フルスラック=クロスロード
完全に見切り発車ですが、ネタが尽きるまでがんばりたいと思います。
初投稿なので至らない点が多々あるとは思いますが、温かい目で見てもらえると嬉しいです。
俺が無事に転生してから6年がたった。
転生した直後は色々大変だったが、今ではすっかりここでの生活に馴染んでいる。もちろん魔法が使えることも確認済みだし、順調に第二の人生を歩めている。
フルスラック=クロスロード。それが今の俺の名前だ。一緒に暮らしているみんなからは"ラック"と呼ばれることが多い。
髪は黒髪で、顔はまぁ、イケメンではないが特別ブサイクでもないだろう。子供特有の可愛らしい雰囲気は精神的にズレて感じるが、転生なのだからしょうがない。外見に関しては概ね満足だ。
それと"クロスロード"というのは一応、家名ということになるのだが、親や兄弟と同じというわけではない。そもそも俺は孤児らしいので、本当の親も兄弟もいないのだ。転生だし、もしかしたら本当にこの世界にいないのかもしれないけどな。
この世界の孤児の多くは"聖クロスロード教会"が保護し、育てているということを、孤児院で俺たち孤児の面倒を見てくれているシスターから聞いた。まだ俺が小さいからか詳しく話そうと思わなかったみたいだが、教えてもらった話によると、聖クロスロード教会は元々はこの世界一とはいえ、ただの宗教のひとつだったそうだ。それが大昔に国と名乗ることになり、平和のために色々と頑張っているらしい。孤児を保護して育てているのもその一貫ということらしい。
育てる孤児にも家族というものの良さを分かってもらうために、孤児全員に教会の名である"クロスロード"が家名がわりに名乗らせるようになったんだとか。
だから俺の家族は、大きく考えれば聖クロスロード教会の孤児の全員と言えるし、小さく見ても俺が住んでる孤児院のみんなということになる。今俺が住んでる孤児院は0〜8歳までの子供が全員で五十人いて、育ててくれているシスターも男女合わせて八人いる。大家族だな。
「おーい、ラックー、朝食用の飲み水は用意できたー?」
「もうすぐ終わる。ちょっと待ってくれ」
「ボクは良いけど、みんな待ってるから急いだ方が良いよー」
「ああ、分かってる!」
ついつい考え事していたら、今日の仕事の手が止まっていたな。こんなんで手が止まるなんて、俺もまだまだだな。
今やっているのは、水の生成だ。もちろん魔法を使ってな!
魔法とは神様の言っていた通り魔力を元に使うことができる。そして俺は転生した直後、魔力を感じ取れないかと色々試そうと思った。
まぁ、色々試すまでもなく、明らかに今までに感じたことの無い感覚が身体の中にあったので、意識をそれに集中したらあっさりと何かを放出できた。何かが魔力だというのは言うまでも無いだろう。
つい魔力を放出してしまい焦ったのだが、赤ちゃんが魔力を放出するのは割と良くあることらしい。そのため育児スペースは、赤ちゃんの暴発とも呼ぶべき魔力放出に耐えられるよう上手く設計されている。
稀に生まれた時から一般的な大人以上の魔力を内包している赤ちゃんもいるが、内包魔力を計測する魔道具を使えばすぐにわかるため、その場合は専門の施設で育てられるそうだ。
神様が勧めてくれただけあって、この世界も魔法を当たり前のように人の生活に活かされているようだ。
魔力に関しては直ぐに使うことはできたが、魔法は違った。生まれてから三年ぐらいは使えなかった。理由は色々あるが、一番の問題はこの世界の言葉がわからなかったせいだな。
魔法を使うためには魔法式や魔法陣が必要だ。特に魔法式は魔法文字と呼ばれるもので書く必要があり、この世界で日常的に使っている文字とも違うらしい。そのせいで余計に混乱したのだ。
魔法の原理は、魔力で魔法式や魔法陣を描き、そこにさらに魔力を加えることで加えた魔力が魔法式や魔法陣の内容通りに変化する、というものなのだが、この仕組みに気付くのにも時間がかかってしまった。魔法式や魔法陣も魔力で作られているため、前世では見ることも感じることもできず、今世でもあまり魔法の発動を見る機会が無かったため、理解するのにかなり苦労した。
だがまぁ、大小様々な苦労はあったが、今では言葉をしっかり覚えて、水を生成する魔法も使えるようになっている。神様のアドバイス通り、赤ちゃんの頃から魔力を放出して遊んでいたからか、俺は他のみんなより魔力が多くなっていたらしい。そのため、本来は6〜8歳の子供が担当する飲み水の生成の仕事に俺も5歳になる少し前ぐらいから参加することが許された。魔法式を教えてもらえると言うことで自ら立候補したのだ。
そういえば、魔法を簡単には使えない理由の一つに、大人が教えてくれないというものもあった。魔法とは、魔法式や魔法陣があれば魔力次第で誰でも同じ現象を引き起こせるのだ。つまり、危険な使い方ができる魔法を子供に教えると言うことは、暴発の危険がある爆弾を子供に持たせるのとそう大差ない。その爆弾は内包魔力の量次第でいくらでも強力になるからな。
純粋な魔力なら孤児院に設置されている程度の魔道具で危険のないように散らすことができるのだが、一度、魔法として昇華させた魔力を無害なものにするのは難しい。そのため、わざわざ小さい子供には魔法を教えようとはしない。俺が大人でもしないだろう。この孤児院でも6歳から少しずつ教えていくのがルールとなっている。
俺は約5年間で、信頼と、ほんの少し(?)のわがままで、仕事を負担することを条件に、一年近く早めに魔法を教えてもらえることになった。
「よし、給水完了!」
ようやく水の生成が全部終わった。急いでみんなの元に運ばないとな。
俺は朝食を待っているみんなの元へ向かった。
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