天界でのこと
ああしんだ、しんだのだ
あしがうごかないのはしんだから
目の前の相手が放った言葉で、それは簡単に整理がついた。
――――ご免なさい、手違いです、色々すみません。
なぜか謝られていた。
その女の子は心底から、こちらに何かを謝っているようだった。
優しそうで見た目の印象がいい彼女はしきりに、謝罪の言葉を繰り返し、僕に何度も頭を下げた。
『いいんですよ』
それをいうと彼女は、うってかわって朗らかな笑みを浮かべるようになった。
『ですよねですよね、
確かに死なせてしまったのは悪いですけど
ちゃんと生き返らせるんですもんねっ』
当たり前のように彼女はそう言う。
全く理解が追い付かないが、彼女は存分にしゃべる。
『でも普通トラックに撥ねられるって、
はねられる人にも問題ありますよね!』
そうかもしれない。
ただそういわれるとじゃあ、撥ねられて死んだということか。
『それで記憶も吹っ飛んじゃって、アホクサ、まあいいですけど。
説明が難しいのは毎回同じなんですからぁ』
………
どうやら選ばれたらしい。
彼女は女神という存在で、いわゆる全能、全知の神に近い存在だった。
実はそこまで万能ではないらしいが、素晴らしい。
元々彼女が見下ろしていた下の世界から緊急の要請を受けたが、それは彼女にはどうにもできないことだった。
それを解決するにはノーマルな人間が一番適任だったが、見繕うにもまた面倒がかかる。
他の神が誰も見ていない世界で、不具合のない範疇で、それに選ばれた理由は単純だった。
簡単に派遣をさせられて、その中の一番問題を解決できる普通の人間を選んだらしい。
呼びかけられたからそれに答える、なんて優しい神なんだろうと思う。
女神からの要求は異世界転移だった。
世界間を移動して、その世界の問題を解決してほしいとのことだった。
その途中で人死にが出たのは完全にミスだったらしい、ふうん。
それには、迅速に対応可能な用意が与えられる。
ステータス、つまりは筋力などの能力を幾分か水増しして。
スキル、出来そうなことを出来ることとして完全に固定化するのだ。
今死んでいる私は、いわゆる死後の存在だ。
故に世界の移動を望まないのならば、このまま自分の世界で死亡したまま。
望めば新しい世界での人生を送っていくということになる。
これは選択の余地がない、僕は自殺の願望などなかった。
女神は選択を迫ってきたが、答えは決まっていた。
死には意味がある、意味在る死が必要だと、この時私は感じていた。