は出てきますよ。ご主人はご存知なの?」
「はい。その話をした後から有希にお世話になっています。」
今更ながらあの日のことが恥ずかしい…
後悔とか罪悪感は驚くほどなく稗田さんの言うとおり楽しい思い出にしておきたかったけど人に話すとやっぱりいけないことをしたんだと思いしらされる。
それから細かいことを少し話して、泉さんは出勤していった。
「相談料は無料よ。離婚するときは幼なじみ割引してあげる。」って言ってくれた。
有希と気が合うだけあってさっぱりした人だ。
その日のお昼に旦那に電話して夜に会う約束をした。
迷ったけど家で会うことにした。
娘は有希の家に居させてもらい、明日も有希の家から学校に通わせてもらう。
とにかく話し合いをしなければ…
何故かどうしても稗田さんの声が聞きたくてダメ元で電話をしてみた。
忙しくて取らないかなって思ってたらなんと2コール目ぐらいですぐに出てくれた。
『はい』
「こんにちは、菊池です…香織です。あの、」
『フフッ、フルネーム名乗ったね。ちょっと待ってね。』
フルネーム…なんて名乗ったらいいのか。
稗田さんは誰かと話をしているようだ。
忙しかったよね…悪いことしちゃった…
『もしもし?ごめんね、お待たせ。どうしたの?』
「あ、いえ、大した用事ではないんです。なので忙しそうだしまた改めます。」
『え?忙しくないよ。大丈夫。事務所にいたらまた田邉に電話を取り上げられるかもしれないから出てきたんだ。』
「それこそごめんなさい。わざわざ出てもらって…本当に大したことなくて、ただ、稗田さんと話すと元気になるから少しだけ声を聞ければと思っただけで…ごめんなさい、そんな仲じゃないのに…」
言っていて仕事中の人に電話する内容でもないことにひどく自己嫌悪に陥った。
はぁ、思わず勢いで電話して私ってバカだ。
『へぇ~!俺はそう言ってもらえて嬉しいよ。そんな仲だよ。何かあったの?元気出ない事が。』
「いえ、何も無いんですけど充電しようかと…」
『フフッどうしたの?今日はやけに嬉しいことばかり言ってくれるね。昨日の今日だけどお昼一緒に食べる?そっちに行くよ?』
「へへっ、恥ずかしいこと言っている自覚はあります。ごめんなさい…今日は会ってはダメな気がするのでまたいつか行きましょう。
仕事中にごめんなさい。」
『香織ちゃん謝ってばっかりだよ。声だけで充電出来る?会ってはダメか…無理矢理でも会いに行きたくなるけど今日は我慢するよ。香織ちゃんが苦しくなるのは良くないからね。可愛い電話をありがとう。午後からも仕事がんばれるよ!』
「フフッ、午後からも仕事頑張って下さいね!ありがとうございます。」
『こういう電話は24時間いつでもしてきてね。俺も香織ちゃんの声が聞きたいから。』
「フフッ、ありがとうございます。さて、元気になったので頑張ってきます!ではまた。」
『何か頑張ってくるんだね。応援してるよ。無理しないで、弱音も吐いてくれて構わないからね。いつでも香織ちゃんの味方だよ!またね。電話待ってる。』
そう言って電話が切れた。
電話待ってるって…嬉しい。
きっともう惹かれてるとかのレベルじゃない気がする。
好きだ。
自分の気持ちを自覚すると胸が苦しい。
でもこの気持ちは伝えるつもりも叶えるつもりもない。
この年で恋をするなんて思ってもみなかった。
全てを解決して再出発する時に辛いだけではないその中にキラキラした思い出もあったと思えるだろう。
悲しいのか嬉しいのかわからないけど涙が溢れてくる。
むやみに押し込めることはしないで今だけ、今だけこっそり泣かせて下さい。




