孤児院での生活
完全に見切り発車ですが、ネタが尽きるまでがんばりたいと思います。
初投稿なので至らない点が多々あるとは思いますが、温かい目で見てもらえると嬉しいです。
「「「いただきま〜す!」」」
そう言ってみんなが朝食を食べ始める。
食事は一日に三回、朝と昼と夜にあるが、その全てみんな揃って食べるルールになっている。だから一人が遅れると全員ご飯がお預け状態になるから、仕事をサボって遅くなるということは歳を重ねるほど少なくなる。みんなからの刺すような目線がキツイからな。
俺が遅れてみんなのいる広間についた時の居心地の悪さは、何とも言えないものがあった。今はもう、みんな食事に夢中で遅れたことなんて忘れてるようだけどな。
「それにしても、ラックが遅れるなんて珍しいわね?体調でも悪いのかしら?」
「いや、何でもないよ、メイ姉。ちょっと考え事してたら遅くなっちゃっただけだ」
「そうなの?それなら良いけど…。あんまり無理しちゃダメだからね?」
「ありがとう。全然平気だから、心配しなくて良いよ。ほら、ご飯が冷めちゃうから早く食べよう」
「う〜ん。無理する前にお姉ちゃんに相談しなさいよ?」
「は〜い」
忘れてない人もいたか、当たり前だけど。
今話しかけてきたのはメイリーン=クロスロード、今の俺と2歳違いである8歳で、少し赤みがかった茶髪の髪が印象的な女の子だ。今年はシスターたちを除けば孤児院で最年長ということもあり、年下の俺に対して気にかけているのだろう。
それに8歳の女の子だ。孤児院には俺を含めてメイ姉より小さい子はたくさんいる。その子供たちにしっかりしたお姉ちゃんであるべきだと思う気持ちがあるのだろう。
まあ、そもそも俺は他の子供より早めに魔法を教えてもらい、さらに魔法を使った仕事も担当することになったからな。良くも悪くも注目を浴びたのだろう。その辺りからメイ姉が俺に対してより一層心配するようになった気がするし。
普通は6歳からやる仕事を5歳になる前の子供がやっていたら、そりゃ心配にはなるか。
ふぅ〜。食べた食べた。ここは孤児院だが、全員が満足に食べられるだけのご飯があるのというのは素晴らしい。というのも、俺たちが毎日畑仕事や家畜の世話をしているからなんだけど。
シスターたちの指導の賜物か、俺が転生してから不作になったこともなく、毎年多くの食べ物が収穫できている。あんまり雨が降らない年もあったし、俺は魔法で不作にならないようにしてるんじゃないかと疑っている。魔法ならぜひ教えてほしいところだ。
「あら、全部食べたのね。いつも通りおかわりまでしたみたいだし、本当に大丈夫そうね」
「だから、言ったろ?大丈夫だって」
本当に心配してくれてたんだな。日に日に心配度合いが強くなっているような気もするが、気のせいだろうか。まぁ、優しくしてくれるのは嬉しいし、問題ないだろう。将来は優しい聖母のような人になるかもしれないな。
「じゃあ、みんなを待たせた罰として、皿洗いはラックが一人でやりなさい」
「・・・・・・はい。」
俺は頷くことしかできなかった。
そして訂正しよう。メイ姉は鬼だ。
疲れた。
まさかシスターたちも手伝ってくれないとは思わなかった。"ラックならできる"ってなんだよ!そりゃあ今更お皿を割ったりなんかしないけど、そんな信頼いらないから手伝ってくれても良いじゃないか!
ちくしょう。
流石に調理器具はシスターの一人がやってくれたけど、58人分の食器を洗うって相当大変だったぞ。
しかもこれから日課の畑仕事をやらないといけないし、ちょっと遅れただけで散々だな。
はぁ。
愚痴を言っても虚しいだけだし、一つ一つこなしていこう。
俺たちの生活は、朝の仕事、朝食、午前の仕事、昼食、お昼寝、勉強、遊びの時間、夕食、就寝という流れだ。朝の仕事と、午前の仕事は、人によって異なる。俺の場合、朝の仕事は水の生成。午前の仕事は畑仕事だ。畑仕事だが、真面目にやればちゃんとお昼前には終わるような仕事の量になっている。というか、そうなるように各々の作業面積が決められている。
当然の話、俺の午前の仕事に"皿洗い"なんて仕事は無い。だから今現在、俺は午前の仕事を何も進めていない状態だ。非常に哀しい。
昼食に遅れるわけにはいかないし、お昼寝や勉強も外せない。となれば、遊びの時間を削って今日の仕事を終わらせないといけないだろう。遊びの時間は魔力を鍛えるのにちょうど良いから、絶対に時間を減らしたくないのに…。
そうは言っても無理なんだよな。シスターたちが俺たちの行動をわかっていないはずがない。これまでも、遊んでいて仕事を夕食までに終わらせていなかった子供はいたが、例外無く次の日に泣きながら延々と仕事をさせられていた。これに関しては何があったか知りたくもない。俺がその立場になるなんてもっての外だ。
そんなわけで、真面目に仕事を終わらせるしかない。まずは水やりからだな。
「水やりはボクがラックの分もやっておいたよ」
「え?マジで?・・・ほんとだ!ありがとう!」
「ふふ、どういたしまして。それにしても、急いだ方が良いって伝えたんだけど、遅かったみたいだね」
「まあ、そうだな。ちょっと時間を気にしてなかったわ」
「そうみたいだね。ラックってしっかりしているようで、案外抜けてるとこあるよね」
「否定できないな」
そう言ってお互い笑いあった。
こいつは今の俺と同い年で6歳の男の子。名前はレオン=クロスロード。輝くような金髪と可愛らしい顔つきをしていて、美少年を具現化したような見た目をしている。女性シスターたちの態度がレオンに対してだけ他の子と微妙に違うし、将来は多くの女を泣かせるイケメンになるに違いない。
レオンはこの孤児院の中で一番仲の良い子供だ。俺たちだけで遊べるようになってからは、いつも一緒に遊んでいるし、今回みたいに困った時は、お互いに助け合ったこともしばしばある。一緒にいると楽しいし、こういうのを波長が合うって言うんだろうな。
「本当にメイ姉には参っちゃうよ。5分くらい遅くなっただけで一人で皿洗いだもんな。さすがに疲れたよ」
「うーん。メイ姉はラックのこと心配してたのは本当だしね。多分だけど、大した理由も無く心配かけさせたことに対して怒った、ていうのもあるんじゃない?」
「ああ、それありそう。勝手に心配して、勝手に怒るやつな。」
「その言い方もどうかと思うけど…。悪いのはラックだから、あとでちゃんと謝っておいた方が良いと思うよ」
「確かに悪いのは俺の方なんだけど…。まあメイ姉だしなぁ。わかった、ちゃんと謝っておくよ」
「うん。その方が絶対良いよ」
レオンの助けもあって、なんとか午前中に畑仕事を終えることができた。
その後、昼食前には心配をかけたことについてメイ姉にちゃんと謝った。
だが、俺は昼食の時間謝ったことを後悔した。俺が謝ったことで上機嫌になったのは良かったんだが、良くなりすぎたのだろう。如何に俺がメイ姉に心配をかけているのか、なんでメイ姉に頼らないのか、と言う話を昼食の時間中ずっと聞く羽目になってしまった。
ちらっとレオンの方を向くと苦笑いを浮かべていた。どうやら俺を助ける気は無いらしい。
メイ姉の前では、俺もレオンも無力だな…。
俺は諦めて話を聞き続けるしかなかった。
それにしても、女心って難しいな…。
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