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六話 大分生活に慣れてきたよ。


「――そういうわけで、お二方には帝国学院に入学していただきたいのです」


 そういうササモトさんに私ら姉妹は突然の貴族学校入学に驚く私たち。

 

 この宮殿に引っ越して三日目の朝。

 窓から差し込む快晴の日の光を浴びながらダイニングで朝食をとっていた私達に、突然ササモトさんが訪ねてきて「なんだろう?」と二人して疑問符を浮かべていた。

 ササモトさん曰く、皇帝としてのスキルの使い方や、統治に関する勉学の為に帝国学院に入学してほしいらしい。

 まあ、この宮殿の生活には少し慣れてきたので、新しい事がしてみたいと思っていたところだ。


「……分かりました。それで、日程は?」


 口につけた紅茶をテーブルに置きながらササモトさんに質問する。

 私の質問に彼は「はい、先ずは此方をどうぞ」といい、私に一枚の書類を渡す。


「二日後の朝、午前十時から新入生の入学式でございます」


 ササモトさんの言葉を聞きながら、私は貰った書類に目を落とした。


 ふむ…… 『代五百三十一回帝国学院入学式』ね。


 そう書かれたタイトルの下には日程と時刻、持参品と学院の場所、最後に注意事項と学院側の責任者の名前が載っていた。

 日程と時刻を見るが、ササモトさんの言うように二日後の午前十時の様だ。

 上から下に流して見ていると、何気なしに帝国学院最高責任者の欄にある『ケン・キサラギ』の名前に目が留まる。

 

 へぇー…… 学院の最高責任者は、あの有名な世界帝国貴族のキサラギ家の人か。


 大きな領土と、税収で得た資金を使って領土の銀行の後ろ盾をする事で、世界帝国の高い地位を手に入れた公爵家であるキサラギ家。

 その名前は、今や世界に轟き、世界中の国家にパイプがあるのだとか。

 世界帝国の帝国議会に置いての発言力も大きいとテレビとかで聞いていたが、貴族学校の最高責任者の欄にキサラギの名前を見る限り、ホントなのだなと実感する。


 書類の大体に目を通した私は、テーブルに書類を置いて紅茶に手を伸ばす。


「分かった。で、二日後は何時迎えがくるの?」

「八時でございます。九時位に現地へ到着し、その後は学院の者から説明があるかと」


 ササモトさんの話を聞き、一口紅茶を啜る。


「……分かった。下がっていいよ」


 私の言葉を聞き、ササモトさんは一礼をしてダイニングから離れていく。

 それを横目で見送った後、紅茶を一口啜ってテーブルに置いた。


「いやー…… メリアったら、皇帝感が板についたねー。おねーちゃん未だ慣れないもん」


 そう言いながらコーヒーを啜るルー姉。

 本人はそう言うが、そのコーヒーを啜る姿は誰がどう見てもビックリする位の威厳を醸し出してた。

 確かに、ルー姉には優雅といった二文字の雰囲気は全くないが、今のルー姉を一言で言い表すなら威圧。或いは威風堂々か。

 おそらく天職が変わった事によるスキルの変化で何気ない歩き方や仕草が変わったからそう見えるんだと思う。

 軍服ワンピースを身に纏う今のルー姉は、さながら軍事独裁政権の最高指揮官の様な雰囲気。

 宮殿のメイドや役人の人がルー姉を相手にするとき、めっちゃ緊張してる様子で話しかけている様子を何度か見かけている私は、天職と言う要素がこんなにも個人を変えるとは驚くばかり。

 そんなルー姉が片手でコーヒーカップを持つ様は、正に冷徹な指揮官の様だよ。


「私から見て、ルー姉はめっちゃ馴染んでる様に見えるけどね」

「そんな事ないよー……」


 そう言いながらルー姉はコーヒーをテーブルに置く。


「それよりさ! メリア、貴女のその人を射殺す様な視線と態度、ほんとに何とか出来ないの? 屋敷の皆がメリアを怖がって私に伝言しにくるんだけど!」


 そう言いながらルー姉は非難する様な視線を向けてくる。

 

 この宮殿に引っ越してから、長らくルー姉に言われているこの言葉。

 私自身、そう言われても今一ピンと来ないのだ。

 私に関しても天職のスキルで何かしらの変化があったのだとは思うんだけど、別に睨んでもいないし態度も普通にしてる筈。

 でも何故かルー姉伝いで聞いた屋敷の人達曰く、


「ありゃ、人の命をなんとも思ってない目だ(厨房の配膳係)」


 とか、


「掃除をしているとき、声を掛けられた時は恐怖で震えが止まりませんでした……(メイド)」


 と言って私を怖がっているらしい。

 ルー姉だって人に話しかけにくい雰囲気をそこら中にまき散らしてるのに、まだ私よりかは人と関わってるんだよね……

 ホントに私、そんなに怖いの?

 私に話しかける用事がある人は、普通に話しかけるんだけど……


「ルー姉、毎回聞くんだけど、それホントなの?ササモトさんだって、さっき普通に私に話しかけてきたよ?」

「そのササモトさん、ずーっと冷や汗ダラッダラだったじゃん……」

「そうだっけ?」

「そうよ!書類渡す時だって、手ブルブルで正直可哀そうに見えたし」


 うーん。

 確かにササモトさん凄い汗かいてたけど、暑がりじゃないの? 流石にあの量の汗が冷や汗とか、絶対に……

 いや、そういえばこの部屋空調で涼しいんだった。てことは、ホントに私怖がられてる?

 でも、ホントに怖がられてるなら、十中八九私のスキルによるものなんだよね。

 何とかならないかなー…… 


「スキルだとは思うんだけど、どうにかならないかな?」

「まあ、聞いてる感じパッシブのスキルだからね。スキル付きの装備とかで何とかなるとは思うんだけど……」


 そう言ってルー姉はコーヒーを飲み干し、トレイを持ったメイドに渡す。


 スキル付きの装備…… そんな簡単には作れないからこそ、値段が高いものばかり。

 値段は今の立場では何も問題ないが、そもそも私の求めてる効果の付与スキルが存在するかがわからない。

 

 私の方にも来たメイドを見る。

 頑張って無表情を貫いているのは分かるが、今にも死ぬんじゃないかと言う程、顔が真っ青だ。

 私がカップを手渡すと、震える手で受け取り私の下を下がっていく。

 心なしか足取りが速い。そんなに私の下から早く離れたいのかな?

 

 メイドが退出し、閉じた扉を眺めながら、ため息を付くしかなかった。


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