三人だけの同窓会
夏休みもあと3日で、終わろうとしていた。
「あっちー!」
俺は、Tシャツの襟をパタパタと扇ぎながら、昼飯を買いに、コンビニへと向かっていた。
すると、コンビニの前で、中学からの友人・片桐葉月と会った。
「片桐!久しぶりだな!」
「内田君、久しぶりだね!元気にしてた?」
「おう!片桐も、コンビニに用事か?」
「うん。お昼御飯を買いに来たんだ。」
「偶然だな。俺も昼飯買いに来た!」
話ながら片桐と二人で、コンビニに入った。外の暑さと違って、エアコンの効いた店内が快適に思えた。
「内田君、焼けたね。海かプールに行ってたの?」
「まぁな。やっぱ夏と言えば、海かプールだろ?」
「そうだね。私は、プールに2、3回行ったくらいだよ。」
「片桐は、もっと焼けたほうがいいと思うぜ。」
「やだよ!これ以上は、焼けたくないよ!」
片桐は、膨れっ面で答えていた。
「お前ら、店内で、騒ぐなよ。」
背後から、聞き慣れた声がして振り向いた。
そこに立っていたのは、ヨネこと、米沢透史だった。
「ヨネ!久しぶり!」
笑いながら、ヨネの肩に腕を回した。
「暑苦しい!やめろ!」
素っ気なく、俺の腕を振り払った。
「何だよ!久しぶりに会った友人に…って、おい!」
ヨネは、俺の言葉をスルーして片桐と話していた。
「片桐、ずいぶん会ってなかったけど、元気か?」
「うん!米沢君と会うの、ゴールデンウィーク以来だよね?」
「ああ。翔平とは、駅で何回か会ってたからな。片桐は、チャリ通だっけ?」
「そだよ。米沢君も、お昼御飯を買いに来たの?」
「まぁな。」
「ヨネ!何、片桐には、普通に喋ってんだ!」
俺は、思わずヨネの背中を叩いた。
「いてーよ。お前とは、よく会っていただろうが!」
「ぐぬぬ!」
こいつは、頭が良すぎて、的確なことを言って、言い返せないようにしてくるから、悔しい!
「ねぇ?三人で、一緒にご飯食べない?皆と会うの久しぶりだからさ。プチ同窓会みたいな?」
「おお!それいいな!こんな機会滅多にないしな!」
三人とも、違う高校に通っているもんな。俺は、片桐の名案に賛成した。
しかし、
ヨネは、顎に右手を当てて少し考えていた。
「…別にいいけど、どこで飯食うんだよ。」
「「…え?」」
俺は、片桐と顔を見合せて首を傾げた。
「…はぁ。考えなしかよ。こんなクソ暑い中、外で飯食うとか、勘弁してほしいんだけど?」
「…ま、まぁ、確かに、外は暑いからな。熱中症になったら大変だ!」
「でも、どこで食べる?せっかく久しぶりに、三人揃ったのに…。」
片桐は、シュンとしてうつ向いてしまった。
ああ!
ヨネのヤツめ!こういう時頭の回転良すぎるヤツは、めんどくせぇんだよな。
「なら、俺ん家来るか?両親は、仕事でいないし。」
ヨネは、腕組みしながら、答えた。
「え?でも、ジャンケンしたほうが良くない?私も親は、仕事でいないし。」
「お、おう!俺ん家も、誰も…」
ヤベ!今日は、母さんが、いるんだった!
「…はぁ。片桐、女子が安易に、男を家にあげるとかやめとけ。翔平、お前ん家は、おばさんがいるんじゃないのか?」
「…げっ!バレてたか。でも、母さんは、ウェルカムだと思うぞ!」
「バーカ!片桐が、気をつかうだろう?三人で騒ぐなら、俺ん家が妥当だ。」
「お、おう!」
「う、うん。」
こうして、俺と片桐は、ヨネん家にお暇することになった。
ヨネん家は、俺ん家から少し離れた場所にある。
ヨネん家に来たのは、正月以来だからな。
すると、横にいた片桐が、部屋に入るなり、キョロキョロと見渡していた。
ケケケ!片桐のヤツ、ヨネの家に来たの初めてだからな。緊張してやんの!
それから、お互い、コンビニで買った弁当を広げて、近況を話した。
「片桐、彼氏とはちゃんと会ってんのか?」
「会ってるよ。でも、先輩は、受験生だから、今日も予備校に通ってるよ。」
「おう!そうか。」
俺は、ペットボトルのコーラを飲みながら答えた。
「片桐って、彼氏いたんだな。俺は、てっきり翔平と付き合ってるのかと思ってたけど?」
ヨネの発言に、俺は、思わずコーラを吹き出した。
「ちょっと!内田君、汚いよ。人ん家なんだから、上品に飲みなさいよ!」
「…う、うるせぇな。ヨネが変なこと言うからだろ?なんで、片桐と俺が付き合うんだよ!」
ヨネは、棚にあったボックスティッシュを俺に渡してため息をつく。
「はぁ。翔平と片桐は、中学の時から、仲が良かったからな。ただ、そう思っただけだ。」
「よく言うぜ。ヨネも、よく話してただろう?」
二人の会話を聞いていた片桐が、口を開いた。
「内田君とは、ただの友達だよ。中3の夏休みに初めて喋って以来、内田君と仲良くなって。その後に、米沢君とも仲良くなったんだよ?」
「ふっ、そうか。まぁ、翔平は、女と付き合う余裕はないだろうしな。」
「なんだそれ!勝手に決めつけんな!俺だって、好きな女くらいいるぞ!」
「「知ってる。」」
ヨネと片桐は、声を合わせるように、言った。
こいつら、マジで、俺の好きな女を知ってるのか?
「…実は、あの時、内田君と米沢君と仲良くしていたら、一部のクラスの女子に嫌がらせされてたんだ。」
「はぁ!?何だよ!それ!」
そういや、一時、片桐が、俺とヨネを避けていたことがあったな。
まさか、片桐が、嫌がらせされていたとは…
「あれだろ?三人くらいの目立った化粧臭い女子どもだろ?」
ヨネは、涼しい顔で頬杖ついて話した。
「え?なんで、米沢君が知ってんの?」
「あいつら、片桐の体操服ハサミで切ろうとしてたから、俺がシメテやった。」
「「マジで?」」
俺と片桐は、唖然とヨネを見つめた。
「ど、どうりで、嫌がらせがなくなって、疑問に思ってたんだけど…米沢君、カッコ良すぎるよ。」
片桐は、尊敬の眼差しで、ヨネを見つめた。
「…はぁ。ヨネには、いつもおいしいとこもっていかれんなぁ。」
「翔平も、片桐のことを心配していただろう?俺は、偶然遭遇しただけだ。」
それでも、ヨネには、敵わない。
と、言うことで、ヨネにも恥をかかせてやりましょうかね!
ウシシ!
「なぁ、ヨネの部屋に入ってもいいか?」
「はぁ!?何でだよ!」
焦ってる!焦ってる!
ヨネの部屋から、大量のエロ関係の物を、見つけてやる!!
「ちょっと、内田君、やめなさいよ。いくら仲が良いからって、米沢君のプライバシーだって、あるんだからさ!」
片桐よ!お前が、ヨネの部屋で、エロ関係の物を見れば、きっと、幻滅する筈だろうからな!
「…はぁ。別にいいけど。綺麗に掃除したから、片桐も入ってもいいよ。」
「…え?…でも…」
片桐は、申し訳なさそうにヨネを見つめた。
「ま!いいじゃねぇか!片桐は、初めて入るだろう?スッゲー広いぜ!」
そして、2階にあるヨネの部屋に入る。
数分後、ヨネの部屋を隈無く探してみたものの…
エロ関係のものは、見当たらず…
「米沢君、この物理の参考書借りていいかな?」
「…いいけど。片桐、物理苦手なのか?」
「赤点じゃないけど、いつもギリギリでさ。」
「そう。俺、もう使わねぇし、それやるよ。」
「本当!ありがとう!」
片桐は、喜んで、参考書を手にした。
「…で?翔平は、何を探してんだよ?」
「ヨネ、なんでエロ関係の参考書がないんだ!」
俺は、ヨネに耳打ちした。
「…はぁ。そんなことだろうと思った。」
ぐぬぬ!
ヨネのヤツ!
わかってて部屋に、入れやがったな!
グルルル〜
ん?
んん!
は、腹が…
腹が、痛てぇ!
「…ヨ…ヨネ…ト、トイレ貸してくれ!」
「翔平?顔色が悪いぞ?」
ヨネは、片桐に、言付けてから、1階のトイレまで案内してくれた。
「ったく!お前、牛丼大盛りに、コーラなんて腹壊すに決まってるだろ!」
「…いや、あはは!」
俺は、しばらくトイレにこもっていた。
数十分後、腹の調子がよくなり、トイレから出た。
「…はぁ。ヨネ、サンキューな!」
「もう平気なのか?」
ヨネは、リビングのソファーに凭れて、雑誌を見ていた。
「あれ?片桐は?」
「…ああ、親からメールきて、先に帰った。」
「…そうか。」
「水と薬、用意したから飲めよ。」
「ああ、サンキュー!」
俺は、用意された水と薬を飲んだ。
なんだか、久しぶりに会って、飯食ったのに…
最悪だ!
夏休みもあと少しだというのに…。
でも、2学期になる前に、ヨネと片桐に、会えて良かったぜ。
また、三人だけの同窓会が出来たらいいな!
・
ご愛読ありがとうございました。
夏休み残り少ないと、寂しくなりますよね。そんな時、懐かしの同級生に会って話の花を咲かせるのも、夏の思い出のひとつかなと、思い書いてみました。
因みに、私は、夏休み最後まで宿題に追われてましたけどね。(笑)
結月千冴。