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七話 入学式でお友達!


 二日前にササモトさんから聞いた帝国学院の入学式当日。

 青々と澄み渡る快晴の空を眺めながら、私は感慨深い気持ちに浸っていた。


「これから通うはお貴族様学校かー……」


 澄み渡る空から目を落とすと、目の前には赤レンガとファンシーな鉄門が特徴の校門が開いており、校門の先には西洋建築の大きな建物が見える。

 そんな私を置いて、今年からの新入生らしき真っ白な制服を着た十二歳お坊ちゃま&お嬢様キッズ勢は、佇む私を不思議そうな目で見ながら校門の中へ入っていく。

 

 ここでボケっと突っ立ってても皆の邪魔だよね……


 そう心の中で呟きながら、門の中へ足を踏み入れていく。

 周りの様子を見ても、私を不思議な目で見るだけで怖がった様子がうかがえない所を見るに、昨日ササモトさんから貰った『風格系スキル軽減のネックレス』が効いているみたい。


 私が怖がられる根本の原因は『絶世の風格』と言うパッシブスキルに『絶対権威』と言うパッシブスキルが合わさる事で起こっていた出来事らしいんだよね。

 色々調べた結果、軽減系の装備スキルで対応できると分かって、二つのスキルの内どちらを軽減するか考えた時に『絶対権威』は天職の皇帝としては絶対必須との事で、そのままにして『絶世の風格』を軽減する事になった。

 そうしてお抱えの職人により製作されたネックレスは、十八金の材質に帝国を象徴する五芒星の中に剣のデザインだ。

 

 そんなこんなで作られたネックレスだが、ただでさえ目立つ帝国の象徴を、どんな思想を持った人が居るか分からない学園内で首からぶら下げるなど、誰も近づかないどころか要らぬトラブルに巻き込まれる可能性があると警備や危機管理を担当する人が進言した。

 その為、今は首から下げて装備した状態で、紋章の部分だけ胸ポケットに入れてある。


 まあ、愛国思想とかの人からしたら、自分が住む栄えある帝国の紋章をネックレスで首から下げた見知らぬ奴がいたら、突っかかりたくもなるよね。

 そんな愛国思想の脅威だが、どちらかと言うと反帝国思想の人に注意が必要らしい。

 どの世界でも、右翼よりも左翼の方が過激な様で、反社会的な行動が多い反帝国思想の人に目を付けられたらどうなるか分からないとの事。

 私が学院に行く時にササモトさんからも


「少しでも反帝国思想らしき事を語る人物には近づかない様にしてください」


 と注意を受けたっけ。

 そんな事を思い出していると、いつの間にか入学式会場の大ホールの入り口前だった。


 ホールの中に足を踏み入れる。

 会場である大ホールの中はお貴族十二歳キッズで溢れていた。

 四人席の丸いテーブルが等間隔で並んでおり、お貴族キッズ達は思い思いの席に座っていた。

 入学式のパンフレットを見るが、好きな所に座ってもいいらしい。


「てなわけで、折角だから私は目立たない端っこの方にしようか!」


 社交能力が重要な貴族社会のお貴族キッズでは、普通は目立たない端っこなど誰も座りたがらないだろうが、こちとら皇帝である。

 媚びへつらう側ではなく、威張り散らす側なので、何も問題なかろうなのだよ。

 

 そういう事で、ホール左側の目立たない席に着席した私。

 暫くポケーっと周りの十二歳キッズを眺めていると、


「隣、いいですか?」


 と声が掛かった。


「ん? ……ああ、いいよ」

 

 そう返しながら相手の顔を見る。

 赤い髪をショートカットにした赤い瞳をした表情がおとなし気な…… 悪く言うと陰キャな表情の少女が私の近くに立っていた。

 少女は私の言葉に少し戸惑いながら、私の右側に座る。

 私を見ながら何かソワソワして落ち着かない様子の少女。


「どうかした?」

「えっ……と……」


 私の言葉に言葉を詰まらせる少女は申し訳なさそうな顔をしながら口を開いた。


「もしかして、凄く位の高い家柄の人ですか……?」


 そう、言いながら私を見る少女。

 なるほど…… 周りを見る限り、確かに他のお貴族十二歳キッズ達は敬語や丁寧語を使っている。

 始めて話しかけた相手に、上から目線の様な言葉使いで返されたから『なんやこいつ』って感じか。

 とりあえず、変に突っかかられたりナメられるのも癪なので、お前よりは立場たけーよと遠まわしに言っとこうか。


「まあ、家柄は高い方の筈だね」

「そ、そうなんですか……」


 私の言葉に少女はそう言うと、何も言わなくなる。

 そんな居心地が悪そうにしている少女を眺めていたら、ホール中央らへんの席に座っていたキッズが私達が座っている場所を見て立ち上がり始めた。

 

 なんや?


 私達の席に向かってくるのは三人のお嬢様キッズ達。

 

「あれ、貴女のお友達?」

「えっ…… あ……」


 右に座る少女に聞くと、少女は三人の方を向いて辛そうな顔をする。

 ふーむ。なるほど……

 つまり、あの三人組はいじめっ子なイキりキッズで、私じゃなくてこの少女が目的か。


 そんないじめっ子キッズ達は私たちのテーブルに来て、赤髪の少女を見た。


「あら、ごきげんよう。ジェリーヌさん? 早速お似合いのお仲間さんを見つけた様で、安心しましたわ」


 赤髪の少女をジェリーヌと呼ぶお嬢様キッズを見る。

 私の向かい側に立ち、私の右側に座る赤髪の少女を蔑んだ目で見ているつり目金眼の金髪縦ロールな少女は、両脇に如何にもな取り巻きを連れいていて、その取り巻きも同様な視線を赤髪の少女に向けている。

 

「貴女みたいな品の無い方には誰も寄り付かないと思っていたのですけど……」


 そう言って私を見る。

 なんやろ?私に言いたい事あるんかな?


「やはり、低俗な家柄の人には低俗な人が寄り付くんですね」


 そう言いながら私を蔑んだ目で見てくる縦ロール。

 すごいね、知らないとは言え、侮辱罪で首はねられても仕方ない事言ってるよ。

 そんな縦ロールの言葉に、取り巻き二人組は笑っている。

 俯く赤髪の少女に縦ロールはご満悦の様子で「さて」と言った。


「では、私はこれで失礼しますね。貴女とは違って、公爵令嬢は暇じゃありませんの」


 そう言って縦ロール三人組は去っていく。

 いや、嫌味言いに来てる時点でお前十分暇じゃん。

 そう思いながら、横で俯く赤髪の少女を見ると、少女は静かに泣いていた。


「すみません…… 私が横に座ったばっかりに、貴女も巻き込んで……」


 その様子を見てると、流石に可哀そうになってくる。

 悔しいのは自分の筈なのに、関係の無い私の心配をする少女。

 静かに泣き続ける少女に、ポケットからハンカチを取り出して渡す。


「ほら、これ使いなよ」


 少女は私からハンカチを受け取り、涙を拭いている。

 そんな様子の少女に、そういえば名前聞いてなかったなー等と今更思いながら、少女を見た。


「私、メリアっていうの。貴女は?」

「ジェリーヌ・ディアンシー…… っていいます」


 泣き止んだ赤髪の少女、ジェリーヌはハンカチを返してくる。

 ハンカチを受け取る私は気になる事を率直に聞いてみた。


「で? あの失礼な縦巻きロールとは、どういった関係なの?」

「た、縦巻きロール……」


 私の言った縦巻きロールと言う言葉に、なんとも言えないような顔をしながらジェリーヌは話す。


「彼女はナナミ・キサラギ様です……」

 

 ジェリーヌ曰く、あの縦巻ロールは世界帝国の有名な貴族であるキサラギ家の三人娘の末っ子らしい。

 小さい頃から帝国貴族の男爵家の家柄であるジェリーヌに何かと突っかかってくるらしく、家柄もあって何も言い返せないんだとか。

 

 それにしても、有名なキサラギ家の末っ子か。

 あの有名なキサラギ家の娘があんな感じなら、キサラギ家の他の家族も似たような感じなのかな?


 そんな事を考えていると「あの!」と意を決した様にジェリーヌが声を掛けてきた。


「あの…… よろしければ、バッジを交換しませんか?」

「ああ、いいよ」


 そう言って、カバンから私のバッジを取り出す。

 

 貴族の間では、交流すると決めた相手に自身の家紋のデザインが入ったバッジを交換すると言う文化がある。

 テレビ等でドラマの中にも登場する為、バッジの交換は貴族の文化として庶民にも広く知られていた。

 今の私も皇帝になったので、皇族としてのバッジを持っており、皇族としての必需品ですと渡し方を教えられた時はめっちゃ感動したのを覚えているよ。


 バッジ交換の申請者であるジェリーヌからバッジを貰い、制服につける。

 摘まむように手渡しで渡して来る所を見るに、男爵家は騎士階級の様だ。

 

 今度はこっちから渡すんだけど…… おそらくジェリーヌはビックリするだろうね。


 バッジ交換は階級によって渡し方と受け取り方が違うのだ。

 つまり……


「く、君主階級……」


 手渡し用の箱に入れて、相手の前で箱を開ける。

 この単純な渡し方で私の階級が分かるという事。


「さ、どうぞ」


 ジェリーヌは五芒星の中に鷹が羽を広げながら剣を掴んでいる形をした、バッジとしては大きめな栄典サイズの金のバッジを受け取る。

 バッジを受け取ったジェリーヌは、バッジを顔の前に持ってきた後、数秒目を瞑ってから制服にバッジを付けた。


「これで私たち友達だねー」

「そ、そうですね!」


 私の言葉にジェリーヌは少し緊張した様子で言葉を返す。

 そらそうだよね。ジェリーヌからしたら、バッジ交換で初めて相手の階級を知ったんだから。

 そんなこんなで少し緊張気味のジェリーヌと会話しながら入学式の開始を待つ事にした。


 

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