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ボール当て(前半)

書いていたら長さが中途半端になってしまったため、2つに分けるにしました。


この話は前半です。

 魔球ボール当てには4〜8歳までの子供のほとんどが参加している。メイ姉は昨年までは参加していたのだが、今は赤ちゃんのお世話をシスターたちと一緒にするようになったため、ほとんど参加していない。


 それでも7歳と8歳の子が参加しているわけで、その中で俺とレオンがそれぞれチームリーダーをやっていることを不思議に思った人もいるだろう。これには理由がある。


 半年くらい前までは俺とレオンが一緒のチームで、お互いチームリーダーでもなんでもなかったのだが、俺たちがいた方のチームが常に勝っていた。俺たちより年上の子供達は悔しかったのだろう。何とかして俺たちに勝つために、一度だが、"6歳以上の子供チーム" vs "俺とレオン率いる5歳以下のチーム"というチームで勝負したのだ。


 結果は俺たちの圧勝だった。俺たちのチームで当てられた子は1人もいなかった。


 その結果、年上の子供達は俺とレオンを別格として見るようになったようで、常にチームリーダーは俺とレオンの2人がやることになった。


 レオンとの戦績は230戦中230勝、だ。

 負けたことはない。


 身体が6歳児とはいえ、前世では最強とまで言われた武道家だ。小さい子の投げる球を避けることなど造作もない。どれだけ味方がやられても、俺が全て覆すから最終的には勝つのだ。


 まぁ、俺1人が楽しむわけにもいかないので、なるべくチーム全員で勝利したと思えるように、作戦はきっちり考えるけどな。




「じゃあ始めるぞー」

「「「おー!」」」


 俺たちは遊び場の中央で、チームごとにお互い向かい合って並んでいる。ボール当てのスタートはこの場所から始めるルールになっているからだ。


「よ〜い、ドン!」


 俺がそう言うと、みんな一斉に振り返って後ろに走り出す。

 それぞれのチームが、自分たちの後ろにある萎んだ魔球ボールを取りに行っているのだ。遊び方を色々と考えていく内に、初めはボールを持たないで、開始と同時に取りいくこの形に落ち着いた。


 もちろん全員で取りいく必要もない。

 現在この遊び場には、先ほどレオンたちが木の箱を並べたりして隠れるスペースができている。相手がボールを回収しに行っている間に良いところに隠れておくのもありだ。その辺りはチームの作戦と個人の考えによってどうするかを決める。


 今回俺たちのチームは、ボールを全員で回収した後、右側に人数を集中させ一気に攻め上がる作戦を取ることにした。

 戦略を練るのは明らかにレオンの方が上であるため、慎重に攻めても上手く行ったことがほぼない。だから最近では、右か左のどちらかに人数を集中させて一気に攻め上がる、一か八かの作戦で挑むことが多いな。


 上手くいくと良いんだが…。




 「作戦開始!突っ込め!」


 俺がそういうと俺から見て左側・・の仲間が一気に攻め上げた。まず3人が相手の前に姿を現すことを覚悟で、全力で駆け抜ける。それを追いかけるようにさらに2人が攻め上がる。


 「ホリック、ベル、そっちが動いたよ!いつも通り落ち着いて対処して」

 「任せろ」「わかった!」


 俺たちが動き出したら、すかさずレオンが味方に指示をだした。


 俺とレオンは戦況を把握するために、木の箱の上に立っている。完全に隠れている子はわからないが、たとえ姿勢を低く保っても、木の箱から木の箱へと移動する瞬間は見ることができる。

 そのためレオンは、俺のチームが動き出した瞬間から指示を飛ばすことができたのだ。


(名前を呼んだのが"ベル"と"ホリック"だけってことは、おそらくレオンは今回も均等になるよう人数を配置したはずだな…)


 ホリックは8歳で、ベルは7歳だ。2人はレオンチームの主力だが、7歳のニックスも主力の1人としてチームにいる。それと6歳のハンナもボールのコントロールはかなり良いため、主力ほどではないが俺のチームにとって脅威だろう。

 おそらく、先ほど"ニックス"と"ハンナ"の名前を呼ばなかったことから、この2人は俺のチームから見て、右側に待機しているはずだ。


(なら、態勢を整えられる前に一気に行くしかない!)


「今だ! 全員で攻めろー!」

「「「 おー! 」」」


 俺の指示を受けて、右側に待機していた全員が攻め動いた。


「! ニックスを中心に返り討ちにして! ハンナは後ろからボールを投げて牽制! 右側は…「きゃっ!」」


 ちっ。防がれたか。


 俺は指示を出していたレオンに向かって魔球ボールを投げた。俺とレオンの距離は60メートル程度は離れているから、盾を持っている子が油断していたんだが、たまたま気づいたようだ。


 俺とレオンは木の箱の上に乗っているため、はっきりって無防備だ。それを防ぐために、チームに1人だけ木製の盾を持つことにして、その子が俺たちを守るというルールにした。


 今回のレオンチームの盾持ちは、レオンに気があるのか、指示を出してるレオンに見とれていて隙が多かったんだけどな。防がれてしまって残念だ。

 さっき主力が3人いると言ったが、それ以上にレオンの方がやっかいだから、真っ先に当てておきたかったんだがな。


 まぁ指示を遮れた分、良しとするか。




 右側の戦いは俺たちのチームが優勢だった。お互い16人のチームであり、こちらのチームは2人当てられ退場となったが、レオンチームはニックスを含めてすでに4人に当てることができた。ハンナにボールを当てるのも時間の問題だろう。


 逆に左側はなんとか粘っているという状況だ。


 そもそも先ほどの右側に対する指示を出したら、相手にボールを当てるのではなく、戦線を維持する戦いに切り替えるようにと、あらかじめ作戦を決めていた。


 左側が全滅したら、回り込まれて一気に不利になるからな。


 だが、すでに3人も当てられていて、残りの2人も盾を使ったりして何とか凌いでるという状況だ。こちらもやられるのは時間の問題だろう。


(思ったより、レオンの指示が少ないのが気になるな…。俺が動くのを待っているのか?)


 このまま行けば、お互い回り込まれるということはなく、正面衝突のような形に落ち着くだろう。そうなると、チームとしてより上手く立ち回らせることができるレオンに有利だろう。


 くそ、思ったより左側がギリギリの状態になるのが早かった。

 しょうがない、俺が左に回って、右側のみんなとレオンを挟み撃ちにするのがベストだな。


「俺は動く!」


 そう言って俺は左側に移動した。




 俺がすぐに左側にたどり着くと、形勢は逆転した。というか、レオンチームは"ベル"と"ホリック”以外すでに姿は無く、その2人も多少の牽制はあるものの、ほとんど逃げるように下がっていった。


 俺が不思議に思っていると、右側の方で悲鳴が聞こえてきた。



「げ!?、やばっ」

「うわぁ〜すご〜い」

「見てないで隠れて!」

「隠れられるところなんて無いよ!」

「きゃ〜!」


 レオンチームの攻撃はシンプルだった。ニックスがやられた後、ハンナをあえて目立つような場所でボールを投げさせることで、ラックのチームメンバーがハンナ目がけて攻め上がった。その結果、待ち伏せていたレオンチームのメンバーが横から挟むように表れ、後ろ以外、三日月型のような配置から一斉にボールを投げられたのだ。


 慌てて隠れるラックのチームメンバーだが、ほとんどが隠れる前に、あるいは隠れきれずボールが当たってしまった。

 幸運にも当たらなかったメンバーは8人中たった1人だけ。その後すぐに、当てられてしまった。



(今回も生き残れるのも俺だけかもな、これは…)



現在

ラックチーム:残り3人

レオンチーム:残り12人

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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